功一(52)が子どもに伝えたかった言葉に「黒衣人生」というものがある。頭にあるのは、妻八重子(58)の人生だ。
子どもたちが小中学生の時代、八重子の生活はこんな感じだった。
午前7時半、長女亜沙美を障害者施設に車で送り、午前9時に自宅へ。
午後2時半、施設から亜沙美を引き取り、午後3時半に帰宅。
午後4時半、長男悌史郎をサッカー教室に送り、午後6時半に帰って、子ども3人に夕食を準備。
午後7時、桃子をゴルフ教室に送り、午後9時に迎えに行く。
もちろんその合間に家事が入る。こんな毎日が5、6年続いた。功一といえば仕事が忙しく、いつも家にいない。
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八重子の黒衣人生は、桃子と米国に渡ってからも続いている。一緒に全米を転戦し、異国暮らしになれない娘やスタッフのために日本食を作り、話し相手になり、洗濯を引き受ける。試合の日には早起きして、おにぎりを準備。桃子が好きな梅を入れ、ラウンド中に食べやすいように一口大にしてラップを巻いて。
「僕は偉そうに口だけ。八重子は黙々と、態度で生き方を示している。どちらが上か、桃子はお見通しですよ」
桃子は今年「桃犬プロジェクト」という活動を始めた。大会でバーディーを奪うごとに、桃子と賛同会社5社が5千円ずつ寄付、盲導犬の普及育成活動を支援する。1バーディーで合計3万円、昨季並みに活躍すれば年約1千万円になる。
「桃犬プロジェクト」で育てられた盲導犬の名には「桃」の字が使われる予定だ。「桃太郎」「桃一郎」「桃次郎」「桃美」「桃江」。夢がひとつ増えた。
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熊本弁に「成るごつなる 良かごつなる」という言葉がある。物事は「なるようになるし、いいふうになるもんだ」という意味。功一はこう言い換える。
「自分を良かごつなるようにがんばると、良かごつなる。他人を良かごつなるようにがんばると、良かごつなる」
「黒衣人生」で、また桃子、強くなる。(敬称略・石川雅彦)
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次回から柔道家の井上康生さんです。