子どもたちと「さくらさくら」を歌う広田先生。授業はいつも笑顔だ=名古屋市中村区、恵原弘太郎撮影
授業が始まるとすぐ、広田先生はCDをかけた。
♪世界中の子どもたちが 一度に笑ったら 空も笑うだろう……
音楽室にいる4年1組のみんなは、円形に並べたイスに座り、CDにあわせて歌い始めた。「世界中の子どもたちが」は、全国の保育園や小学校で歌われている曲。大半の子が歌詞を暗記している。
歌い終わると、先生が近くに座っていた男の子を立たせた。
「この子は外国から来た子だとします。日本のことは何にも知りません。今日は、この子に日本の代表的な花、サクラを教えてあげたいと思います。どんなものか教えられる人?」
数人が手を挙げた。
「サクラはピンクの花です」
「葉っぱはまんじゅうにつけて食べられます」
「春にうぐいすが来ると咲く花です」
「咲いたら花見にいく」
花見に行く理由も尋ねた。
「すぐに散って葉っぱになっちゃうから」
「春だなぁって感じて気持ちいいから」
*
「それでサクラのイメージが外国の子に伝わるかなあー」
先生はそういいながら、みんなの輪の中に置かれた2台の琴に歩み寄った。
ポローン、ポローン。琴の音を実際に聴くのは初めてという子が多い。教室中が静まりかえる。先生は弦を1本ずつ弾いた後、全部の弦を一気に弾いた。
一呼吸おいて、「どんな感じだった?」。
「散る感じ!」
「サクラ吹雪!」
音が自然にサクラのイメージとつながった。
「じゃあ、順番に弾いてもらいます」
笑みがこぼれ、みんなワクワクしているのが分かる。
今日の狙いは「日本を音で伝えること」。先生は、学校で国際交流に取り組むうち、子どもたちが日本の音を学ぶ機会が少ないことに気付いたのだそうだ。
「将来、国際的に活躍するためには、まず日本を紹介する方法を知らなきゃ」
1人ずつ弾いてみた後は「重奏」だ。
「今度は2人ずつ自由に弾いてもらいます」
「えーっ、いいの?」
約束は一つだけ。どこの弦から初めてもいいが、必ず隣の弦へ音を続けていくこと。
やってみると、2人がどう弾いても、きれいな和音に聞こえる。
「不思議だね。これが日本音階の特徴的な音なんだよ。日本らしい景色を思い浮かべて弾いてね」
広田先生は、友だち同士で音を重ねたり、リズムを合わせたりして、音で伝えあう授業を大切にしているという。
*
最後に、先生のピアノに合わせ、「さくらさくら」を歌った。
途中で何人かが歌に合わせ、教室にある太鼓や琴を演奏し始めた。先生は止めることなく「いいねえー」とほめた。
「これが自然なジャムセッション(即興の合奏)。音楽で、世界のだれとでも即興演奏できる子に育ってくれたらうれしいですね」(宮坂麻子)