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作家・川上未映子のおかあちゃん 利江さん:1 文学と無縁「芥川賞って何?」

2008年4月8日

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写真シンガー・ソングライターの顔も持つ未映子。第138回芥川賞を受賞した

 「おかあちゃん、『乳と卵』で芥川賞取ったでえー」

 1月16日夜、都内の出版社「文芸春秋」の控室で待機していた未映子(31)から電話が入った。芥川賞の受賞を、真っ先に母に知らせてきたのだ。

 「おめでとう。よかったなあ。ほな、今日も一日笑顔でねえー」

 利江(54)は、いつも通りの言葉を告げて受話器を切り、すぐに長女の佐知子(33)に電話を入れた。

 「決まったでえー」

 佐知子は、弟の利明(30)に電話……。

 苦しい時代を結束して乗り越えてきた家族の、喜びの伝言リレーだった。

    *

 1976年8月、大阪の城東区で未映子は生まれた。

 夫(61)は不在がちで、お金もあまり入れない。利江はレストランやスーパーマーケットなどで働いて、子ども3人を育ててきた。

 一つ年上の姉の佐知子はエアロビクスの世界で活躍し、いまは2児の母。

 一つ年下の弟の利明はラグビーの有名選手。大工大付属高校、明治大、神戸製鋼とラグビーのエリートコースを進み、高校・大学・社会人それぞれで日本一を経験した逸材だ。

 そして、今度は、未映子の受賞――。

 「私はなんにもしてません。ただ、いつも周囲の人に感謝し一生懸命に生きるよう言ってきただけ。あとは子どもたちが勝手に育っていってくれた……」

    *

 昨年、初めて書いた小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』が、芥川賞の候補になった。未映子から連絡を受けた利江は驚いた。

 「芥川龍之介? 名前は知ってる」

 「芥川賞って何? 賞金いくら?」と、姉も競馬の賞と思った様子で、尋ねた。

 家に本らしい本は一冊もなかった。子ども向けの絵本や童話すらない。利江自身も本を手にしたことはあまりないし、図書館に子どもを連れて行った覚えもない。

 まさに、文学とは無縁の家庭だった。

 だが未映子は、なぜか幼いころから不思議な才能を持っていた。(敬称略・宮坂麻子)

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