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2011年10月13日

吹奏楽

バンドフェス・マーチング

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感謝のバトン、空へ マーチング四国出場の高知学芸中高

写真:9月の県大会で、バンドを指揮しながら前進する大坪みほろさん(中央)=高知市桟橋通2丁目の県立県民体育館拡大9月の県大会で、バンドを指揮しながら前進する大坪みほろさん(中央)=高知市桟橋通2丁目の県立県民体育館

写真:打楽器:普段の吹奏楽では床に置いて演奏する打楽器は、ホルダーにつけて前に抱える拡大普段の吹奏楽では床に置いて演奏する打楽器は、ホルダーにつけて前に抱える

写真:トランペット:金管楽器の中でも高い音で目立つメロディーを奏でるトランペットは、マーチングの演奏で重要だ拡大金管楽器の中でも高い音で目立つメロディーを奏でるトランペットは、マーチングの演奏で重要だ

写真:スーザフォン:最低音を吹くスーザフォン。歩きやすいように、体に巻き付くように作られたマーチング用の楽器=写真はいずれも土佐女子中高吹奏楽部のみなさん拡大最低音を吹くスーザフォン。歩きやすいように、体に巻き付くように作られたマーチング用の楽器=写真はいずれも土佐女子中高吹奏楽部のみなさん

写真:コンテ:下の写真のコンテ。「サックス1」「サックス2」などと記号で各自の立つ位置が示されている拡大下の写真のコンテ。「サックス1」「サックス2」などと記号で各自の立つ位置が示されている

写真:マーチング隊列:体育館を広く使う隊列もあり、練習場所の確保は課題の一つ=高知市桟橋通2丁目の県立県民体育館拡大体育館を広く使う隊列もあり、練習場所の確保は課題の一つ=高知市桟橋通2丁目の県立県民体育館

 くるくると回りながら舞い上がったバトンが澄んだ秋の空に吸い込まれる。

 「きれいに私のところに戻ってきて」

 そう願った通り、落ちるときもくるりくるりと回りながら、真下に構えた手にすっぽりとおさまった。

     ♪

 高知学芸中学高校(高知市)の高校2年、大坪みほろさん(16)は、吹奏楽部のマーチングバンド73人の指揮者「ドラムメジャー」を務めている。行進の先頭に立って全体を統括しながら、バトンを回したり投げたりの技も見せる。

 本職はクラリネット。部の人繰りの事情から、5月に急きょ抜擢(ばってき)された。中学2年からマーチングの舞台を踏んでいる経験を買われたのだが、ドラムメジャーは初めて。本来なら2年間かけて学ぶ役だけに、「私ができるかな」と迷った。

 そのとき、父、苗黄(なえき)さんの顔が頭の中に浮かんだ。

     ♪

 小学校の教師だった苗黄さん(当時41)は3年前、交通事故で亡くなった。母の和子さん(43)と、みほろさん、3人の弟と妹たちが残された。

 事故の約2週間前に高知県立春野総合運動公園体育館であったマーチングコンテスト県大会は、父母そろって見に来てくれた。中学2年だったみほろさんは、この日が初めてのマーチングの本番だった。演奏中、2階後方に座っていた苗黄さんたちに気づいた。

 「あっ、来てくれちゅう」。緊張が和らいだ。その夜、父は「ようやりゆうわ」とほめてくれた。

 父は中学でバスケットボール、高校でハンドボールと、部活一筋の学校生活だったという。「部活は同じ趣味を持つ人が集まるし、一生の友達ができるから良いぞ」とよく話していた。

 みほろさんが中学で吹奏楽を始めると「ええがやないか」と喜び、夏休みには練習場まで車で送り迎えしてくれた。「頑張りよ」とやさしく励ましてくれた。

 「きっとお父さんならドラムメジャーの挑戦を応援してくれるはず」。思い浮かべた父に背中を押された。

 毎夜帰宅すると、玄関先や鏡の前でバトンの練習を繰り返した。長さ約90センチ、重さ約500グラム。持ち方さえぎこちなく、回転させるとあごやひざにビシッと当たった。体中があざだらけになった。翌朝は7時過ぎには登校して練習を続けたが、なかなか上達しない。

