現在位置:asahi.com>教育>小中学校>花まる先生公開授業> 記事 心に音楽のシャワー 埼玉県立秩父養護学校 高橋浩美さん2007年05月28日 遠足だよ、遠足だよ
ウシに会えるよ ヤギにも会えるよ 近くの牧場へ行った遠足を、歌で振り返る。知的障害のある中学部の生徒18人と、付き添い役の教師ら10人が、高橋先生の伴奏で一緒に歌った。 途中、指名された1人が前に出て「モーモー、メーメー」と鳴きまねだ。ほかの生徒も続いて同じように鳴きまねをする。 生徒たちは楽譜ではなく、耳だけで歌を覚える。動物の鳴き声を題材にしたのは、ドレミが分からなくても、音の高低をそのまま心と体で感じてもらおうという狙いからだ。 「思い出して。牧場のヤギの声は、もっと可愛くなかった?」 すると別の男子が前に出て、「メーメー」と裏声を出した。 「上手!」。拍手が起きた。得意げに戻ってきた彼を、みんながハイタッチで迎える。 手をつなぐ、肩を組む、抱き合う……。触れ合いが多いのは、人との関係に慣れていない生徒たちの心をほぐすためだ。生徒同士を向かい合わせ、大人に頼りがちな気持ちを少しでも「仲間」に向けようという工夫もしている。 白い光の中に 山並みは萌(も)えて 遥(はる)かな空の果てまでも 君は飛び立つ ここ数年、卒業式の歌の定番になった「旅立ちの日に」。NTT東日本のCMの中で人気グループのSMAPが歌ったことで、世代を超えて知られている。 この曲を作ったのが高橋先生だ。秩父市の公立中学校にいた91年春、卒業生たちを元気づけようと、当時の校長が歌詞を、高橋先生が曲を作って贈った。 この中学では合唱指導に力を入れ、「歌声の響く学校づくり」を目指していたことが、曲作りの背景にある。 そのとき限りの曲のつもりが、生徒たちに歌い継がれ、口コミで全国に広がった。 「音楽は心の壁を崩す魔法」。その思いは、結婚・出産を経て6年前、希望して移ったこの養護学校でも変わらない。 高橋先生は続いて、新しい曲「こんにちは こんにちは」を生徒たちに紹介した。みんなが耳をそばだてて聞く。 今日は会えて良かったね みんな待ってたよ 生徒と大人が2列で向き合い、フォークダンスのように踊りながら歌う。すぐに曲を覚え、声も大きくなる。笑い声も出てきた。 その時、列からはずれ、泣き出しそうな顔の女子がいた。 ピアノの前の高橋先生はすぐ、別の先生に「行ってあげて」と目で合図した。1人が混乱すると、生徒全体に伝染することもある。涙は「わがまま」ではなく「その子の正当な主張」ととらえ、一人ひとりの気持ちに寄り添う。 「音楽が障害のある子の人生を豊かにする」と先生はいう。「障害のある子も、ない子も、体の中に色んな種を持って生まれてきています。芽が出るよう、シャワーのように音楽を浴びせたいですね」 生徒たちが主役のミュージカルにも挑戦中。曲はもちろん、先生のオリジナルだ。 花まる先生 バックナンバー
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