屋外アート展の鑑賞を授業に取り入れる本永先生=東京都杉並区で、蛭田真平撮影
善福寺川の水源、緑豊かな善福寺公園は学校のすぐ近く。本永先生は、4年2組のみんなをこの公園へ連れ出した。この日の図工は「アート鑑賞」だ。
公園では、国内外の現代作家10人の10作品を点在させたアート展「トロール(妖精)の森」が開かれていた。
図工専科の本永先生は毎年4月、4年生に「トロールの森」という授業をする。学校にプロの作家を招いて一緒に作品をつくり、公園一帯に展示するのだ。一昨年は段ボールで鳥を、去年はペットボトルで妖精を、今年は好きな写真を撮影して枝に飾った。
「みんなも作品展をしたアーティスト。同じアーティストの視点で見て欲しいと思います」
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先生は、10色の色画用紙で作った「見つけたシート」を全員に手渡した。そこには、作品の場所の地図と、各アーティストからいくつかの質問が書かれている。
「みんなは返事を書いて」
オリエンテーリングのように班に分かれ、作品探しが始まった。
「あった!」
森の土の中から、白い二等辺三角形の固まりが突き出ている。
見つけたシートには「土の下には、どんな世界が広がっていると思う?」とある。
周りの土を掘ってみる男の子。
「シートに、四つの作品を探して線で結んでって書いてある。三角形は四つあるんじゃない?」と、女の子が地図を見た。
「行ってみよう」
だが、他の3カ所も、同じ二等辺三角形が突き出ているだけ。
「どういうこと? うーん」
「シートをよく読んでみて」と先生。
「わかった! 四つをつなげると四角になるんだ」
「あっ、そうだ。すっげー」
先生はにこにこ笑っている。公園の四つの端にある三角をつなげると、池を覆う四角ができあがる仕掛けだ。三角形それぞれが「池を包み込む紙」の角なのだ。
「美術鑑賞というと、展示する側の視点で次々と説明され、見る側は『なるほど』とうなる。でも、シャワーのように与えられた鑑賞はさせたくないんです」
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ベンチに、オランダの男性がパソコンを開いて座っていた。実はこの人もアーティスト。
見つけたシートには「何を使って音をつくる?」とある。
パソコンにつながれた空き缶をたたくと、その音が繰り返しスピーカーから鳴った。
「音のアートだね」と女の子。
池の上には、細い木で作られた2本のらせん階段のオブジェがあった。水面から2メートルくらい上ると、その先はない。
見つけたシートには「この作品はどこへ行くの?」とある。
「天国」「きれいな空」と男の子たち。
「どうして2本?」
「男と女だから」
たくさんの落とし物のハンカチで作られたオブジェを見た女の子は、「みんな同じ思いをした子だから、みんな集まって幸せになるんだね」と、感想を書いた。
「作品と直接対話するだけで、驚くほど哲学的な考えが出てくるでしょ。アートが遠い存在じゃなくなれば成功です」