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きょういく特報部2009

英語の授業、英語で学ぶ

2009年6月29日

写真英語科は英語表現の一環で英語劇にも取り組む。今年は文化祭で「不思議の国のアリス」を演じた=福岡市東区、長沢幹城撮影

 高校の英語の授業が大きく変わる。4年後に本格実施される新しい学習指導要領では、「リーディング(読解)」や「ライティング(作文)」などの技能別科目が消え、「コミュニケーション英語」などに再編されるうえ、「英語の授業は英語で行う」ことが基本と明記されたからだ。実際どんな授業になるのか。先取りして実践している福岡市内の高校を訪ねた。

■「訳さずに理解」狙う

 Do you think that we should start to learn English from an early age?

 I believe so, because it is more effective to learn English.

 福岡県立香住丘高校の英語科2年のクラス。永末温子教諭(51)が教科書の英文をもとに即興で質問を投げかけると、生徒もその場で自分の考えをまとめて返答する。

 続いて教科書の英文をCDに合わせて音読した。ただし教科書は伏せたままだ。授業の最後には、次回の授業で学ぶ英文のプリントを配って速読開始。生徒は1分半から2分半で読み終え、プリントの裏にある設問に答える。元の英文を見ることはできない。

 「英語を日本語に訳すのではなく、英語のまま理解していく『読み』につながります」

 先生が英文を日本語に翻訳する場面はない。「○○さん」と生徒の名前を呼ぶくらいで、50分間の授業中、生徒とのやりとりはすべて英語だった。

 翌日、英語表現の授業では生徒同士が話し合った。「日本は英語を第2公用語にすべきか」を論題に、肯定派と反対派に分かれ、ディベート(討論)で対決。肯定派が「公文書は英語版も作るべきだ」と言えば、否定派は「日本の言語文化が失われる」などと応酬する。英語の草稿を用意し、相手を論破するための下調べもしておくという。

 クラスの生徒40人のうち帰国子女は2人。大半は地元の中学校から進学してきた。ここまで出来るのは1年の時から基礎を積み上げてきたからだ。

 毎朝読書の時間を設け、洋書を1章読んでは150語程度の英文に要約する。三つの英文でその日のことを書き留める「3文日記」も続けている。

 週末には、読み上げられた英文を書き取る「ディクテーション」もある。難易度を徐々に上げ、最初は教科書レベル、2年の今ごろはNHK衛星放送の英語ニュース、来年はCNNになるという。

 八尋恵美さん(16)は1年生の冬、外国人に道を尋ねられて難なく説明でき、力がついてきたことを実感した。「入学当初はゆっくり聞いた英文でも間違っていたのに、聞き取れるようになってきた」と話す。

 中村浩子さん(16)は最近、ハリウッド映画「天使と悪魔」を見た。字幕に頼らず、「聞くと同時に意味が分かっている」自分に驚いた。鬼木祥太さん(16)は「量を聞き、難しいものに挑戦するうちに普通に聞くときに楽に耳に入ってくるようになった」と話す。

■力に応じてバランスよく

 香住丘高校は03〜05年度に文部科学省の研究指定校となり、「読む、書く、聞く、話すの4技能を統合して教え、バランスよく力を高める」指導方法の開発に力を入れてきた。新しい学習指導要領の狙いもそこにある。

 4技能統合型の授業計画と、それに対応する到達目標「香住丘Can―Doグレード」を開発した。3年間を6期にわけ、各段階で生徒の7〜8割が「できるようになっていること」を具体的に設定した。

 英検やTOEICなどの外部テストも指標として併記し、1年生後期なら英検2級に60〜70%、準2級は全員合格を目指す。さらに、生徒自身が到達度をチェックできるシステムも活用している。

 生徒の力に合わせた教材選びや指導の工夫も重要だ。英語で授業を進めるときもそう。英語科とともに設置されている普通科の授業では、一語一語を丁寧に話しかけ、それでも生徒が聞き取れていないとみれば、より平易な表現で言い換えていた。英語科でも、抽象的な概念を説明する時や文法の授業では日本語で話しているという。

 英語教師といえども、はたして英語で授業をスムーズに展開できるのかと心配する向きもあるだろう。永末教諭は「教師も自己研鑽(けんさん)するしかない」と話しつつ、「英語で教える」ことばかりに気をとられると、本来の目的を見失うと強調する。

 「大切なのは、教師が英語を使うことではありません。生徒が英語を使う時間を増やすことです」

 同校と共同研究をする東京外国語大学英語学習支援センターの長沼君主(なおゆき)専任講師(35)は「英語で教えると言っても、Q&Aのように単に内容確認のやりとりを英語で行う以上のことが求められている」と語る。

 「『読む』『聞く』を通して得た情報を『話す』『書く』という形で発信できる。そういう自信を生徒が段階的につけていけるようでないといけない。そのためには高校だけではなく、小中高大の連携を見据えて考える必要がある」(井上恵一朗)

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