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大相撲・千代大海のママ 須藤美恵さん:4

家から追っ払いたい一心で親方を訪れた

2010年3月2日

写真引退届を提出し、記者会見する千代大海。断髪式は10月の予定=1月13日、福岡亜純撮影

 九重親方(元横綱千代の富士)に会いに行ったのは、龍二(33)が「大相撲に行く」と言い出した数日後でした。大分から福岡の九州場所宿舎まで、親類の車で3時間半。気が変わらないうちに、それに、早く家から追っ払いたい一心でした。だって、大分に置いておくと、何をしでかすかわからないんですから。

 親方は会うなり、「すげぇ頭をしてるな」とひとこと。そりゃそうです。リーゼントに金髪ソリコミですから。「なぜ入門したいのか」と聞かれて、龍二は「親孝行をしたい」と答えました。後にも先にも、あの子から「親孝行」という言葉を聞いたのはあのときだけですよ。

 ちょうど昼時、ちゃんこを食べていくように言ってくださったんです。でも、龍二は食べない。力士のみんなが給仕して「遠慮しないで」と勧めてくださるのに、一口も。「歯がゆいやっちゃ。男のくせに、じめじめして」と思いましたが、あとで私にこう言いました。

 「おれはこれから、ここでずっとみんなと生活することになるんや。腹すかした兄弟子より、先に食えるか」

 暴走族で上下関係ぐらいは学んだんやと、ちょっと見直しましたね。親方には「今日から置いて行きなさい」とも言われたんですが、龍二は「世話になった人や友達らにあいさつしたいから、1日だけ帰らせてください」と頭を下げたんです。そのときも、「あ、こいつ、ちょっとは考えとるな」と思ったもんです。

 1992年九州場所が初土俵。でも、すぐに音を上げて帰ってくると思ってました。あの子、何も続かなかったですから。大丈夫と安心したのは、94年初場所で三段目優勝を果たした頃でしょうか。

 振り返ると、私の人生は私の人生、龍二の人生は龍二の人生という姿勢でやってきたように思います。龍二の得意の取り口じゃないけど、人生は好きなことに突進するべきです。親は、好きなことを見つける手伝いはするけど、あとは邪魔しない。子は子で考えてます。何も言わないというのも、なかなか辛抱がいるんですよ。(聞き手・石川雅彦)

    ◇

 次回からは、女流棋士の里見香奈さんです。

 ◇「天才の育て方」が本になりました。朝日新聞出版から1300円で発売中です。

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