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きょういく特報部2009

学力維持へ、腐心の現場 新型インフルで休校に備える

2009年5月24日

写真東京都杉並区立永福小学校の取り組み。朝の会が始まる前に、手の甲や指の間まで念入りに洗う

 関西で感染者が相次いだ新型の豚インフルエンザは、20日以降、東京、神奈川などでも感染が確認された。首都圏の感染者はまだ少なく、行動範囲も限定的なため一斉休校の措置はとられていないが、各地の学校現場では、さらに強毒性のものが発生した場合も見越して備える動きが急だ。子どもたちへの予防教育も進んでいる。(宮本茂頼、中村真理子)

■家庭学習 課題を準備

 新型インフルエンザについて、政府は22日に対処方針を改めた。症状が季節性インフルエンザに似ていることを踏まえ、感染初期や患者が少数にとどまっているところには必要に応じて休校を要請する一方、患者が多発しているところは県、市など設置者の判断で学校単位でも休校できるようにした。

 ただし、こうした「弾力化」も、実際の判断は地域がその時どんな状況になるかにかかっている。学校現場は手探りだ。

 東京都の目黒区立下目黒小学校は、休校になった際の「予行演習」をはからずも経験した。

 今月1日の金曜、横浜市の高校生が一時、感染を疑われた。首都圏は人の移動が激しく、詳しい検査の結果次第では横浜に比較的近い同小も休校になる可能性がある。翌日から大型連休の後半に入るが、下校時刻になっても結果は判明しなかった。

 学校側は、連休明けも引きずって休校にせざるを得なくなる場合を考え、復習を中心に2週間分の学習課題を示したプリントを児童に配った。

 「作文帳に1分間スピーチの原稿を書く。見ないで話せるよう練習する」(4年国語)

 「鍵盤ハーモニカで『かえるのがっしょう』がふけるようにする」(2年音楽)

 あまり外出できないことを考え、ストレッチ、筋力トレーニング……と室内運動にも取り組むよう促した。教職員の間では、休校が決まれば週2回ほど定期的に家庭と連絡をとるよう申し合わせた。

 同小は、すでに昨年の冬から新型インフルエンザが発生した時の対策を校内で考え、保護者への情報提供や緊急連絡網の整備などを進めていたという。

 結果的に横浜市の高校生は陰性で、学校運営に滞りはなかったが、大高優校長は「事前に対応を示しておけば、家庭も教員もあわてないで済む」と話す。同区の教育委員会も、休校の事態に備え、週単位の家庭学習の計画を準備するよう区立の小中学校に促している。

 東京都八王子市の市立別所中学校も19日、休校になった場合に備え、2週間分の学習課題を学年ごとにプリントで配った。

 もし休校が長引けば、次の学習課題を生徒に伝えなくてはならない。同中は保護者へアンケートし、どんな手段で提供できるか調査。学校のホームページからのダウンロード、ファクス送信といった方法を集約した。

 武田幸雄校長は「いつか強毒性の新型が流行するかも知れない。休校が長期にわたった時、生徒の学習意欲を維持し、学力を保障するための対応を考えたい」と言う。

■各地で進む 予防教育

 子どもたちの「異変」を早く察知しようという取り組みは、各地で始まっている。

 横浜市やさいたま市などでは、市内のすべての小中学校の児童生徒に毎日体温を記入してもらう用紙を配布して、担任がチェックしている。横浜市は20日、1クラスで6人以上、または全校で2割以上に38度以上の発熱がある場合、即座に市教委へ電話連絡するよう各校に求めた。「感染力の強さを警戒している」という。

 「最初に、熱を測ってきたかどうか点検します」。東京都杉並区の区立永福小学校では、こんな担任の指示で朝の会が始まる。宿題の点検はその次だ。

 同小も、児童全員に健康観察表の記入を求めている。体温に加え、高熱、嘔吐(おう・と)、下痢腹痛といった7項目について、あてはまるところに丸をつける。毎日登校前に家庭で点検し、朝の会で担任に提出してもらう。

 同小は、予防の基本の「うがい」「手洗い」にも力を入れる。手洗いについては、低学年を中心に、授業に1時間をさいて練習。でんぷんを手に塗りつけた上で、せっけんで洗った場合と水だけで洗った場合を比べる実験もした。水だけで洗った手はでんぷんが残っていて、ヨウ素液をかけると青紫色になる。子どもたちはせっけんで洗う大切さを実感したという。

 小さな子どももしっかり手洗いができるようにと、ポイントを織り込んだ歌をつくっている衛生関連メーカーもある。

 花王がつくったのは「あわあわ手あらいのうた」。親子ガメのように両手を重ねて手の甲を洗う「カメのポーズ」、オオカミのようにつめを立てて洗う「おおかみのポーズ」……と歌に合わせれば洗い残しなし、というアイデアだ。同社は商品に関連づけたホームページで紹介しており、家庭での活用をPRする。

■「乳幼児にもタミフルを」

 親にとって心配なのは、体力や抵抗力がまだ弱い幼い子どもが感染したらどうするか、大人と同じ治療でいいのか……という点だ。

 インフルエンザ治療の専門家、けいゆう病院(横浜市)の菅谷憲夫・小児科部長は、幼い子どもであっても、治療は抗ウイルス薬のタミフルとリレンザが中心になると説明する。

 今回の新型は季節性のインフルエンザの毒性とさほど変わらないとされるが、菅谷医師は「乳幼児は治療が遅れると重症化のおそれがある。熱が出たらできるだけ早く治療を」と訴える。タミフルについては、子ども用に粉末を水で溶かして飲む「ドライシロップ」がある。一方、リレンザは吸引器を使って吸い込む服用方法のため、吸い込む動作がまだできない幼い子どもには難しいという。

 タミフルには下痢や嘔吐(おうと)といった副作用が出る場合があるが、菅谷医師は「抵抗力が弱い乳幼児は治療せずにいて重症化する方がリスクが高く、脳炎や脳症など、何が起きるかわからない」「私は乳児にもタミフルを処方してきた。十分に気を付けた上で投与していくべきだ」と言う。

 タミフルについては10代の「異常行動」が指摘されたが、厚生労働省は「服用と異常行動との因果関係は不明」としている。今回、新型への感染が確認された高校生や中学生らには多くの場合タミフルが処方され、効果があったとされる。

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