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2011年10月24日
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吹奏楽

吹奏楽コンクール

〈解説〉福島の2校に重ねる祈り 吹奏楽コン・高校の部

写真:常総学院:金賞に選ばれた茨城県の常総学院の生徒=23日午後、東京都杉並区の普門館、金子淳撮影拡大金賞に選ばれた茨城県の常総学院の生徒=23日午後、東京都杉並区の普門館、金子淳撮影

 ことさらに震災への思い入れを重ねては聴くまい、と決めてはいたが、やっぱりそうはいかないものだ。それぞれの強い思いを映す福島2校の演奏に、胸を打たれずにいられなかった。

 福島県立磐城が奏でたのはバッハの「トッカータとフーガニ短調」。冒頭の、劇的な下降ユニゾンで有名な名曲だ。1本のささやかな旋律が2本、3本と積み重なってゆき、最後には壮大な建築物を成す。指揮を務めた根本直人さん自ら編曲した。根本さんはこの春、定年を迎えた。これから復興の未来を担うであろう子供たちへの、心をこめた手づくりの贈り物だ。

 福島県立湯本が選んだのはラベルのピアノ三重奏曲。ニュアンス豊かに、室内楽ならではの親密さを携えたチャーミングな演奏を繰り広げた。

 レベルの高さゆえ難曲の応酬となった一方で、この2校は、美しいハーモニーを皆で紡げる素朴な幸福をかみしめていた。合唱王国でもあるかの地が、再び音楽あふれる街へと再生するように。そして、楽器を豊かな人生の伴侶にする生徒がこの場から一人でも多く巣立つように。そう心から祈りたい。

 スミスの「華麗なる舞曲」を演奏した岡山学芸館と、スパーク「宇宙の音楽」を奏でた福岡県の精華女子は、ともに個々の奏者の技術の高さと追随を許さぬ一体感で息もつかせぬ快演。大阪桐蔭も、伝統の豊かな響きでワーグナー「ワルキューレ」の神々の世界を生き生きと描き出し、金賞に輝いた。

 定番の交響曲も、編曲者が異なると新たな装いで響いて楽しい。ラベルの「ダフニスとクロエ」でも、福岡工大付属城東(佐藤正人編曲)は柔らかい光のあわいを繊細に描き出し、山口県立防府西(平井哲夫編曲)は厚みある響きでギリシャ神話の世界をおおらかに表現した。埼玉栄は、カットも色合いも通常とは異なるプッチーニの「トゥーランドット」(宍倉晃編曲)で聴衆を引き付けた。

 埼玉県立大宮は、ベルリオーズ「幻想交響曲」で大作曲家の複雑怪奇な妄想の世界に挑戦。これもまた、指揮を務めた斎藤淳さんによる思いのこもった編曲だった。埼玉県立伊奈学園総合のR・シュトラウス「英雄の生涯」も、力業で押さず、豊かな想像力で楽曲の世界観を押し広げてみせた。

 大阪府立淀川工科の十八番「大阪俗謡による幻想曲」には「待ってました」の大拍手。心沸き立つ音楽に、皆が心を一つにする。これがどれほど有り難く、幸福なことか。いつも聴いている曲のはずなのに、今年はとりわけ胸に響いた。(吉田純子)

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