 でも家では弱音を口にしなかった。弟と妹が寝静まった夜11時ごろ、母が、リビングに置かれた父苗黄さんの笑顔の写真の前で、声を出さないようにくすん、とすすり泣く姿を、何度となく見ていた。そして母は翌朝、だれよりも早起きしてお弁当を作ってくれた。

 みほろさんは、「お母さんにこれ以上負担をかけられない」と、気丈に振る舞っていた。練習がつらいときは、登校中に自転車で鏡川沿いを走りながら、一人で泣いた。

     ♪

 高知学芸は9月の県大会で四国支部大会出場を決めた。大役を無事果たして、ほっとした。そんなとき、息子を持つ女性コーチに母の話をすると、「わたしなら悩みを相談してほしいな」と言われた。

 英会話教室からの帰り道、迎えにきた母が運転する車の中で、みほろさんはゆっくり話し始めた。

 バトンの技が上達しなかったこと、ドラムメジャーとして部をうまくまとめられなかったこと、登校中一人で泣いたこと……。「言えなかった。お母さんに心配かけたくなかったから」。気づくと涙声だった。

 くすん、と横から聞こえた。和子さんは、みほろさんのつらい思いに気づけなかったことが悔しかった。「言うてほしかったな」。目に涙をたくさんためて、ハンドルを握っていた。

 お母さんもわたしのことを心配してくれてたんだ。そう思うとうれしくて、みほろさんもまた泣いた。

 高知学芸は、高校以上の部で09年から2年連続で全国大会に出場している。

 お父さん、わたしは元気で吹奏楽を続けています。

 お母さん、話を聞いてもらうことで心がすごく軽くなりました。プレッシャーが楽になりました。

 みほろさんは父母への感謝を胸に、3年連続の全国大会をかけて四国支部大会に挑む。(滝沢卓)

 〈キーワード〉ドラムメジャー マーチングバンドの指揮者の呼称。行進のときバンドの先頭を歩き、バトンを上下させて、曲のリズムを示したり、演奏者の隊列に対して方向転換の合図を出したりする。空中に飛ばしたバトンをキャッチするなどの技を披露することもある。

●「マーチング」とは? 吹奏楽のパレード

 第24回全日本マーチングコンテスト四国支部大会(四国吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)が16日、高知市春野町芳原の県立春野総合運動公園体育館で開かれる。

 「マーチング」とは、楽器を演奏しながら隊列を組んで行進し、様々なフォーメーションを作って観客を沸かせる「吹奏楽のパレード」だ。曲の演奏の技術力や表現力だけでなく、行進の美しさや曲との調和も必要とされる。

 日本マーチングバンド・バトントワーリング協会(東京都)によると、日本には戦後、アメリカから伝わったという。米軍の音楽隊から、という説や、米国人指導者が来日した、帰国した日本人音楽家が広めた、など諸説がある。

 毎年11月に大阪城ホールで開かれる全日本マーチングコンテスト(全日本吹奏楽連盟、朝日新聞社主催)の全国大会には、「中学」「高校以上」の部門に、都道府県大会、支部大会を勝ち抜いた各25団体が参加する。

 同コンテストの規定では、エリアは約30メートル四方。時間は6分以内。人数の制限はない。エレキベースなどの電子楽器、ピアノ、チェレスタ、ハープは使えない。

 隊列や隊形など自由に構成できる。演奏に必ず入れなくてはいけない規定課題は次の三つ。

 ・3列以上の隊列が20メートル四方のラインを1周する。

 ・3列以上の隊列が中央線に沿って行進して1回Uターンする。

 ・止まって連続32回以上足踏みしながら演奏する。

 演奏者一人ひとりの位置取りを記したコンテ(=隊列表。ドリルデザインとも言う)を作り、それを基に演奏する。6分間で50枚、60枚になる。

 歩きながら演奏しやすいように、楽器の間に体を入れるスーザフォンや、ホルダーで前に抱える打楽器など、マーチング用に改良されたユニークな楽器がある。

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