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きょういく特報部2009

高校で「学び直し」の試み 中退・不登校対策

2009年7月27日

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 全国の高校の中退者は約7万3千人、不登校は約5万3千人(いずれも07年度)。勉強についていけず、意欲を無くして足が遠のくのも原因の一つだ。そんななか、中学までの勉強を学び直し、基礎学力の定着を特色として打ち出す高校が増えている。神奈川県では今春から、指定校で入試の学力検査を廃止。入学のハードルを低くした上で、社会体験など将来の目標を明確にするための教育に力を入れている。

■「小学生レベル」も補修

 「何 使 信 俳」「これらの漢字の部首を書きなさい」

 神奈川県立釜利谷高校(横浜市金沢区)の1年生の一日は、漢字問題のプリントから始まる。午前8時50分から15分間、「チャレンジ」と名付けられた時間は、国語の力をつけ、漢字検定に合格することを目標としている。

 続いて、25分間の「ベーシック」という時間が待っている。国語、数学、英語の3科目を週替わりで、時には小学校レベルまでさかのぼりながら中学校までの内容を徹底的に学ぶ。学校独自の科目だ。

 取材で訪れた日は、英語の週だった。「I my me mine」。プリントの英単語をなぞって代名詞を覚えていく。他にも、「彼は私の友人です。 (  ) is (  ) friend.」「This is my guitar. これは(  )ギターです」と、空欄を埋める英訳、和訳の問題が並ぶ。

 教室には2人の先生がいて、生徒たちの机を回って質問に答えていく。生徒は問題を解き終えると、解答をもらって自分で採点する。黒川綾麻(りょうま)君(15)は「勉強はあまり好きじゃないけど、基礎から学べるので楽しくできます」と話した。

 神奈川県教育委員会は今年度から、同校と田奈(横浜市)、大楠(横須賀市)の全日制普通科計3校を「クリエイティブスクール」に指定した。

 こうした学校では、入学試験で学力検査をなくした。面接とスピーチ、討論などの「自己表現活動」による意欲面を重視した選抜にした。不登校などで、学びたくても十分学べなかった生徒を積極的に受け入れられるようにするためだという。

 きめ細かに指導するため、すべての授業を30人以下のクラスで実施する。基礎学力のほか、就業体験や地域活動への参加を通じて、社会性を身につける授業にも力を入れる。

 取り組みは「クリエイティブスクール」各校で異なるが、釜利谷高校では朝一番に「チャレンジ」「ベーシック」といった短時間の授業を配することで、勉強への集中力を高めようとしている。

 「中学のころは英語が大嫌いだったという生徒から、『面白いので参考書買った』という声を聞きました」と三辻訓校長は言う。「やる気さえ生まれれば、一挙に伸びる可能性がある。学力だけでなく、社会で生きていくための力もつけてもらいたい」

 千葉県教委も今年度から、「アクティブスクール」という研究事業を県立高校4校で始めた。「地域と共に生きる職業人を育成する」ことを目的に掲げ、「義務教育段階の学習内容の定着」「自立を目指す生活指導」などに重点を置いたカリキュラムを始めている。

■都が先行 人気も上々

 学び直しや職業教育を組み合わせ、「課題校」と呼ばれる高校を立て直す。こうした試みにいち早く取り組んできたのが東京都だ。02年に全日制普通科2校を「エンカレッジスクール」に指定し、これまでに工業高校を含め計4校に広げている。入試の学力検査も無い。

 最初に指定されたうちの1校、都立足立東高校(足立区)では、00年度に100人を超えていた1年生の中退者が、08年度には4人にまで減った。卒業時に進路が決まっている生徒は、00年度はおよそ半数にとどまっていたが、08年度は約80%になった。

 同校では1クラスを複数に分け、小教室なども活用した少人数授業を基本とする。国語、数学、英語の主要3科目では、二つのクラスを習熟度別に四つのグループに分ける。

 例えば、ある日の1年生の数学では、「3けたのかけ算、割り算」から中学の「二次方程式」、高校レベルの「因数分解」まで、幅広い段階の授業が進められていた。清水頭賢二校長は「自分に合ったクラスがあれば、きちんと学校に来るようになる」と話す。定期テストもない。他人と競うのではなく、あくまで自分のペースで学んでもらうためだという。

 1年生は、午前中は基礎学力の定着を中心に取り組むが、午後はスポーツや文化的な活動、体験学習などを中心に据え、メリハリのある時間割りにしている。これらの授業では「自分に自信をつける」「他人とのコミュニケーション能力を磨く」などを主眼に置く。

 「社会に出て必要なマナーを身につけさせる」という方針から、生徒指導も厳しめだ。登校時には通学路や校門に毎朝、教員が立ち、生徒に声をかける。茶髪、制服の乱れ……とチェックを怠らない。

 エンカレッジスクールについて、都教委は「都民のニーズは非常に高い」と言う。実際、人気は高く、都教委によると、今年度の入学試験で普通科高校全体の倍率が1.5倍程度だったのに対し、エンカレッジスクールの平均は約2倍だった。(宮本茂頼)

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