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きょういく特報部2009

「生徒が新型インフル」学校は…休校の範囲 状況次第

2009年5月17日

写真神戸市の高校生の新型インフルエンザ感染確認を受け、市立小学校の校門前に、休校を知らせる張り紙が出された=16日午後、神戸市灘区、南部泰博撮影図

 神戸市の高校生が新型の豚インフルエンザに感染していることが確認され、「その時、学校はどうするか」という問題は現実のものとして各地の教育関係者の目の前に迫ってきた。国は具体的な判断を都道府県にゆだねており、事前に考えをまとめておかないと混乱する恐れもある。(宮本茂頼、青池学)

    ◇

 学校現場の対策は当初、毒性が強い鳥インフルエンザなどを想定した政府のガイドラインなどに従って考えられてきた。それによると、各都道府県で第1例目の感染が確認された場合、その都道府県は原則として市町村教委、私立の学校法人といった管内すべての学校設置者に臨時休校を要請することになっている。

 実際に感染が広がると、休校はどれだけ続くのか。国の行動計画では、流行は8週間続くと仮定されており、そうなれば休校も長期にわたる可能性が高い。こうした事態に備え、都道府県教委などは休校中の学校運営についてのマニュアル作りを進めてきた。

 佐賀県教委は3月、学校での対応マニュアルとなるモデル案を作成。豚インフルエンザの発生を受けて4月末、この案を参考にして全県立校が計画を整えた。

 モデル案は休校中の対応について、健康状況を定期的に把握するとともに、勉強についても「生徒に提示する学習課題一覧表や計画表を作成する」などと言及している。

 具体的には、▽授業が行われていた場合の進度に合わせ、自習する教科書や問題集のページを指示する▽テレビやラジオの教育番組を紹介する▽推薦図書を休校前に貸し出す▽新聞のスクラップに取り組む――といったことを示した。「夜更かしで生活リズムを崩さない」「家事の手伝いをする」と、生活の指針となる資料を作ることも勧める。教職員の勤務態勢についても、ローテーションにして登校する人数を最小限に絞るよう求めた。

 ただし、今回の豚インフルエンザは「弱毒性」という見方が強まっている。人間がまだ免疫をもっていないのは確かだが、きちんと手当てをすればかなりの確率で重症化が避けられるという見立てだ。

 こんな中、塩谷文部科学相は12日、当初の行動計画にこだわらず、「状況に応じて機動的、弾力的に検討する」と述べた。都道府県単位で一斉に休校するのではなく、地域を限定した休校も念頭に、事例ごとに判断すべきだという考えだ。

 実際、16日に高校生の感染が確認された神戸市は、とりあえず休校の範囲を市内の一部の地域にとどめた。この日あった政府の対策本部の会合でも、都道府県が要請する臨時休校の範囲は「患者が児童・生徒の場合、原則として市区町村の一部か全域。場合によって都道府県全域」とすることが確認された。

■「疑い」1例目の私立校

 実際の場面で、学校現場は具体的にどんな状況になるのか。男子生徒が一時「国内1例目」を疑われた横浜市の私立高校の例をみると――。

 校長に連絡があったのは、ゴールデンウイークの後半を控えた今月1日の午前1時半ごろ。自宅に学校の事務長から電話がかかってきた。「市の保健所から連絡がありました」

 同校の2年生554人は4月、6班に分かれ、約2週間にわたって恒例のアメリカ・カナダへの研修旅行に出かけた。そのうち、カナダから25日に帰国した男子生徒が高熱を発し、簡易検査を受けて新型インフルエンザの疑いが浮かんだ。

 午前3時過ぎに学校に駆けつけると、すでに報道陣が詰めかけていた。

 この日は金曜日でスポーツ大会を予定していたが、併設する中学とともに、直ちに休校を決めた。午前5時半、生徒の携帯電話のメールアドレスなどが登録された緊急連絡システムで「臨時休校」「自宅待機」を一斉に連絡した。

 研修旅行から帰国したのは、政府が「水際作戦」で空港での検疫態勢を整える前だ。2年生は帰国後、6日まで休みとしていたが、この間、部活動などで登校した生徒は少なくない。感染が疑われた男子生徒も運動部に所属し、帰国後2日間登校してグラウンドで練習していた。

 教員らは2年生全員に電話で健康状態を聞き取り、外出を控えるよう指示した。男子生徒が所属する部の部員にも連絡をとった。保健所からは、潜伏期間を踏まえて10日間の健康観察を求められ、中高合わせて約1900人分の問診票をその日のうちに速達で各家庭に郵送した。

 対応に追われるなか、ひっきりなしにかかってきたのは心ない電話だ。メディアでは校名は伏せられていたが、校長が報道対応している映像はテレビで流れた。校名が書き込まれたネットの掲示板もある。受話器の向こうから「菌をばらまくな」「うつったらどうするんだ」と汚い言葉が投げつけられた。

 「生徒は新型インフルエンザではなく、Aソ連型」。午後5時過ぎ、テレビの速報で詳しい検査の結果が報じられた。続いて市からも連絡があった。「感無量です」。報道陣の前に立った校長は涙をこぼした。

 しかし、それで事が終わったわけではない。「万が一」を考え、休校措置は健康観察の期間が終わる8日の金曜まで続けた。ゴールデンウイーク中は運動部の大会が目白押しだったが、これも参加を見送ってもらった。これが最後となる高校の3年生もいる。「頑張った生徒のことを考えると本当につらかったが、もし他の生徒が感染していたら……」。校長は「苦渋の決断」を口にした。

 11日の月曜日、ようやく通常授業が再開。だが、もう次の心配が頭をもたげる。毎年夏休みになると、研修旅行の返礼として、ホームステイ先の子どもを生徒の家庭で引き受ける交流を続けている。伝統行事でなんとか実施したいと準備を進めているが、どうなるかはその時の状況にかかっている。

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