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〈高校と大学の間 米国からの報告:下〉名門へ通じる多様な道

2010年9月20日

写真拡大ローレンスビル高校は200年の伝統がある。教室では長円形のテーブルを囲んで討論式の授業をする=米国・ニュージャージー州、山上写す

写真拡大ブルックリンラテン高校のグリフィス校長=ニューヨーク市、山上写す

 米国では、高い教育を受けられる大学への道は一つではない。恵まれた環境で当たり前のように進学を目指す私立高校があれば、親の財力がなくても名門大学に送り出す仕組みづくりに取り組む自治体もある。米国東部の実態からその差異と共通性を考えた。

■少人数の私立、年予算53億円

 プリンストン大学から車で約5分。私立ローレンスビル高校は、敷地全体を歩くのに軽く1時間以上かかった。大学と錯覚してしまうほどだ。

 陸上用のトラックが室内外2種類、五輪仕様のプール、スケートリンク、一人ひとりがゆったりと使える科学実験用の教室がある。全寮制で、寮は40人が1グループになり、それぞれの旗を掲げる。日本の高3にあたる新4年生、ローラ・ストックレイさんは「寮生活は小説ハリー・ポッターのイメージ。リベラルアーツのカレッジに行きたい」と話した。

 200年前にできた私立高校で、米国東部の名門だ。ほとんどがプリンストン、コロンビア、エール、ペンシルベニアなどの大学に進学する。生徒は1〜4年生800人、男女はほぼ半々。5割が白人で、4分の1がアジア系、残りが黒人やラテン系になる。

 入学者は、3カ月以上かけて選ぶ。8人のスタッフで学力、知的好奇心、小論文、インタビュー、学校外活動、コミュニティーへの貢献などをもとに希望者の2割を選抜する。

 同校の年間予算は約53億円。1人あたり年間450万円程度の授業料など学生からの納付金が約7割、外部からの寄付金などが約3割だった。日本の県立高校の年間予算は地方交付税の積算ベースで標準約4億円(教職員50人程度)だから10倍を軽く超える。潤沢な予算を背景に、1クラス12〜13人の少人数学級を編成する。授業では、基礎学力に加え、考える力を育てるのを重視し、討論式の授業を日常的に取り入れる。生徒の成績はほぼ全米のテストで上位10%に入るという。大学進学専門のカウンセラーは5人おり、進路にじっくり向き合う。

 高校の入学・財務担当の責任者は言う。「いい農場でいい肥料があれば、いい野菜がよく育つのは当たり前。もし落第したら私たちの責任です」

■移民多い公立 進学に力

 限られた予算のなかで、意欲ある生徒を名門大学に送りこもうという取り組みもある。

 ニューヨーク市立ブルックリンラテン高校は、4年前に創立された進学校だ。黒人やラテン系などの人が多く住む地区にあり、校舎は100年を超える中層ビルの3〜4階。1〜2階は小学校が同居する。

 全員が大学進学を目指す。最初の入学生60人のうち、今年50人が卒業し、シカゴ大やブラウン大などに進学した。今年の新入生は135人で在校生は350人。9割近くがマイノリティーで、6割が給食費の免除を受けている。

 学校によると、設立のきっかけは、NY市長の教育改革だ。民間の財団の協力で、3千人規模の高校を500人程度の小規模校に分割する方針を打ち出した。同校はそのうちの1校。最大の特徴は入試があることだ。市内には同じ選抜式の市立高校が計8校あり、人気が高い。入試は、民間テスト業者がつくる算数と小論文。選抜式8校の共通テストになる。校長や入学担当者が地域の志願者や家庭に出かけて面接し、子どもの進学に熱意のある家庭に積極的に受験を勧めるという。

 移民系の生徒が多いので、入学後は、母語や文化を重視する授業などを通じて、文化的なアイデンティティーを確立させ、自信をもたせる。とくに1年時にはテストや作文に時間をかけ、宿題は毎日最低3時間を課しているという。

 教員も校長が面接して採用を決める。いまは24人。教員1人に生徒が10〜15人の少人数クラスになるよう設定している。

 この学校の年間予算は、人件費を含めて約2億円。進学指導のカウンセラー1人雇うのが精いっぱい。だが、SATなど進学準備のためのテスト(5種類)やプログラムも最後の2年間でとるよう促し、大学への進学を後押しする。

 ジェイソン・グリフィス校長は語る。「教育が重要だと考える家族の熱意を大事にしたい」

■高校の姿、議論を

 《解説》 公立の2年制大学(コミュニティー・カレッジ)は誰でも入学できるといわれる。4年制の著名な大学に進む学生も少なくない。成績などをもとに州立や私立の大学に入学が認められると転学でき、高校と大学をつなぐバイパスのような役割を担う。

 米国では、高校から大学まで、やる気のある人に門は開いておくシステムだが、一方で、その競争に勝ち抜いていくのはごくわずかだという指摘もある。

 そのなかで、一般的に、大学への進学で重要なのは、高校の教育の水準と成績だと何度も聞いた。そのために意欲ある生徒の進学の後押しに取り組む高校の一端を今回見た。

 日本では、高校が多様化、個性化し、学校によって生徒が共通に何を身につけるのか、大学進学に何が必要なのか、はっきりしなくなった面もある。

 米国の高校と大学の関係は参考になる。多くの生徒が大学に行くようになった時代。高等教育の入り口、初等中等教育の完成として、高校が本来どんな機能をもつべきかを議論することは入試の見直しも含めてますます重要になるだろう。(編集委員・山上浩二郎)

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