原稿用紙や付箋、作文技術の本も自由に使える。子どもたちの相談にのる岩瀬先生=埼玉県狭山市、山谷勉撮影
「ミニレッスン行きます!」
岩瀬先生が声をかけた。6年1組のみんなは、教室の前のスペースに出て、先生を囲んで座った。先生は絵本の朗読を始める。
「おえかきのじかんがおわった。でもワシテはいすにはりついている。かみはまっしろ……」
お絵かきが苦手なワシテという男の子が、苦しまぎれに描いた小さな「てん」から、絵に目覚めていく話(『てん』ピーター・レイノルズ作・絵)だ。
読み終えると、先生が尋ねた。
「ワシテはどうして絵が描けるようになったの?」
「ワシテの描いた点を先生が額に入れて飾ってくれたから」
「自分に自信が持てたから」
「じゃあみんなは、友だちが文章を書けなくて悩んでいたらどうする?」
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「作家の時間」と名付けられたこの授業。実は作文の勉強だ。岩瀬先生が毎年、学年に関係なく週1、2回続けている。
授業冒頭の10分間の「ミニレッスン」はいつも、作文の技法やヒントを教える時間。この日はワシテの絵本で「書く意欲を引き出す方法」について考えた。
続いて25分間の「書く」時間。子どもたちは、それぞれのノートに文章をつづる。小説、体験記、論文……ジャンルは問わない。前の授業の続きでもいいし、新作でもいい。
書く場所も自由だ。集中して1人で書きたい子は廊下へ。教室の後ろで友だちと輪になり、読み合いながら書く子もいる。
「ただ、いい文章が書ければいいわけじゃない。書いた作品を友だちと読み合って、学び合うことが狙いです」
先生が1人の男の子に歩み寄った。読書ばかりしていて勉強せず、母親に「読書禁止令」を出されたことを書いている。
「お母さんに言われた時、心の中でどんな声が出た?」
先生はアドバイスを大型の付箋(ふせん)に個条書きにし、子どもたちのノートにはっていく。
友だち同士で作品を読みあい、互いに線を引いたり、付箋をはったりしている子がいた。語尾に「だった」と「ました」が混在して読みにくいところをチェックしているのだという。
納得できる作品ができたら、好きな原稿用紙を選んで清書する。これらは2カ月に1度、文集にすることにしている。
「作文というと隠して書く子が多い。でも、人に見せることを繰り返すうち、読者がいるからこそ成長できる、と気付くんです」
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最後は作品発表の時間。毎回、先生に指名された1人が自分の作品を読み上げる。
女の子が前に出た。テーマは水族館。行きの電車に始まり、ペンギンに触り、「将来は飼育員をめざす」と決めるまでの胸の内がノート3ページにびっしり書いてある。ちょっと早口で一気に読んだ。
聞いた子どもたちはそれぞれ、付箋に意見を書いて手渡す。
「言葉の繰り返しがうまい!!」
「短く区切った文が効果的!」
黒板の隅には、いつもこう書かれている。
大切な友人(1)いいところを伝える(2)よくなるためのアドバイスをする――
(宮坂麻子)