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大阪・星の郷(さと)総合教室(珠算) 金本和祐(かずひろ)さん

「あっ、そうか」引き出す

2011年8月16日

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写真:次々と答え合わせをしていく金本先生。マルがもらえると子どもたちは笑顔になる=大阪府交野市、伊藤菜々子撮影拡大次々と答え合わせをしていく金本先生。マルがもらえると子どもたちは笑顔になる=大阪府交野市、伊藤菜々子撮影

 「先生、わかりません」

 男の子が答えを書かずに見取り算の問題を持ってきた。「なんでもいいから、答え出してみ。その後に持ってきて」。金本先生がピシャリと追い返すと、男の子はべそをかきそうな顔になった。

 席に戻ってそろばんの珠(たま)をパチパチはじく。5分後にまたやって来た。今度は答えを間違えていたが、先生の教え方はさっきと違った。「惜しいね。ここでやってみよか」

 576、344、マイナス482……。そろばんをはじいていると、「指そこやないで」と先生が言った。「なんで間違ったか分かるか。10のけたではないで、君が引くのは」。「あっ」。男の子は笑顔になった。本来100のけたから珠を引くべきところ、10のけたから引いていたのに気づいたようだ。「じゃあ、もう一回やってき」。男の子は、今度はほっぺたを赤くして席に戻った。

 「あっ、そうか体験」と、先生は呼ぶ。「間違えたとこが理解できたら、途中で席に返す。自力でやらせて、また戻って来させる。正解するまで何度も突っ返すこともある。でもそれで必死に考えぬいて、マルがもらえた時の喜びたるやものすごい」

    ◇

 日本珠算連盟10段、「そろばん日本一」のタイトルも獲得した先生が、12年前に大阪府交野(かたの)市で開いた教室は、幼稚園児から60歳の高齢者まで約350人が通っている。1こま約50分、一度に70人ほどが教室にひしめき合う。

 先生は教室の前にどっかり座る。初級の生徒たちは、先生がつくった問題集を自力で解き、1こま50分の授業で10回マルつけをしてもらうのが約束だ。そろばんをはじく音と、「先生マル付けお願いします」というお願いの声、先生の指導の声以外は、教室は水を打ったように張り詰めている。よそ見をしている子がいたら、「周り見ても答えでんで」と注意する。

 マル付けの列は、ほとんど途切れない。一人にかける時間は約5秒。過去の間違い方の傾向やその子の性格などを踏まえ、ここは間違ったところを教えた方がいいのか、教えてはならないのか瞬時に判断する。問題集の進み具合や解答のスピード、昇級・昇段の模擬検定の正答率などのデータもパソコンで管理して、指導の材料にしている。

    ◇

 さっきとは別の男の子が背筋を伸ばし「先生マル付けお願いします」とやってきた。5けた×4けたのかけ算10問だ。先生はぱっと見て「2問間違ってるよ」としか言わない。男の子が席に戻った後、「この子はどの問題が間違っているか言ったら、その問題にうまいこと正解を合わせちゃうんです。だから、厳しいようだけど全部やり直させる」と説明してくれた。

 10問全部やり直して、再度男の子が戻って来た。「どの問題だか分かったな、なんで間違ったかも分かったか」

 「はい」。「よし、全部おうてる。何となくやってあった正解は、一生懸命考えたバツよりあかんで」。男の子は頭をかいてうなずいた。

 (木村尚貴)

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