「考えることが楽しい授業にしたい」と語る香月先生=山口県下関市、柏木和彦撮影
「たいへんです。かいじゅうがあらわれました」
香月先生が早口で教科書を音読する。子どもたちが負けずに続く。カバ、ハリモグラ、ゾウの鼻の特徴について書かれている「どうぶつのはな」は1年生が初めて出会う説明文。入学してまだ2カ月だが、すらすら読みこなしている。
「音読は毎日訓練しています。声に出して表現することが、読解にもつながりますから」
ペアで交互に音読したら、教科書を閉じ、次は「間違い探し」。
「今度は先生が読むので間違ったら言って下さい」
「かばは、くさむらや……」
読み始めてすぐ「ストップ、ストップ」と手が挙がった。みんな内容をほとんど覚えているのだ。
女の子が立ち上がって「くさむらじゃなくてね、川だよ」。
正解。先生は再び読み始める。
「もぐるとき、はなのあなをとじて、みずがはいるようにします」
またまた「ストップ!」。
今度は別の子が「『みずがはいらないように』なのにね、『みずがはいるように』って言った」。
間違いを聞き漏らさないよう、みんな真剣。楽しみながら自然に内容の理解も深まっていく。
*
先生は教科書に出てくる3匹の鼻の写真を黒板に張り出した。
「おもしろいこと思いついたよ。カバの鼻をハリモグラの鼻に交換しよう」
そう言って、カバとハリモグラの写真を置き換えるとすぐ、「ダメー」の大合唱。
「何でダメなの?」
「長さが違う」
「大きさが違う」
それはそうだが、教科書には別の理由があったはず……。
「あのね、絶対ダメなわけがお話の中に書いてあるから読んでごらん」
みんな慌てて教科書を開く。
「わかったー。カバはハリモグラみたいにシロアリを食べないから」。答えた女の子はうれしそう。
別の女の子は「カバさんをハリモグラの鼻にしたら鼻の穴が閉じれんくなる。水に潜れんくなる」。
「そんなこと書いてある?」
「6段落に書いてある」
「じゃあ、みんなで読んでみよう」
先生は満足顔。「ほかの動物と比較した方がそれぞれの鼻の特徴を理解しやすい。入れ替えるのはそのための仕掛けです」
*
「この三つの鼻全部に当てはまる言葉が、教科書のどこかにあります。見つけてごらん」
みんな必死に教科書をめくる。見つけたら先生の耳元でこっそり伝えるのがルールだ。
先生の前にはすぐに長い列ができたが、正解はなかなか出ない。先生はヒントを出した。
「7段落にあるよ。誰が最初に見つけられるかな」
みんな自分の机に駆け戻り、7段落を読む。再び先生の元へ。20人ほど答えたところでようやく正解第1号。たどり着いたキーワードは「べんり」。確かに3匹とも便利な鼻を持っている。
「『べんり』という言葉が3匹の特徴をつないでいます。説明文にはそういう言葉がある。それを意識しながら文を読んでいくことが大切ですね」(斉藤純江)