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きょういく特報部2009

導入進む「習熟度別少人数授業」 きめ細かな指導探る

2009年4月26日

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 部分実施も含めると、小学校の85%、中学校でも74%(07年度)で導入されている「習熟度別少人数授業」。昔ながらの一斉授業ではなく、きめ細かく対応するために子どもの理解度でグループ分けして教えるやり方だが、導入しさえすれば効果が出るというわけではないことが、文部科学省の調査から浮かび上がった。効果が出るやり方とは。習熟度別以外の方法はどうなのか。学校現場では試行錯誤が続く。

■的を絞ってベテランが調整役に

 東京都八王子市立弐分方(にぶかた)小学校は4〜6年の算数で、2クラスある各学年を「根気」「本気」「元気」の3グループに分けて習熟度別授業をする。ただ、すべての授業ではなく、最も多い6年生でも全体の半分程度にとどめる。

 同小では3年前、6年の算数はすべて習熟度別で実施していた。その結果、上位層は伸びたが、固定しがちな下位層は意欲が薄れ、授業が成り立たない心配も出たという。そこで、習熟度に関係ない「均等割り」を導入したり、同じ単元でも一斉授業を取り交ぜたりして模索した。

 同校で習熟度別の効果が最も出ているのは計算だという。少数や分数のかけ算、割り算などでつまずく子どもは多く、差もつきやすい。わからない子には復習も含めて丁寧に説明し、できる子には発展的な問題を解かせる。

 一方、図形の面積などの学習では、逆に習熟度別をとらない方が有効だという。みんなで考えを出し合う中で苦手な子から思わぬ発想が飛び出すこともあり、クラス全体で考えが深まるという。

 福島幸子校長は「習熟度別授業をいかすにはコーディネーター役が欠かせない」と言う。同校では、担任を持たずに習熟度別を含む少人数授業を専門とするベテラン教員を置く。クラス担任と事前に詳しく打ち合わせ、グループに応じた教材開発にも取り組む。

 加藤幸次・上智大名誉教授(学校教育)は「学級崩壊などが起こるなか、一斉授業だけで対応するのは無理で、個に応じた教育が必要だ」と言う。だが、ただやみくもに採り入れるだけでは下位層の子どもの劣等感を生み、長期的には全体の学力が下がると指摘。つまずきやすいポイントに絞って徹底的に取り組むべきだと強調する。

 また、同名誉教授は「習熟度とは別の観点からの少人数授業も加味するべきだ」と言う。例えば、あるグループは映像を使い、別のグループは子ども同士で教え合う。子どもの適性や関心に沿ったグループ分けが効果的だという。(宮本茂頼)

■得意・苦手分けずに助け合いも

 あえて習熟度別に分けない学校もある。

 静岡県富士市立岳陽中学校では、約10年前から数人のグループで助け合って学ぶ「協同学習」を続けている。

 例えば、三十数人のクラスの中で、4人1組のグループをつくる。メンバーはその科目が得意な子も苦手な子も一緒で、与えられた課題をグループで協力して解く。

 土屋和也教頭は「答えがわからない子がわかった子に教わることで、両方の理解が深まる」と言う。このやり方は、音楽や体育も含めてすべての教科で徹底している。「『うちの学校はこういうやり方なんだ』と迷い無く思ってもらうため」という。

 ただし、取り組みがすべて円滑に進んでいるわけではないことは土屋教頭も認める。「1人ではできないが4人でならできる、という課題を設定するのは簡単ではない」

 愛知県犬山市立楽田小学校はさらに、グループ内の全員に「発表役」「記録役」と役割を作る。長谷川隆司校長は「全員が授業に参加することができ、学力の底上げにもつながる。子ども同士の信頼関係を育むので、生徒指導的な機能もある」と言う。

 ただ、少人数授業を実施しているのは、算数だけ。教員の数が足りないこともあるが「グループで学ぶという形が先行するのは抵抗がある」。

 例えば国語の授業では、大勢で意見を出し合った方がいろんな意見が出る。長谷川校長は「教科や単元によって最適な形は違うはずだが、そのあたりの研究はまだ未開拓だ」と指摘する。(原田朱美)

■小学校の正答率、明確な関係読み取れず

 文部科学省が、08年4月に実施した2回目の全国学力調査の結果を習熟度別指導とクロスさせた分析を公表したのは先月末。文科省は、「中学では正答率アップの効果が見られ、全体として効果的だとわかった」というが、小学校では個々の問題や地域によってまちまちだ。

 分析では、算数・数学の成績が下から4分の1の層について「4分の3以上の授業で習熟度別少人数指導を受けた」グループと「習熟度別指導を全く受けていない」グループを取り出し、一部の計算問題や文章題の正答率を比べた。

 小学校では、習熟度別の子どもの方が、そうでない子どもより正答率が1ポイント以上高い問題が14問中5問あった。中学校では20問中4問だった。だが、差は最大でも3ポイントで、受けていない子の方が正答率が1ポイント以上高い問題も小学校では3問あった。単純に見える計算問題でも、習熟度別の効果の表れはまちまちだ。

 小学校の結果を都道府県別にみると、実施校の方が正答率が1ポイント以上高い県が10ある一方で、非実施校の方が1ポイント以上高い県も5ある。それ以外は差がほとんどない。

 93〜05年度まで、文科省は習熟度別指導に取り組む学校に教師を加配して支援してきた。学習指導要領の解説書では優越感や劣等感が生じることがないように注意し、グループが長期化、固定化して意欲を低下させないように留意するよう求めている。(葉山梢、上野創)

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