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マニラ日本人学校・谷中修さん

日系人の歴史学び共感

2010年3月29日

写真「友だちの発表、どこが良かった?」。子どもたちにたずねる谷中先生=マニラ、村山幸親氏撮影

 6年生のみんなは、昨年11月に修学旅行で訪れたフィリピン・ルソン島のバギオ市について、長い時間をかけて調べてきた。

 この日の総合学習の授業では、47人がテーマごとに10班に分かれ、発表の練習をしながらさらに考察を深めた。バギオの日系人社会や産業について、授業の最後に保護者向けにプレゼンテーションをするためだ。

 バギオは第2次大戦で日本軍と米軍の激戦地になった。戦後、反日感情が高まり、山中に逃げ込んだ日系人もいた。そうした人たちの救援活動をした日本人修道女「シスター海野(うんの)」こと、故海野常世さんや、活動を受け継ぐ日比親善友好会館(アボン)などを中心に調べた。

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 授業の最初、谷中先生は発表のコツを伝授した。

 「内容を理解しているか」「ゆっくりと」「はっきりと」「分かりやすい」という四つの観点に沿って評価しながら、お互いに各班の発表を聞いた。

 「バギオの昔と今」を調べた班は、日系人が経営する店が多かった1920〜30年代のセッション通りの写真や地図を示し、今は1軒しか残っていないことを紹介。「戦後、日系人に対する憎しみが強まり、次々に閉店した。戦争がなければ日系人経営の店が今でも並んでいたかも知れない」と考察した。

 シスター海野やアボンを取り上げた班は、修学旅行で撮影した写真も添えてまとめた。「戦争のつらさや日系人の方々の苦労を改めて学んだ。アボンの方々は苦労をしてきたが、今も活動していることがすごいと思った」

 マニラ日本人学校では約3割がフィリピン人と日本人の両親を持ち、日本語が不慣れな子もいる。

 「聞く人を意識し、考えをきちんと伝えるというコミュニケーションがより大切になります」と先生。授業の随所で、「相手の目を見て」「棒読みではなく自分の言葉で伝えて」などと助言した。

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 先生は10年以上、バギオを舞台にした総合学習に力を入れてきた。「自分が日系人から聞いた話を教え、彼らの苦労や感動を伝えなければならない」と話す。

 これまで50回近くバギオに足を運び、シスター海野に会い、何人もの日系人に取材した。

 「日本軍の山下(奉文<ともゆき>)将軍と同じ名字だったため、みんなから名前を変えろと言われた」「兄は日本から兵隊としてフィリピンに来て、アメリカと戦った。周りのフィリピン人から人殺しの妹だと言われた」――。先生がじかにインタビューした「時代の証言」には迫力がある。子どもたちは、その取材メモや資料を読み、インターネットや文献で調べ、修学旅行で日系人と交流しながら体験談を聞き、発表をまとめた。

 6年生はバギオの日系人を題材に劇を上演する活動にも取り組んできた。谷中先生は「様々な活動を通し、日本人としてだけではなく、フィリピン人の視点からも物事を考えられる多面的な視点を養ってほしい」と願う。

 「日系人の方の苦労を知り、感謝の気持ちを発表会でも表すことが大切なのですよ」。先生は発表の意義を話して、授業をしめくくった。(山根由起子)

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