「正解じゃなくていい。自分の推理を堂々と伝えよう」と、語りかける鈴木先生=千葉県市川市で、郭允撮影
「今日は皆さんを超魔術の世界に招待します」
黒いコートにサングラス。鈴木先生が怪しげな姿で現れると、5年生の教室が沸いた。
手には水が入ったペットボトル。「水の色、何色ですか?」
「透明!」
ところが、先生が「あか、あか……」と唱えながら振ると、あっという間に赤色に。続いてその水を紙コップに入れ「頭からかぶります」と宣言。コップを頭上で思い切りひっくり返した。
みんな思わず息をのむ。でも、あら不思議。水は1滴もこぼれない。大きな拍手が起きた。
「さて、コップの中の水、どこへ行ったんでしょう?」
◇
この日の課題は、トリックを自分なりに推理し、わかりやすく相手に伝えること。先生はスピーチの授業を通じ、他人の話を聞く力も育てたいという。
「話す内容を一生懸命考えれば友達のスピーチにも関心がわく。それが聞く態度につながります」
ビデオのスイッチを入れると、画面に「超魔術師」のミスターマリックさんが現れた。テレビ番組を録画しておいたものだ。
客の1人がトランプの束から1枚を選び、後ろ向きに立っているマリックさんに手渡す。マリックさんは後ろ手で受け取るのでトランプを見ることはできない。しかもトランプは裏返しだ。
次にマリックさんは右手だけ前に出し、テーブルに置いてあったコップを取り上げた。
何かが入っているかのように中をのぞくと「トランプはダイヤのエースですね」。
もちろん正解。子どもたちからどよめきが起こった。
「なんでわかるんだ?」
「むずかしー」
ビデオを止め、子どもたちはさっそく隣の子と推理を話し合う。身ぶりを交えて熱心に自分の考えを説明したり、いくつものアイデアの中から「これ」と思うものを選んでいったり。
「みんなが言いたいことを原稿に書いてみよう」
先生は原稿の見本を黒板に張り出した。まずマジックの手順を書く、そこに自分の推理を加える、など作業の要点も説明する。
◇
ビデオをもう一度見ながら原稿を点検したら、今度は原稿をもとに3行以内のスピーチメモを作る。原稿にすることで考えが整理されるので、メモを見るだけでスピーチできるようになるという。
「原稿を読むだけでは棒読みになり、相手にうまく伝わりません」
いよいよ4人グループになって1人ずつスピーチを開始。相手が少人数だから緊張せずに話せる。
さて、みんなの推理は?
「手に特殊な液体が塗ってあるから、トランプに触れただけで柄が手に写し出されたと思います」
「隠し持った鏡に映せば、トランプが裏返しでも見えるでしょ」
仲間の推理に楽しそうに耳を傾け、質問も飛び出す。
最後にビデオの続きを見てタネ明かし。みんな食い入るように見つめた。
「楽しいテーマだから自分の推理を話したいし友達の話も集中して聞ける。そんな経験をたくさんさせたいですね」