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きょういく特報部2009

目指せ「学力調査で全国平均」 学力向上へ大阪の挑戦

2009年6月8日

写真土曜日の補習で勉強する池田中の生徒。学生や保護者らが個別指導する=大阪府池田市、伊ケ崎忍撮影写真ニンテンドーDSを使った勉強も=大阪府池田市、伊ケ崎忍撮影

 文部科学省が実施する全国学力調査の結果が2年連続で低迷する大阪。巻き返しを図る橋下徹知事のてこ入れで、矢継ぎ早に学力向上への取り組みが進む。4月下旬にあった3度目の調査は、9月をめどに結果が公表される。大阪の学力再生はなるのか。

■矢継ぎ早の対策

 「17足す15」「34引く8」。大阪府池田市の市立池田中学校で5月16日の土曜、算数を基礎から教える補習が始まった。四則計算が苦手で、中学の数学や理科の授業についていくのがしんどい1年生が対象だ。この日は約40人が参加した。

 1学期のほぼ毎週、休校日の土曜午前中に開く。生徒は数学教師に解き方を学んだ後、プリントで基礎的な計算を繰り返す。教員を目指す学生や保護者らボランティア約20人が机を回って個別指導する。

 別の教室では、「家庭教師のトライ」(本社・大阪府吹田市)の講師たちが3年生の希望者約70人に、英検3級取得のノウハウを教える集中講座が開かれていた。教材費以外は無料で、講師の派遣費はトライ側が負担する。

 小中学校での放課後や休校日の補習は、大阪の教育改革策の柱の一つだ。今年度、指定市の大阪、堺両市を除く府内の小学校の約半数、中学校の8割近くに広がった。池田市のように大手塾と連携する自治体も出てきた。

 07年、08年と2年連続で全国学力調査の結果が全国平均を大きく下回った大阪府。橋下徹知事は昨年8月、「このざまはなんだ」と府教委や学校現場を批判。各地で教育改革を進めてきた3人の教育界の著名人を「ブレーン」として招き入れ、そのアイデアを取り入れた学力向上策に次々と乗り出した。

 ブレーンの一人で府教育委員の陰山英男・立命館小学校副校長が提唱する「百ます計算」も急速に広がっている。縦10ます、横10ますの百ますで計算を反復させ、基礎をたたき込む狙いだ。大阪、堺の両市を除くと、漢字の読み書きなどを含めて何らかの反復学習を取り入れる小中学校は約8割に上る。

 府教委はまた、小中の各10校に携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を40台ずつ貸し出した。子どもたちに、ゲーム感覚で計算や漢字の書き取りを学んでもらう考えだ。

 こうした取り組みに手応えを得た中西正人・府教育長は5月上旬、2010年の全国学力調査で「(平均正答率で)全国平均をめざす」との数値目標を掲げた。

 一方、教育現場からは戸惑う声も上がっている。

 放課後の補習を実践する公立中学の女性教諭(59)は「新しい教材や方法を試すのは良いと思う。でも、府教委から詳細な報告書の作成を求められ、生徒にかかわる時間が減ってしまった」と話す。

■小6単位の秋田

 「日本のフィンランド」。全国学力調査で、小6が全科目で2年連続1位だった秋田県は、国際調査で上位のフィンランドになぞらえられる。同県には08年度、大阪府教委を始め、教員や地方議員ら全国64団体が視察に訪れた。

 全国学力調査が始まった07年に組織された「秋田県検証改善委員会」の委員長、阿部昇・秋田大教授(教科教育学)は学力向上の理由として、授業態度がよく「学級崩壊」などが少ないことを挙げる。少人数教育の早期導入も大きな要因とみる。同県は01年度、全国に先駆けて小学1、2年の30人学級を実現。翌年度からは中1も対象にした。それ以外の学年には臨時講師を配置し、国語、理科、算数・数学の授業に限って約20人で受けられるようにした。

 また、小中学校では06年度から「教育専門監」制度も設けた。専門監は教科指導にたけた中堅教員で、今年度は16人が認定された。1人が3、4校を回って各校の教員と一緒に授業を進め、教員の指導力向上も図る。

 文科省は学力調査時に、児童生徒の生活習慣についても調べている。秋田県では、授業以外で平日に1〜2時間勉強する小6の割合が全国平均より14.6ポイント高い。平日に午前7時より前に起きる小6も15.3ポイント上回った。生活リズムが整い、復習や自習が定着しているという。

 阿部教授は、家庭学習の定着のため学校が保護者向けに勉強会を開くなど、親への働きかけを丁寧にしている影響が大きいと分析する。「ほかの地域で崩れてきた当たり前のことが、秋田ではきちんとできている」と同教授はみる。

■「ブレーン」に聞く向上策

 教育委員や特別顧問として橋下知事を支える「教育ブレーン」の3人に、大阪の学力向上策について聞いた。

府教育委員の陰山英男・立命館小学校副校長

 「百ます計算」で基礎づくりに取り組んでいるため、学力調査の平均正答率は、昨年より多少は上がるだろう。百ます計算に対して、「受験学力と本物の学力は違う」「点数主義だ」という現場の先生たちの根強い批判がある。確かにその両者が異なるものであることは私も理解している。子どもたちには、体験学習や道徳教育も必要だ。しかし、全国学力調査の順位が低かったのは事実。まず、その点数を上げて保護者や地域の信頼を勝ち取る必要があるだろう。校長は積極的に、調査結果を地域住民に示すべきだ。

府教育委員の小河(おごう)勝・大阪樟蔭女子大非常勤講師

 計算、漢字の書き取りを毎日10分ずつ続けるのが効果的だ。日ごとにメニューを変えてはだめ。百ます計算で、今週は足し算、来週は引き算というように週ごとに変えて繰り返すと効果的だ。児童生徒一人ひとりの苦手個所を把握し指導につなげることが大切だ。「つまずき調査」の導入を勧めたい。中学生に、小学校の各学年で学ぶ計算と漢字の書き取り問題を解かせる。生徒の名前と各問題を縦横に並べた碁盤の目状の表を作り、間違えた問題のマスを塗りつぶす。これで、子どもたちの学力の状況がひと目でわかる。

大手塾による放課後授業「夜スペシャル」の実践で知られる東京都杉並区立和田中の前校長、藤原和博・府教委特別顧問

 小学3、4年で落ちこぼれにさせないことが大切。習熟していない子には放課後や土曜日に補習をして、計算や漢字の基礎学習を徹底して繰り返すべきだ。教師だけでは大変だから、地域の学生や退職した団塊の世代に「先生」になってもらえばいい。塾の講師だって構わない。もう一つ大事な時期が中学校。算数の基礎ができていない生徒に、和田中ではニンテンドーDSを活用して基礎計算を重ねさせ、数学の成績を伸ばした実績がある。

(小河雅臣、藤田さつき、市原研吾)

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