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きょういく特報部2009

「山村留学」曲がり角 財政難・高齢化で受け入れ難しく

2009年9月14日

写真豊寒別小学校の敷地には、留学生が残した植樹が広がる=いずれも北海道浜頓別町写真山村留学生がたくさん来ていたころの豊寒別小の卒業式の写真。いま、児童数は5人写真国道沿いに設置された看板には、今も「山村留学推進地区」の文字が残るグラフ拡大  

 都市を離れて自然豊かな地域で学び、暮らす――。そんな「山村留学」がここ数年、全国的に縮小している。自治体の合併や財政難、高齢化……と受け入れ側に余裕がなくなる一方、不況の影響も希望者の減少に拍車をかける。地域の活性化を目指して各地で設けられた山村留学の制度は、曲がり角に来ている。

■「人口増」地元の夢破れ

 北海道北部、オホーツク海沿岸にある浜頓別(はまとんべつ)町は、ホタテ漁と酪農を主産業とする人口約4200人の町。町立小学校6校のうち、2校が今年度いっぱいで廃校になる。

 その一つ、豊寒別(とよかんべつ)小学校は95年から山村留学生を受け入れ、一時は児童のほとんどを占めたが、07年度で新規の受け入れをやめた。取り組みで中心的な役割を担ってきた酪農家の小川文夫さん(58)は「地域を活性化しようと始めたが、山村留学では地域を守れないとつくづく感じた」と話す。

 同校はピーク時の65年には児童が53人いたが、90年代に入って10人前後まで減った。「子どもの増加は見込めない。でも、地域のよりどころの学校をなくしたくない」。当時、こんな声が多く上がったという。

 そのころ、過疎地の山村留学の取り組みがニュースになり、全国的に話題になっていた。小川さんら地域の人たちは「北オホーツクの大自然で学ぶ会」を結成し、学校とも連携して事業を進めた。

 全国的には子どもが親元を離れる「里親留学」が主流だったが、将来永住してもらうことを見据え、親子で一緒に来てくれるよう積極的に働きかけた。3年以内に家を建てることを条件に660平方メートルの土地を無償で贈与することも打ち出し、東京や関西に出向いてPRした。95年に最初の留学生を迎え、翌年は一気に8人に増えた。

 地域の取り組みを後押しするように、町は00年に山村留学への助成を条例化した。豊寒別小は02年には地元の子が2人にまで減ったが、山村留学生は増え続けて18人に。03年度には「地域づくり総務大臣表彰」を当時の麻生太郎総務相から受けた。

    ◇

 だが、眼目の「永住」は進まなかった。「定まった仕事が地元でなかなか見つけられないのが一番の原因です」と町教育委員会の菊地勝幸係長は言う。

 子どもが小学校を卒業した後、現在も町で暮らしているのは3世帯しかない。石川県から来た吉田奈津子さん(55)は、夫と高校生、中学生の2人の息子との4人家族。「田舎暮らしはいいが、夢物語ばかりじゃない。高校、大学と進学するとなるとお金もかかる」と話す。

 町の財政が悪化すると、山村留学への補助金が議会で批判されるようになった。各地で似たような取り組みが増えたこともあり、「子どもを集めるのが難しくなった」と小川さんは言う。ピーク時に年間100件あった問い合わせも、最後は15件ほどに減っていた。

 北海道は山村留学生の受け入れ数が全国で一番多い。道内で始まったのは88年だが、道教育委員会の調べでは、91年以降は受け入れ校、人数とも増え、00年前後にピークを迎えた。小学校は最大で34校、留学生数も150人近くに達した。しかし、06年以降は減り、今年度は小学校の受け入れ人数はピーク時の半分、学校数も18にまで減った。

■財団が運営 成功例も

 傾向は全国的にも同じだ。全国山村留学協会によると、08年度までに302校が留学制度を設けたが、制度を中止したり、学校自体が休校・廃校になったりしたところが127校に及ぶという。

 山村留学は、76年、長野県八坂村(現大町市八坂)で始まったとされる。1人の教師が「都会の子どもを農山林でたくましく育てたい」という理念を掲げて実践した。その後、地域の活性化に期待をかけた受け入れが全国に広がった。

 同協会によると、北海道は広大な自然が広がっているという印象が強く、子どもたちにアピールしやすかったという。豊寒別小のように、人口増を目指した親子留学が他に比べて多いのも特徴だ。しかし、小規模校が実施しているケースが多く、学校の統廃合などの波にのまれていった。

    ◇

 一方、山村留学「第1号」の大町市立八坂小学校は、合併で八坂村から大町市に変わった今もしっかり続いている。ここでは「育てる会」という財団法人(本部・東京)が受け入れを担う。子供たちは、財団が運営する生活センターで専任職員や仲間と生活をともにし、月の半分は地元の農家などで暮らしながら学校に通う。

 「育てる会」は、長野県内で他に三つのセンターを持つ。こうしたやり方は、他に例がない。同会の担当者は「片手間ではできないので財団で運営している。地域レベルで成功させるには住民の情熱、行政、学校と皆の気持ちが一致しないと難しいだろう」と話す。

 全国山村留学協会は、全体的な縮小傾向について、「学校の存続にばかり目が向きすぎた結果ではないか」という。「来てくれた子どもたちに一層社会性を身につけさせたり、地元の子にもより地域のことを知ってもらったりと、山村留学ならではの教育理念を持たないといけない」と指摘する。(小林舞子)

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