四季折々の変化が見られる広大な学校環境 宮城学院中
学校での一日の始まりは静粛な時間から 仙台白百合学園中
内閣府認定教育特区研究開発学校 聖ウルスラ学院英智中
公立一貫校の設置で私立一貫校の教育内容が再認識される絶好の機会
1999年文部科学省が、「中高一貫教育制度」を打ち出してから全国に500校の公立一貫校を設立する計画の中で、現在167校の公立一貫校が設置されています。公立一貫校の設置に伴って、首都圏で目立った中学受験者数増加の流れは、今後各地方都市にも波及していきます。その中、地域ごとの受験事情と様々な改革を行っている私立一貫校をご紹介します。
◆県立優位の中、独自性のある私学の台頭(新潟・富山・石川編)
新潟・富山・石川・3県には、6校の私立一貫校があります。私立中学の校数は首都圏や関西圏に比べると格段に少ない地域です。その要因には、気候風土に大きく影響を受け、日本有数の豪雪地帯を抱え交通事情が通学域を狭めているという背景があります。もう一点は、著名な県立高校が、現在でも二桁の東大合格者を輩出し、県立優位の状況は昔から変わっていないという事情があげられます。
新潟県では、従来の中学受験での選択肢は、国立大学付属中学と私立中学校の入試でトータルした受験者数の推移は大きな変動がありませんでした。しかし2007年4月に大学合格実績に定評があった新潟明訓高校が中学校を開校したことと、この数年で続々と公立一貫校が設置されたことが重なり中学受験者も増加しています。新潟明訓中学校は、大学進学に向けて中1・2での英語・数学の授業を小人数クラスで展開し、中3の段階では、東大コース・医学部コースなどを設けるなどていねいな学習と進路に応じたコース制・科目選択を掲げ初年度から人気を集めている私学です。新潟県で最初に一貫校を開始した学校が新潟第一中学校です。同校は、新潟県内の私立高校で唯一の東大の現役合格者(2名)を出しています。国公立志向の強い学校として定評があり、建学の精神である「質実剛健」「自重自治」のもと、6年一貫カリキュラムを3段階のステージに分け、効果的な大学進学のカリキュラムを組んでいます。土曜日講座・春・夏・冬休みの期間中の講習指導で基礎・基本の定着と応用力の伸長を図ります。常に、学習面でも生徒に“勉めて強いる”ことなく“自分で考えさせる”“自分で選択させる”ということを意識させた規律ある進学校です。新潟県唯一の女子校が、新潟清心女子中学校です。カトリック系ミッションスクールで、中1で英語の授業が週7時間と多く、学校行事の中で国際感覚を身に付けるためのプログラムが豊富です。大学進学先も、語学・医療関連の大学・学部が多く、そのような大学の指定校推薦枠を多く持っていることも魅力です。
公立一貫校の設置に伴って、新潟県と同様に一貫校への選択肢の幅が広がったのが、石川県です。従来の中学受験での選択肢は、金沢大教育学部中学校と私立中学校でしたが、2004年に県立高校の上位校である金沢錦丘高校が、中学校(金沢錦丘中学校)を設置し、一貫校への新たな流れが生まれました。これと同時期に私立一貫校でも学校改革が行われています。北陸学院中学校は、アメリカ人の宣教師により開学されたプロテスタント系ミッションスクールです。長らく女子校でありましたが、2005年に共学化されました。中1の段階から、「中高一貫進学コース」と「中高発展コース」と2つのコース制を導入。1人ひとりの個性を伸ばすカリキュラムが組まれています。星陵中学校は、高校が甲子園常連校として有名ですが、中学校も野球・サッカーは全国レベルです。中学のカリキュラムは、高校からのコース制で国公私立大学進学に向けたトップクラスを目標とするきめ細かい学習指導を行っています。
北陸の地域で、特に名門県立高校色の際立って強いのが富山県です。県立色の強い県下で、長らく私立一貫校は存在しませんでした。しかし2005年に学習塾を母体とする片山学園中学校が開校しました。それまでの富山県の中学受験における選択肢は、富山大学付属中学校だけであり、公立一貫校も現在のところ設置されていません。同校のマニュフェストでは「定員80名の中、東大20名、医学部医学科20名」。県内だけでなく寮を完備(希望制)して首都圏・関西圏などの中学受験生からも注目を浴びています。土曜日学習・7時間授業・夜間の特別授業の補修・演習・発展学習を行い、週あたり51時限の学習時間を確保しています。大学進学に向けた主要教科の強化に偏らず、部活動への参加や各界一流人による特別講座「社会学」や海外留学などの課外活動を通じて、1人ひとりの人間性を育む「全人教育」を目指しています。
新潟・富山・石川に共通していえることは、もともと県立志向の色濃い地域であり、難関国公立私立大学への合格を多く輩出している名門県立高校が一方の選択肢として控えているということです。私立一貫校もその地域性や独自性を活かし、どう対峙していけるかがこれから注目するところです。
◆新たな一貫校の開設への期待(東北地方 宮城県)
