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多摩美術大学「あそびじゅつ」 海老塚耕一さん

素材知り 感じる

2010年7月19日

写真「どれだけ広い遊びをするかどうかで、人生変わるんだ」と海老塚先生=東京都世田谷区、安藤由華撮影

 多摩美術大の都内の映像スタジオに次々やってきた子どもたちが、「きれい!」と声をあげた。

 スタジオの床には、畳4枚を縦に並べたぐらいの長い板が横たわり、その上に色とりどりの板ガラス片が並ぶ。ストライプ、水玉、ザラザラしたもの……。千、いやもっとある。2、3センチの小さなかけらが、ライトを浴びて、一つひとつが違った表情を見せる。

 「いいよー、触ってごらん」

 海老塚先生が子どもたちに優しく声をかけた。

 テーマは「ガラスをつなげて、光をあそぼう」。ガラス片と紙粘土で各自、タワーを作るのだ。

 海老塚先生は、現代美術家であり、多摩美大の教授。以前、フランスの空き地で大きな作品をつくっていると、子どもたちが集まってきた。そのうち、幼稚園や小学校の先生までやって来て、授業を始めてしまう。

 「日本の美術館には、なぜ子どもがいないのかと思った。美術は教養でも、つまらないものでもない。もっと身近にできないか」

 2001年、多摩美術大学生涯学習センターの小学生講座として、毎回公募で、この「あそびじゅつ」を始めた。いまや、中学生美術講座など、年間数十の子ども講座をプロデュースする。

 先生がマイクを握った。

 「ガラスって、どんなもの?」

 「透明」「割れやすい」……。

 「どんな所に使ってある?」

 「窓」「電球」「花瓶」……。

 「同じガラスも光を当てる時と当てない時では、全然違うんだ。ほら」とガラス片を光にかざす。

 ここでお勉強。ガラスの歴史や種類を説明し始めた。紀元前にやじりに黒曜石を使ったのが始まりなこと、ソーダ石灰ガラスと鉛ガラス、耐熱のホウケイ酸ガラスがあること、引き抜きガラスとフロートガラスの製造の違い……。説明は平易だが、内容は高度だ。

 「作品をつくることより、素材を知り、見て、触って、感じることが大切です」と言う。

 紙コップ1杯分のガラス片をくじ引きでもらい、さらに床に並ぶガラスから好きなものを取って、設計図を描く。クマ、ロケット、スカイツリー、竜……。実現困難な図にもニッコリ笑い「つくるうちに限界を知る。それでいい」。

 続いて、頭像用の芯棒に麻縄を巻き付け、紙粘土で形を作った。そこにガラス片をつけていく。

 ガラスをずっと眺めている子に先生が近寄った。ガラス片に白い紙をのせ、鉛筆で凹凸の表面をこすると、柄が浮かび上がった。

 「おもしろいだろ。どっちを表にする? 肌触りも違うんだ」

 赤いガラスを集めている子には「赤が一番値段が高いんだよ」。

 「これいいでしょ。簡単じゃん」と女の子が設計図を見せた。

 「簡単がいいわけじゃないんだぞ。難しいことの方がおもしろいんだ。1+1はなんで2? 1自体が全体だったらどうなる?」

 最後に色づけ。ガラスを紙ヤスリでこすり、そこに色鉛筆で色を付けることも試した。

 百科事典のブリタニカをもじって「エビタニカ」と呼ばれるもの知り博士の先生は、「美術にとどまらず、自分のまなざしを育てる素地を与えるのが、大人の役目です」と話した。(宮坂麻子)

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