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きょういく特報部2009

学校設備「今がお買い得」 文科省、4900億円補正予算PRに躍起

2009年7月6日

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 学校整備のために、どっさりと国の補正予算がついた。補助金に加え、新設の「臨時交付金」を使えば、いつもなら国と地方で費用を分担していた事業の地方負担が、ほぼなくなる。しかし、交付金の使い道は教育に限らず、自治体の裁量次第だ。文部科学省は「教育に使って」と売り込みに躍起だが、自治体の対応には温度差があるようだ。

■地デジや耐震化に補助

 「地方負担を大幅に軽減しています。ぜひ積極的な取り組みをお願いします」。文科省講堂で5月に開かれた「スクール・ニューディール推進会議」で、塩谷立文科相は、都道府県教育委員会関係者に国の補助事業の積極活用を呼びかけた。

 スクール・ニューディールとは、文科省と経済産業省、環境省が、学校の設備にかかわる補助事業の枠を大幅に拡大し、景気回復や地方の活性化を目指す構想のこと。補正では、計約4900億円もの予算が付いた。

 具体的には、(1)学校の耐震化(2)校舎に太陽光発電パネルや二重サッシを設置する「エコ校舎化」(3)地デジ対応テレビへの買い替え、モニターの画面上に書き込みができる電子黒板、パソコン購入や校内LAN回線といった「ICT環境整備」。ニューディールには含まれないが、(4)中学校の武道場整備(5)小中高校の理科や算数・数学の実験器具と教材にも、別に大きな予算がついた。

 最大の特徴は、通常なら、ほぼ半分を支払わなければならない地方負担分のほとんどを、国が「臨時交付金」で持つということだ。「財政が厳しくて自己負担分が払えない」などの理由で、教育施設の整備が遅れていた自治体の背中を、今回の補正で強く押そうというものだ。

■官僚も売り込み

 売り込みは大臣だけではない。「史上最大規模!」「まとめて買うチャンス、古いものをガーンと新しく」「有利でお得」。5月に都内であった校長会の催しで、理科教材の整備を担当する文科官僚はさながら、飛び込みのセールスマンのようだった。

 小中学校の理科教材は、新学習指導要領で教える内容が増えることもあり、例年の15倍の200億円を計上。同省の担当者は北海道稚内市から沖縄の石垣島まで、69カ所を手分けして行脚し、市町村担当者に売り込みを続けた。

 理科教材の10倍、約2千億円の予算がついた地デジやパソコンの担当者も、18県を回り、PRに必死だ。昨年3月時点で、地デジ対応の学校のテレビは1%のみ。アナログ放送が見られなくなることから、地デジ対応100%を達成できる規模の予算が付いたが、市町村が予算化してくれないと余ってしまう。

■道路工事優先…自治体に温度差

 文科省が躍起になるのは、臨時交付金の使い方が自治体の判断次第だからだ。

 文科省には「学校側にニーズがあっても、市町村が予算化してくれないと、せっかくの予算が教育環境の整備に使われずに終わってしまう」という危機感がある。このため、予算成立前から、県を通してだけでなく直接、市町村の教育委員会などに「予算要求を」、首長には「予算計上を」と売り込んできた。

 自治体の反応は様々だ。

 横浜市は、6月の補正予算でパソコン整備に36億円、太陽光パネル45億円、地デジ対応テレビ23億円を計上した。市教委は「国の臨時交付金がなければ、これほどの台数は無理だった」と評価する。

 大阪府では、指定市を除く41市町村のすべてが、今回の補正で新たに公立小中学校へパソコンや地デジ対応テレビなどを購入。橋下徹府知事が先月、府庁で市町村長に「大阪のICTの状況は学力と同じの45位ぐらいで、最悪の状況。大阪の環境を整えるという僕の思いに協力してほしい」と予算化を訴えたのも影響したようだ。

 一方で、教育設備をさほど計上しない自治体もある。

 鹿児島県肝付町は「新学習指導要領への対応が必要」と、1校あたり100万円分の理科教材を計上する予定だが、地デジテレビやパソコンはゼロ。「電子黒板はすぐ必要ではなく、どう使うかよく分からない」。地デジも「授業ではビデオやDVDを使い、放映中の番組を見るわけじゃない。しばらくアナログで対応できる」と様子見だ。

 まだ、検討段階の秋田市はパソコンなどについて「今回の自治体負担は少ないが、更新や修理の時がいずれ来る。その費用負担を考えると、大量に買って大丈夫か」と心配する。

 大阪府庁の会議でも、市町村長たちが「ランニングコストや更新時の補助はないのか」「交付金を教育のみに費やせない。府はどれだけ財政支援してくれるのか」などの疑問を知事に投げかけた。

 教育費以外の事業に多く配分する自治体もある。

 埼玉県川越市は、9月補正で教育関連を取り込む予定だ。ただし、重点を置くのは渋滞緩和の道路工事だ。耐震化や教職員用のパソコンにも予算を回し、理科教材も「最低限のリストアップ」を検討中だが、「渋滞緩和工事こそが市として喫緊の課題だ。相対的に考えて優先順位をつけて決める」。

 文科省によると、ICTと理科教材の現時点の申請状況は約3分の2ほど。「秋の補正に向けて、まだまだ受け付けていますので、まずは相談を」と、今もPRに懸命だ。(中村真理子、藤田さつき、上野創)

    ◇

 補正予算の臨時交付金 経済危機対策として、二つ創設された。国の公共事業の自治体負担分を肩代わりする「地域活性化・公共投資臨時交付金」が約1兆4千億円、地球温暖化や少子高齢化などへの対策にあてる「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」が約1兆円。

 金額は、各省庁が国庫補助を計上した予算の自治体負担部分として積み上げた。実際にどう使うかは基本的に自治体の裁量にゆだねられており、補助事業以外にも使える。

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