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花まる先生公開授業

深く深く何度も音読 愛知県東海市立大田小学校・丹下加代子さん

2007年11月19日

 6年1組の全員が、声を合わせて音読し始めた。

写真

「あなたはどう思う?」「あなたは?」。次々と答えを引き出す丹下先生=愛知県東海市で、佐藤慈子撮影

 「クラムボンは 笑ったよ」

 「クラムボンは かぷかぷ笑ったよ」

 谷川の様子を、底にいるカニたちの視点で描いた宮沢賢治の短編「やまなし」だ。

 丹下先生の授業は、とにかくテンポが速い。

 「はい、次はリレー読み」

 全員が座り、3人だけがすっと教室の前、後、中央に分かれて立つ。それぞれ「地の文」「カニの兄」「弟」の役でまた音読。

 「やまなし」は、カギ括弧の中の言葉が、兄弟どちらのカニが話したのかわかりにくい。先生はそれを逆手にとって「あれ、ここ、さっきの3人のときは、後ろにいる弟役が読んだけど……と思うと楽しいでしょ」と笑う。

   ◇

 「登場人物は?」

 「カニの子どもだと思います」と男の子。みんなが黙って賛成のピースサインを挙げると、発言した子が次の子を指名した。

 「カニの兄弟だと思います」

 発言したら、また次を指名。先生が板書している間も、どんどんつながる。

 向き直った先生が言った。

 「いったいこのカニって何歳なの? 寿命は?」

 教室がざわめいた。

 「はい、カニの専門家!」

 わからない単語は、最初の授業ですべて書き出し、調べ役(専門家)を決めてある。先生はそのカニ担当者を指名したのだ。

 「寿命は……」

 答えに詰まっていると、先生がすばやくカニの本を出す。

 「谷川だからサワガニだね。寿命は8から9年。3歳までが子ガニ。じゃあ、この子たちは?」

 担任になった4月、手を挙げる子がほとんどいないことに驚いた。指名しても声が出ない。もっと自信を持って発言して欲しい。そこで、意見を次々に言わせ、それを受けてすぐ誰かが発言するという訓練を繰り返してきた。毎時間、1人3回は答える約束だ。

 「クラムボンは死んだよとあるけど、何で死んだの?」

 「殺された」

 「だれに?」

 「魚」

 「なんで魚ってわかるの?」

 「魚が頭の上をすぎていったとあるから」

 「じゃあ、なんでその後にまたクラムボンは笑ったとあるの? クラムボンって何?」

   ◇

 沈黙が広がると「はい、もう一度全員で読んで」。

 何度も音読し、考えを深める。

 重要だと思った表現や疑問は各自短冊に書き、教室に張り出してある。行間に隠れている言葉も考えて、教科書を拡大コピーした紙に、みんなで書き込んだ。賢治の他の作品、みんなの感想文……、教室中の掲示物が、賢治の理解を深めるための「教材」になる。

 毎時間、授業の最後に、感想を求めるのも「丹下流」だ。

 「みんなの意見を聞いたり読んだりして、自分の意見が変わってきました」と女の子。

 「読むたびに考えが変わっていいんです。先生もそうですから」

 授業後、職員室に戻った先生は、教頭と抱き合って喜んだ。この日初めて、自分から挙手できた子がいたから。

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