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ピアニスト・辻井伸行のお母さん いつ子さん:2

「ひらめき、すぐアクション」が扉開く

2009年11月17日

 いつ子(49)は自分のことを「ひらめき、すぐアクション」のタイプと言う。そのひらめきが、伸行(21)の数々の扉を開いてきた。

 最初の「ひらめき」は、生後6カ月の時。悶々(もんもん)とする日々の中で、書店に平積みされた本の、盲導犬のイラストに目がいった。手にとるとそこには、視覚障害のあるエッセイスト福沢美和さんが、歌舞伎や美術展に出かけ、生き生きとした人生を送っている姿がつづられていた。

 「一気に読み終え、悪い方悪い方に考えていた自分が間違っていたんだと思えたら、どうしてもお会いしたくなって」

 いつ子は自分の思いをテープに吹き込み、福沢さんの自宅に送った。数日後、箱根まで会いに行く。この行動が、いつ子を暗闇から救った。美術館や花火大会、スキー、キャンプと、伸行をどこにでも積極的に連れて出かけた。すべて、福沢さんの生き方の影響だ。

 次のひらめきは8カ月のとき。ショパンの「英雄ポロネーズ」をかけると、さびの部分で、伸行は腹ばいになって、手足をバタバタさせて喜んだ。CDに傷がついたので、同じ曲の入った新しいCDに買い替えたら、なぜか反応しない。孝(52)は「飽きたんじゃないのか」。でもいつ子は、おかしいと思った。

 「ピアニストが違うから?」。以前と同じピアニストのものを買ってみる。すると、笑顔もバタバタも戻った。

 「あ、この子、聴き分けることができるんだあー。光が差し込みました」

 おもちゃには興味を示さない伸行。タンバリン、カスタネット、ハーモニカ、木琴など、本物の楽器をいつも近くに置いた。クラシックのCDもたくさん聴かせ、おもちゃのピアノも買った。

 1歳5カ月になると、「本物の音も聴かせてみよう」とひらめいた。美容室でピアノの先生を紹介してもらった。レッスンではなく、1時間ぐらい自宅で演奏してもらうだけ。伸行は、先生やいつ子のひざの上でうれしそうに聴いていた。

 クリスマスの日。料理しながらジングルベルを口ずさんでいると、歌に合わせてピアノのメロディーが聞こえてきた。なんと、伸行が、おもちゃのピアノで弾いていたのだ。(敬称略、宮坂麻子)

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