宮城県は、ここ数年様々な教育改革が公私立ともに盛んです。もともと難関国公立私立難関大学の合格者は、ナンバースクール(仙台第一・仙台第二・宮城一女・宮城二女)と呼ばれる県立高校から多く輩出されてきました。ところが、こういった創立以来別学であった県立高校で、近年徐々に共学化が進められてきました。2005年4月に古川黎明中学校が宮城県で初めて公立一貫校となったのもその流れの一つです。宮城県のなかでもとくに、仙台圏では、今後この公立一貫校の設置が本格的に進んでいきます。来年は、仙台市立青稜中等教育学校。再来年には、宮城二女高校が二華高校として共学化とともに中学校の設置を予定しています。仙台圏では、もうひとつ大きな流れがあります。仙台市北部地区への企業誘致で、首都圏の大手企業が進出してくるということです。新たな首都圏からの家庭層を抱えることで、教育環境も変わってくる可能性が出てきました。このチャンスを私立一貫校の学校はどう捉え、様々な改革を進めていくのかが注目されるところです。
宮城県の私立一貫校で最も古い歴史と伝統を誇る学校として、東北学院中学校があります。120年以上の歴史を持つキリスト教プロテスタント系のミッションスクールで、宮城県の私立一貫校では唯一の男子校です。「奉仕の精神」「質素で勤勉」「知性と創造性」「平和と幸福の貢献」を教育目標に掲げています。効果的な学習と将来の進路の実現のための「蒼天」といわれるシラバスを活用し、自らの力で目標を達成する力を育んでいきます。東北学院の創立と時同じくして開設されたのが、宮城学院中学校です。東北学院とは、創立者が同じ姉妹校です。「共育」「共創」「共生」の教育目標のもと自立して生きる女性の育成を目指しています。中学校から週6日制の学習時間を確保し、主要教科のみならず全教科ゆとりをもって進めています。特に、音楽教科では、中3で「弦楽」という授業があり、バイオリン・ビオラ・チェロの中から1つ選んで週2時間の授業を行い、1年後の卒業式では発表演奏を行います。2008年から中高とも女子校から共学化された学校に尚絅学院中学校があります。「尚絅」の校名は、中国の古典の「中庸」の一節の「衣錦尚絅」からで、“内に豊かな教養をもち、なお清楚で謙虚なひと”の育成を願って命名されたものです。宗教教育と平和教育・開発教育という情操面と国際理解という側面からさまざまなカリキュラムや行事、調べ学習や自由研究を展開して定評を得てきました。さらに昨年から高校では、「特別進学コース」「総合進学コース」の2つのコース制を導入し大学進学に向けたカリキュラムを強化しています。
今までご紹介した学校はすべてキリスト教プロテスタント系の学校ですが、次にキリスト教カトリック系のミッションスクールを3校ご紹介します。
仙台白百合学園中学校は、「ゆたかな知性」「ひろがる国際性」「やわらかな感性」を柱に「宗教・福祉教育」と「国際人の教育」目指しています。6年間を3段階のステップとして捉え、「個の発見」→「個の探求」→「個の伸長」とその時期に合わせたカリキュラムと将来の進路に合わせたコース制を中3の段階からスタートさせます。白百合学園の姉妹校ネットワークは国内だけでも7ヶ所に点在し、学園としてのつながりも強いのが特徴です。2005年に日本の義務教育である小中の「6・3制」の教育システムを抜本的に改革した学校として聖ウルスラ学院英智中学校があります。同校は、現代の子どもたちがとりまく環境の変化にあわせて小中一貫教育の「4・3・2制」を導入しました。小中9年間を3つのステージに分け、私学ならではの独自のカリキュラムとして、小1からの英語の授業。教科担当制を小5から導入。高校進学にむけた中2からの先取り学習など子どもの成長に合わせたシステムを行っています。とりわけ主要教科に偏りのある学習重視型の学校ではなく、スポーツ・芸術面に関してのサポートも手厚い印象です。来年2009年に28年ぶりに再開をする学校として聖ドミニコ学院中学校があります。姉妹校である東京の聖ドミニコ学園の学習カリキュラムを導入し、難関大学進学を目指します。大学合格に留まらず本質的な学力向上のために、フィンランドの教育スタイルを参考に、基礎学力の中心となる国語力と数学力の充実をはかります。最後にご紹介する2校は、最近中学校を開校した学校です。仙台育英学園を法人とする、東北初の中等教育学校で2003年に開校したのが、秀光中等教育学校です。教育理念となる“Language&Music”は、国際的な視野を持つグローバリストの育成を目指すものです。入学当初から管楽器・弦楽器の練習に取り組み、海外のオーケストラとの競演も体験できます。こうした展開やネイティブの先生による英語授業を通じての学習など設備・環境を含めた“本物志向”を感じさせます。ドミトリーと呼ばれる寮を男女とも完備し、広く首都圏・関西圏の入学者がいるのもこの学校の特徴です。毎年堅実な大学合格実績をあげている私立高校が中学校を2008年4月に開校しました古川学園中学校です。1学年80名と少人数での編成で、高校の「普通科進学コース」に連結していきます。高校との6年間を3期に分け「基礎学力の養成から定着、大学合格」へと着実に力をつける積み上げシステムとなっています。特に、主要教科である英語・数学では公立中学校の標準時間の2倍の時間数を確保し、さらに土曜日の授業などを行いながら時間をかけて丁寧に指導していくのが特徴です。
今、宮城県の私立一貫校は、公立一貫校の設置、新たな大手企業誘致に伴い様々な改革が行われ、また来年以降も私立一貫校の開校が予想されます。私立一貫校の特徴は、「不易流行」という言葉に表される、創立者の考えのもと、未来にわたり継承し続け、その時代世の中を担う人材育成を目指しています。今後の私立一貫校の動向に注目していただきたいと思います。
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