現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 教育
  4. 小中学校
  5. 天才の育て方
  6. 記事

ピアニスト・辻井伸行のお母さん いつ子さん:4

大舞台、共演者、師…「いい出会いばかり」

2009年12月1日

 伸行(21)は、強運の持ち主だ。

 まず、本番に強い。5歳のときのサイパンへの家族旅行。ショッピングモールで自動演奏のピアノを見つけ、「弾きたい」。店員に頼み、リチャード・クレイダーマンをアレンジして見事に弾いた。「ブラボー」と歓声がわき、大騒ぎに。

 「自分がピアノを弾くことでこんなに喜んでもらえると、初めてわかったんだと思います」といつ子(49)はいう。

 幼いころから、大舞台を次々とこなした。三枝成彰や佐渡裕ら著名な人々と共演し、場数を踏んでうまくなっていく。

 「偶然にも大舞台を用意していただける運があって、それをいつもうまくクリアできて、という繰り返しですね」

 17歳でショパン国際ピアノコンクール「批評家賞」。翌年、CDデビュー。そして、今年6月のバン・クライバーン国際ピアノコンクールの優勝――。

 その陰には、よきピアノの師に恵まれた運もある。増山真佐子先生は、実はバイオリンの発表会の時の伴奏者。伸行が退屈がるとわかると、バイエルもハノンもソナチネもやらず、伸行の望む曲をアレンジして指導してくれた。

 7歳から習った川上昌裕先生は、読むのに大変な点字楽譜を強要しなかった。右手と左手を別々に録音する独自の方法で、伸行の独創的な世界を導いた。

 「本当にいい出会いばかり。私、伸行に言っているんです。伸リンが、人を思いやる気持ちや感謝の気持ちを持っていてくれるところがうれしいって」

 小学3年の時、ある音大の先生に「目が見えないからピアノをやるのは大変でしょ」と言われたことがある。いつ子は「絶対負けるもんか、今に見てろ」と心でつぶやいた。でも、コンクール会場で「テンポはこれ」「ここが変よ」と眉間(みけん)にしわを寄せるようなことはしない。「いいよ。最高」とひたすら褒める。

 「子どもの可能性は無限大。親バカでいいから信じてあげてほしい。好きなことをさせてあげてほしい。同じ目線で育ててあげてほしい。根拠のない自信は大切です」(敬称略、宮坂麻子)

    ◇

 次回からは、囲碁名人の井山裕太さんの予定です。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

[PR]注目情報

ここから広告です

広告終わり

ジャンル別の最新情報はこちら
  • 大学
  • 中学・高校
  • 通信制高校