抑揚をつけて上手に音読する子どもたちを見守る宇野先生=北海道旭川市、吉本美奈子撮影
始業のチャイムが鳴った。当番の子が「心の準備は?」と尋ねると、全員が声をそろえて「ダイジョウブー!」。
これが、起立、礼、に代わる6年2組のあいさつ。2学期に入って、子どもたちが勝手に始めた。
宇野先生は笑うだけ。
「授業に支障ないでしょ。どの子のどんな考えも受け止めてあげるクラスをめざしてますから」
*
国語の授業は「読み聞かせ」からスタート。この日は「バッテリー」(あさのあつこ)だ。声優のような先生の語りに、みんなが聴き入る。人の話に耳を傾け、集中する訓練の10分間。
続いていつもの「漢字学習」。今日の漢字は「著」と「装」。
全員が人さし指を出し、「1、2、3、4……」とかけ声をかけながら、空中で「著」の字を繰り返し書く。続いて「装」。
漢字を覚える近道は何度も書くこと。でも、ノートに何十回も書いているうち漢字嫌いになる子も出る。苦痛を感じないよう授業のたびに2文字ずつ。隣の人の背中に、自分の手に、おじさんのような声で、怒った声で……。楽しみながら指で書いた後、鉛筆でドリルにも書く。「授業だけで10回以上書く」のが目標だ。
次は、先生が選んだ100編の詩集「百の詩」を読む時間。この日は79番の「今日からはじまる」(高丸もと子)。三つの連、それぞれに同じフレーズが繰り返し出てくるのが特徴だ。先生に続いて1文ずつ音読する。
「気づいたことは?」
「『何かいいこと』が3回出てくる」と男の子。
「いいとこ気付いたねぇ」
別の子も「『今日から始まる』もいくつもある」。
「さすがー。じゃあ、その二つのことばを丸で囲んでみよう。こういうのなんて言うんだった?」
男の子が「リユース!」と自信をもって答えた。
「惜しい。『リ』はあってた。リフレインだったよね」
*
ようやく教科書を開いた。伝記「宮沢賢治」を全員で音読。「口を大きくあけて」「超高速で」。何回も読み返す。
「宮沢賢治はどのような人だったと書いてありますか?」
「太陽のような人です」
「それ、どんな人? 具体的にノートに書いて。2分!」
ストップウオッチをスタートさせて教室を回る。「長い文で書けたね」「なるほど」「いいぞ」。かける言葉は肯定的なものばかり。
2分後、「では、立って。2人と意見を話し合ったら着席」。
友だちと意見交換。自分の考えを言葉にする訓練だ。
それから発表。賢治は心が広い人、熱心な人、激しく燃える人、心が熱い人、光ってる人……。
「熱いけど、ちょっと違う」
男の子がつぶやいた。
「えー、どういうふうに?」
先生がつぶやきを拾い上げた。男の子は言葉につまった。
先生が手助けする。
「アッチーって感じじゃないってこと?」
「そう」
「熱いぜって感じ?」
「そうそう」
思ったことを自分の言葉にできる子。先生の目標だ。(宮坂麻子)
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