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宇宙飛行士・若田光一のお母さん タカヨさん:2

人生の土台築いた「ザリガニ事件」

2009年6月16日

写真5歳の1968年、七五三で地元・大宮の神社にお参り(JAXA提供)

 そうそう、「ザリガニ事件」のことを話すと、光一(45)がどんな子だったのかよくわかっていただけると思います。

   *

 小学2年生のころ、光一はザリガニ釣りに熱中しました。スルメとかさきイカを針につけて釣るんです。学校から帰ると自転車で近所の川に一直線です。

 あるとき、暗くなってから帰って来ることが何度か続いたんです。最後に父親の堪忍袋の緒が切れて、光一を2畳ほどの物置に閉じこめました。

 光一は「お願いですから、出してください」「絶対に明るいうちに帰ってきますから」と中から叫んでいます。でも、父親は家のなかに入ってしまって。

 私は気が気でなくて、物置のまわりをほうきではいたりしていました。それで、ちょっと台所に行って帰ってくると、光一が静かになっているんです。

 どうしたのかな、寝ちゃったのかな、と思って、父親を呼びに行ったんです。でも、どこにもいない。父親も光一のためと思って閉じこめたんですから、私の一存で許すことはできません。

 30分ほどたったころでしょうか。物置のドアをそっと開けたんです。そしたら、薄ぐらいなかで、父親と光一が向かい合って話し合っているんです。

 光一が生まれたときに夫と、「5歳までに人生の土台を作ってやろう」と約束したんです。「言ってもわからないだろうから」ということは考えず、なんでも善悪を丁寧に言い聞かせて育てようと。

 物置のふたりを見て、私は、これが教育だなぁと思いました。怒っても、ちゃんとあとで説明して納得させる。あらためて父親を見直しました。

   *

 これには、後日談があるんです。

 その日以降、光一は自転車の荷台に風呂敷包みを積んでザリガニ釣りに行くようになりました。なんだろうなと思って聞いてみると、小学校の入学祝いにお隣のおばちゃんからもらったディズニーの置き時計です。

 「これがあれば、暗くなるまえに帰れるんだ。時間がわからないと、急に暗くなるから」と説明してくれました。

 ある出来事から、しっかりと何かを学ぶ。そんな子でした。

 (敬称略、聞き手・石川雅彦)

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