グループをまわりながら、チャットの輪に入る本多先生=東京都千代田区、小暮誠撮影
「Do you want to go to Okinawa?(沖縄に行きたいと思う?)」
「Yes,I do.The sea is very beautiful(もちろん。海がとってもきれいだし)……」
2年生のクラスを分割した少人数授業。17人が数人ずつのグループになり、「沖縄」を題材に、行ったことのある場所や好きな食べ物について、英語で話している。
ウオーミングアップは本多先生が「チャット」と名づけた会話練習。数分間、即興で話し続ける。会話力を身につけるため、しばしば取り入れている方法だ。生徒たちはためらうことなく、和やかな雰囲気で会話をつなぐ。
先生も話の輪に入り、「When?」「Where did you go?」。質問しながら会話を盛り上げた。
*
この日は、沖縄出身で目が不自由な歌手・新垣勉の半生をつづった物語の最初の授業。先生は、彼が歌う「さとうきび畑」を聴かせてから、その半生を英語で説明した。
メキシコ系アメリカ人の父と日本人の母との間に生まれたが、両親とも幼い彼を残してどこかへ行ってしまったこと。ラジオで聴いた賛美歌に興味を持ったこと……。
黒板に新垣の写真や家系図、ポイントとなる言葉を示しながら、丁寧に話を進めていく。時々わからない表現も出てくるけれど、生徒たちは話に引き込まれていった。
続いて、教科書4ページ分の物語の全文が載ったプリントが配られた。教科書の文章は、脇に難しい語句の意味が日本語で書いてあるため、ついつい気がそれる。そんな日本語に頼らず、真っさらの英文の読みに挑戦できるよう先生が作ったのがこのプリントだ。
「今の説明を参考に、この文章を読んでみましょう」
生徒たちは英文に目を落とし、約300語の物語を黙々と読む。6分間で2回読むのが目標だ。知らない単語やわからない表現があっても、まずは自力で読んでみることが大切なのだという。
「1文ずつ細切れに読んだり、全文を教師が訳したりしていては読む力はつきません。まとまった文章の内容をとらえる力を、中学生のうちから育てたいと思っています」
*
読み終えたら、内容をプリントに個条書きにする。これは日本語でOK。
「(新垣は)教会で音楽を聴いた」
「牧師さんの家族になった」
「ボイストレーナーに『君の声は神からの贈り物だ』と言われた」
書きながら、男子生徒が「(文中の)left home(家を去った)って『左の家』かな?」と言った。先生は「たぶん、ちょっと違う」と言うだけ。あえて正解は教えない。
「今ある知識を使って内容をおおまかにとらえる訓練なので、この段階で細かいことがわからなくてもかまわないのです」。文章の正確な理解は次回以降の課題だ。
書いたことを数人のグループで発表し合い、情報交換したら、残り5分は教科書を開いて全文をもう一度読んでみる。
「脇に書いてある日本語はできるだけ見ないで下さい」。最後の最後まで、訓練は続いた。(斉藤純江)
ここから広告です
広告終わり