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きょういく特報部2009

「公立エリート高」に勢い 大阪府も11年度から10校指定

2009年10月5日

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 大阪府は、難関大学への進学に力を入れる「進学指導特色校」制度を11年度からスタートさせる。公立高校入試の学区制を進学実績の高い10校の専門学科に限って廃止し、成績が優秀な生徒を府内全域から集める。こうした「公立エリート校」づくりは東京都や広島県ですでに進められており、いずれも進学実績を伸ばしている。制度に込められた考え方は何か。気をつけねばならないことはないのだろうか。

■学区なくし進学重点

 「日本のトップになるようなカリキュラムを組み立ててほしい」。大阪府教育委員会が進学指導特色校に指定する府立10高校を発表した6月、旗振り役の橋下徹知事はこう期待を述べた。特色校の設置は、学力向上を目指す橋下知事の意向を反映したものだ。

 選ばれたのは、橋下知事の母校・北野高校など旧9学区のトップ校とされる9校と、同等の進学実績のある豊中高校の計10校。進学指導の専門学科(定員160人)を新設し、学区不問で生徒を募集する。入学後は文系と理系に分かれて、英語や理数系科目に力を入れた授業を実施する。

 この10校は、府教委が03〜07年、「次世代のリーダーを養成する」として指定した「エル・ハイスクール」に選ばれており、土曜日の補習や大学研究室の訪問など、進学への意識を高める取り組みを進めていた。今後、教材やテスト問題、進路情報の共有、生徒の合同学習合宿などに協力して取り組む。

 「10校には、受験テクニックを詰め込むだけではなく、総合力ある人材を育ててもらいたい」と府教委の担当者。そのために、各校ごとに「探究的な教科・科目」を設定してもらうという。

 すでに実施している学校もある。北野高校が02年に開設した「スーパーサイエンスコース(SSコース)」だ。2年生全員にテーマを選ばせて研究させている。

 9月18日に同校であった中間発表会。植田嶺(れい)君ら6人は自作の「ペットボトルロケット」を持って臨んだ。水の入ったペットボトルを空気入れで加圧し、上空に飛ばす。物理の法則を考えながら理想の空気圧と水の量を追究する研究について報告した。

 植田君は「受験勉強は好きじゃないけれど、興味のある研究は楽しい」。八尾隆校長は「自分たちで目標を設定して情報を集め、人前で発表する能力は社会に出て役に立つ。自ら考える力は受験勉強にも生きる」と話す。

■高1で大学研究室訪問

 瀬戸内海に浮かぶ広島県の江田島。国立江田島青少年交流の家に8月、広島県の県立高校生124人が集まった。広島県教委指定の「トップリーダーハイスクール」5校と、文部科学省指定の「スーパーサイエンスハイスクール」など2校の2年生による3泊4日の合同学習合宿だ。

 生徒は受験指導のエキスパートとされる教諭の授業を受け、東大や京大などに進んだOB7人から受験や大学生活についての体験談を聞いた。

 同じ時期、1年生44人は東京へ出かけた。国立大の研究室6カ所を訪問したほか、大手の電機メーカーや証券会社などの若手社員のディスカッションに参加した。県教委の担当者は「生徒に早い段階で自分の将来について考えてもらうため」と狙いを語る。

 県教委は00年度に「学力向上対策重点校」を指定し、03年度から合同合宿を始めた。今年度、「重点校」から「トップリーダーハイスクール」に衣替えした。この間、進学実績は劇的に伸びた。県立高校から国公立大への現役合格者は01年の1565人から09年は2598人に。県教委の担当者は「進学実績はすべてではないが、一つの指標となる」と胸を張る。

 「都立校復権」を目指す石原慎太郎知事が提唱し、01年度から導入された東京都の「進学指導重点校」。03年度には7校に拡充した。各校が毎年、「東大・東工大・一橋大・京大の合格者、30人以上」(戸山高校)、「センター試験の平均点700点」(八王子東高校)などの数値目標を掲げる。

 重点校の一つ、日比谷高校は東大、京大などの難関国立4大学と医学部医学科への現役合格者が04年の6人から09年は30人に増えた。09年の目標は「35人以上」だった。

 石坂康倫校長は「私立の中高一貫校に行かなくても、公立高校でしっかり勉強すれば東大に行けるんだと証明したい」と力説する。(左古将規)

■詰め込みではなく自ら考える学習を―尾木直樹・法政大教授(臨床教育学)

 進学指導の重点校とそうでない高校を分けてしまうと、重点校に入学できた子はてんぐになり、あと一歩で入学できなかった2番手グループの子は劣等感を抱きかねない。重点校であれ、それ以外であれ、どこに入学しても面倒をみるというメッセージを、高校側が発することが大切だ。

 難関大学への合格者数という数値目標を掲げ、達成できるかどうかを評価するという流れは、小泉改革の成果主義がもたらした負の遺産だ。高校入学時点で、生徒を「進学」「スポーツ」などと分けてしてしまうことにも賛成できない。入り口の時点で道を狭めてしまうと、失敗したときに大きな挫折感を味わう。高校では、広く教養を深めることの方が重要だ。

 単なる詰め込み教育ではなく、生徒が自ら考える総合的な学習を深め、結果として東大、京大への進学者が増えるのは否定しない。重点校が目指すとしたらその方向だろう。

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