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バイオリニスト・川畠成道の両親 正雄さん、麗子さん:3

弟2人 兄を思いやってくれた

2010年11月23日

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 正雄(65)が成道(38)のレッスンを急いだのは遅いスタートのためだけではなかった。プロのバイオリニストと言っても、オーケストラや室内楽の奏者、教育者などは、楽譜が見えない成道には無理。ソリストを目指すほかなかった。

 正雄は「家で私が練習していると妻に怒られました。そんな時間があったら成道に教えたら、と」。当時は芸大オーケストラのコンサートマスター。練習はおろそかにできない。仕事場では休憩も取らず埋め合わせようとしたが、練習不足からくる恐怖感で悪夢にうなされた。

 麗子(66)の生活も、成道が中心だった。正雄が仕事から帰るまで練習に立ち会う。ピアノで弾いて暗譜を助ける。週1回、正雄以外の先生のレッスンへの付き添い、学校へ送り迎え。成道を待って計6時間を車で過ごした日もあった。

 それでも麗子は言う。「こういう状況ならどんな親でもします。私は何も才能がなかったから捨てるものがなかった。成道が目を悪くしたとき、この子を一生懸命育てようって集中できたのです」

 成道には、能成(37)と守道(33)の2人の弟がいる。ものごころつくころには父も母も兄にかかりきりだった。「弟たちにはつらい思い、悲しい思いをさせましたが、2人とも成道のことを思いやってくれました」と麗子。朝の食卓で新聞記事を音読する。テレビの字幕を読み、画面を説明する。弟たちが始め、川畠家ではごく自然な風景になった。

 成道自身は練習を嫌がることもなく、たんたんと続けた。「一歩一歩上に上がっていく喜びがあったのでは」と麗子は推察する。バイオリンをはじめて2年半後、中1で全日本学生音楽コンクール東日本中学の部3位に入賞。翌年、世界的演奏家アイザック・スターンの公開レッスンで称賛されたことも励みになった。

 だが高校2年ごろから、成道に不安の暗雲が立ちこめる。「このまま続けて、本当にものになるのか。責任もてるのか。アメリカ行きをどうして止めなかった」。いら立ちは、両親に向かった。

 正雄も麗子も「がんばろうね」としか言えなかった。それでも、言えば気が済むのか、何時間かして再び2階からバイオリンの音が聞こえてくる。その繰り返し。「練習すれば少しでも可能性が広がる。しなければどんどん少なくなる。冷静になれば理解できたのでしょう」(敬称略・大庭牧子)

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