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きょういく特報部2009

学力調査、犬山流で参加 独自に採点、授業に生かす

2009年8月10日

写真全国学力調査の開始前に、注意事項を聞く児童たち=4月21日、愛知県犬山市の犬山北小学校、加藤丈朗撮影

 「教育理念が合わない」と、過去2回の全国学力調査に全国で唯一参加しなかった愛知県犬山市。今年4月にあった3回目の調査は参加に転じたが、そこは「犬山流」。「参加した立場から問題提起する」と言う教育委員会のもと、国任せにせず小中学校全14校が独自に採点し、結果がおおむねまとまってきた。「学力調査を現場で生かすには、時間と手間がかかる独自採点が欠かせない」。各校はそう実感している。

■「△」で頑張り認める

 「80−30÷5」

 小学6年生を対象にした算数で今年出題された計算問題の一つ。正解は「74」だ。

 4学級111人の児童がテストを受けた犬山市の城東小学校では、教師が2学級57人を抽出して採点した。

 この問題に「10」と答えて間違えた児童が少なくなかった。四則演算の規則に従わず、前から計算した結果だ。

 「文科省から戻ってくる結果は、正答か誤答かだけ。教師が採点すれば、どこでどう間違えたかが分かる」と岩田和敬教頭は言う。

 当初、城東小同様に生徒を抽出して採点をしようと考えていた羽黒小は、6年の学級担任が採点に取りかかった後、81人の全児童を採点することにした。

 国語の問題では、報告文からわかることを「80字以上100字以内で」「報告文の内容と結びつける」などの条件でまとめる問題が最初にあり、出来が芳しくなかった。「児童の状況をつぶさに見ようと思ったら、みんなを採点すべきだ」という意見が出たという。

 6年の学年主任の杉本恵子教諭は「同じ誤りでも、字数が足りないのか、ほかの条件が合っていないのか、そこを見ることが重要」と言う。「解答が空欄でも、児童があきらめてしまったのか、一生懸命やった結果なのかで違う」。あきらめてしまった児童には、文章を読む動機づけを考える。一生懸命やってできなかった児童には、読み方や書き方を教える。

 杉本教諭は「得点だけで判断されれば、できない子がさらに自己否定することにつながり、自信を持てなくなってしまう」と指摘する。勝村偉公朗(いくろう)教頭も「できない子を切り捨ててはいけない。それが義務教育のあるべき姿だ」と話す。

 今回の独自採点では、複数の学校で、記述式の問題に「○」「×」だけではなく、「△」をつけている。今井小の大谷さちみ教頭は言う。「『ここまでは出来ている』と認めるのが△。個々の子どもを見て採点する、ふだんのテストと一緒です」

■分析に手間 疑問なお

 城東小では、基礎的な知識をみる「国語A」に比べて応用力をみる「国語B」の正答率が低かった。それを踏まえ、6年1組担任の松本哲広(あきひろ)教諭は、国語の中にある「ヒロシマのうた」という物語の単元を通常の6時間から11時間に増やした。場面をより細かく区切って読み取らせるためだ。

 音読してくるだけだった宿題で、読み取った登場人物の心情や場面を書かせた。授業では班ごとに話し合い、ほかの班のメンバーにも説明して伝える力を伸ばそうと試みた。自分の考えもまとめ直させた。児童の発言に対しては、そう考える理由もたずねて読み取りを深めさせているという。

 1年生の算数の時間では、引き算の文章題を自ら作り、4人グループで添削しあい、ほかのグループに解いてもらうやり方にも取り組んだ。

 水谷茂校長は「読み取り、内容把握、意見の伝達すべてが『読解力』。その底上げが目的です」と話す。

 ただし、独自採点と結果の分析には手間と時間がかかり、なかなか授業につなげられないという学校も少なくない。

 「検証結果が実践として出てくるのは秋がピークになるだろう」と市教委の研究委員会で発言したのは、栗栖小の中野金弘・教務主任。「もう少し教員同士で話し込み、共有する時間が必要だ」と言う。

 約60億円を投じる学力調査への根本的な疑問もいまだに根強い。調査に参加し、自己採点をしたことについて、犬山中の長屋勝彦校長は「メリットはあるが手間と労力がかかる。その分は普段の指導に向けたい」。

 同中は生徒の理解度を高めるため、英語、数学、理科の全授業を教員2人で教えてきた。今年度は新学習指導要領を前倒しして全学年で授業数が増えたため、教員の過重負担を避けつつ2人授業制を保とうと、3年生は2年時まで7クラスだったのを、今年、6クラスにしたという。「学力調査の予算を教員増に充てれば、学校現場としてはかなり助かるのではないか」。長屋校長はこう求める。(永友茂則)

    ◇

 犬山市の小中学校の独自採点 「点数によって自治体や学校が序列化される」「競争原理が持ち込まれる」などとして過去2回の全国学力調査に不参加だった犬山市教委は、教育委員の増員時や交代時に参加是認派が増え、今春の3回目は参加に転じた。そうした中、市教委は「教師が採点しないと個々の子どもの状況に応じた評価につながらず、教育指導の改善に生かせない」として、独自に採点することを決めた。

 採点基準や、どれだけの数を採点対象にするかは各校に任された。市教委は、各校の担当教員でつくる「教育評価研究委員会」で採点の進め方や結果、分析などを持ち寄り、検証している。

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