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「川の学校」責任者・小畠清治さん

ダメと言わず見守る

2010年8月2日

写真「自分が楽しむことが大事」と子どもと一緒に川遊びをする小畠清治さん=高知県の吉野川上流、滝沢美穂子撮影

 川岸のコケで覆われたがけを、水着姿の子どもたちがよじ登っていく。水面から5メートルほどの高さにたどり着くと、子どもたちは思い思いの格好で、川底が透き通るほどの清流の中へ飛び込んだ。

 「オエー、怖かったあ。でも、すんげえ、オモシレー」

 飛び込んだときの水圧で鼻水を垂らしながら、小学生の男の子ががけの上の中学生に叫んだ。

 近くには、浮輪に乗った友だちをひっくり返して落とそうとしている女の子たち。約10メートル下流では男の子たちがモリを片手に水中の獲物を夢中で追いかけている。

 この「川の学校・吉野川川ガキ養成講座」は、吉野川可動堰(ぜき)の住民投票運動のきっかけを作った「吉野川シンポジウム実行委員会」の人々が、川遊びを継承しようと10年前に始めた。きれいな川で思いっきり遊んだ子たちは、大人になっても川や自然のすばらしさを守ってくれるという思いからだ。

 吉野川流域を会場に年5回、計14日間、キャンプ生活で川を体感する。小学5年生から中学3年生が対象。毎年、関東や九州など遠方からも応募があり、この日も全国から32人が集まった。

    ◇

 子どもたちががけから滑り落ちたり、カヌーが激しくひっくり返ったりしても、現場責任者の小畠清治さん(54)は、川辺で静かにほほ笑んでいるだけだ。近くで見守るスタッフに、子どもたちを手助けするよう静かに視線を送る。

 スタッフ約15人も毎年公募。集まった学生や社会人に、4月から6月にかけて、現場で十数日間の念入りな研修をし、川の知識とスキルを教える。子どもとともに大人たちも育てる狙いもある。

 校長でカヌーイストの野田知佑さん(72)はつぶやいた。「決して注意をしないのが、小畠流。自信がなければ、決してできない」

 みんなから「ちち(父)」と慕われる小畠さん。もともと自分でもキャンプやカヌーに親しんでいたが、開校を機に声がかかり、運営に携わることになった。以来こだわり続けてきたのが、「ダメと言わない教育法」だ。「『ダメだ』と禁ずることは、実は一番簡単。子どもたちがやりたいと思ったことを、子どもたちのやりたいようにやらせてあげる。それが、この学校の存在意義なんですから」

 大人の目の届くところであれば、川の中でライフジャケットを外したって構わない。川の楽しさだけでなく、怖さを十分知ったうえで、川を心から尊敬できる人間に育ってほしいと願うからだ。

 5回の学校が終了すると、子どもたちは見違えるようにたくましくなっている。「卒業」するとき、迎えに来た保護者に小畠さんは必ずこう告げる。「お子さんが『川で遊びたい』と言ったら、ぜひ川に連れて行ってあげてください。そして、子どもたちから川での遊び方を教わってください」

    ◇

 川からあがった小学生の網の中には、体長10センチほどの川魚が身をくねらせていた。男の子は「ちょっとかわいそうかな」と小さな獲物をバケツに入れると、川の中へと戻っていった。

 夕暮れ前、遊び疲れた男の子は日焼けした顔で言った。

 「おなか減ったあ。取ったサカナ、早く食べたい」(三浦英之)

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