子どもたちが書いた10年後の人生設計図を前に、体験を交えて話す高良先生=福岡市で、松本剛撮影
「これ何かわかる?」
先生が、自分の小中高校時代の卒業アルバム3冊を掲げた。
「あっ、似てるー」
「似てるって、本人や!」
「さて問題。次の四つのうちアルバムでわかることに○、わからないことに×をつけてください」
行事○、自分の姿○、いま考えていること×、未来への期待×。
「みんなの設計図には、×をつけたことが書かれてますか。友だちと最後の確認をしてください」
6年2組の最後の総合学習は、これから10年の「人生設計図」作りだった。未来年表でも絵でも作文でも、スタイルは何でもいい。1カ月前から取り組んできた。
◇
3、4人ごとに机をくっつけ、設計図を見せ合う。男の子が手作りの巻物を広げた。
「2011年、有名な高校を受験し合格。2014年東大に入学し弁当屋になる……」
「なんで大学で弁当屋?」
友だちの疑問に「残った弁当を持ち帰れるから。一人暮らしでも夕食困らないでしょ」。
「じゃあ、それも書いたら」
年齢別に6ピースあるジグソーパズルを作った子もいる。
「18歳 ギリギリで大学合格。土日は仲間とお台場で遊ぶ。22歳 卒論を出したら教授から声がかかり研究者に。科学者をめざす」
医師国家試験の受験勉強をしている自分へ励ましの手紙を書いた子、自分の今後10年の恋愛を小説にした子――。
先生は教室を回って「そのために、これからどう生きるの」と声をかけていく。
先生は、みんなに夢を尋ねたことがある。
4分の1が医者、そのほか発明家、作家、作詞家、俳優、ゲームプログラマー……。格好よく見える職業が並んだ。
「3年後に進学校に入り、また3年後には有名大や医学部に進むと漠然と思っている子が多い。これでいいのかと少し不安になりました」
そこで、10年前の卒業生で、この春社会人になる3人を招き、小学生のころの考えや就職について話してもらった。さらに、大学院を中退し「アイガモ農法」の専業農家になった人、楽団からの誘いを断りフリーで施設などを回って演奏するチェリスト、電器会社の営業トップ、の3人も呼んだ。
「人生にこだわりを持つ。自分が世の中にどう役に立ちたいのかも考え、いまを一生懸命生きることを知ってほしかった」
◇
授業の前まで、父と同じ医師になるか裁判官を目指すか迷っていた男の子。10年後の自分にこんなメッセージを書いた。
「高い道を上るにはしっかりとした足場が必要です。だから遠くを見ず、視界から見える道を一生けんめいに生きてください」
正しいことを貫くために、裁判官になるという。
「小学生で目標の職業を決めるのは難しい。ただ、こうなりたいと思っていれば、挫折に負けないはず」
最後に先生は自分の小学校の卒業文集を見せた。そこには「小学校の先生になりたい」とあった。
完成した「人生設計図」は13日、タイムカプセルに入れて校庭に埋めた。