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きょういく特報部2009

「副校長」「主幹教諭」…「肩書先生」2年目の宿題

2009年11月2日

写真子どもたちに囲まれてピアノを弾く中村武彦・指導教諭。「授業のことについて先生方と話がしやすくなった」と言う=北九州市小倉南区写真

 改正学校教育法で、08年度から「副校長」「主幹教諭」「指導教諭」という新たな職を学校に置けるようになった。指揮系統をはっきりさせて運営を効率化させるためだが、朝日新聞が全都道府県と政令指定都市の教育委員会にアンケートしたところ、導入2年目の今年度までに配置した自治体は1年目の2〜3倍程度に増えたことが分かった。制度が次第に広がる一方で、アンケートからは課題も浮かぶ。

■導入自治体2〜3倍に

 アンケートは郵送で行い、47都道府県と18政令指定都市のすべてから回答を得た。

 それによると、09年4月1日現在で小中高校や特別支援学校のいずれかに副校長を配置した自治体は30都道府県市に上った。主幹教諭は49都道府県市、指導教諭は17府県市に上った。

 文部科学省が昨年実施した08年4月1日現在での調査では、副校長を導入していたのは10都県市、主幹教諭は20都府県市、指導教諭は8府県市だった。制度開始から2年目に入り、副校長を導入した自治体は3倍、主幹教諭と指導教諭はそれぞれ2倍強に増えたことになる。

 副校長は管理職として校長をサポートする。主幹教諭はいわば中間管理職。校長や副校長、教頭を補佐して校務を担い、教壇にも立つ。指導教諭は教育活動面でほかの教諭を指導する立場だ。

 この三つの職のうち一つでも導入した自治体は50都道府県市ある。半数以上の27都府県市はその効果を挙げた。

 「副校長に専決権限を与えたことで、迅速な事務処理ができるようになった」(岩手県)、「会議に出す提案事項の調整により、時間短縮や回数の削減が図られた」(滋賀県)、「指導教諭を導入し、校内研修の充実が図られた」(徳島県)などだ。

 一方で、約4割にあたる18府県市は課題も挙げた。目立つのは業務分担に関する事柄で、8府県市が寄せた。「主幹に業務が偏ると役割が十分に果たされない」(愛知県)、「役割が明確でなく、管理職と教諭との連携がスムーズにいかず試行錯誤している」(北九州市)などだ。

 小中学校に主幹教諭を配置したときだけ認められる教員加配についても4県市が挙げた。「県立学校への加配制度が整っていない」(宮城県、徳島県)、「配当は小学校のうち一部分のみだった」(大阪市)などと指摘している。

 「昇任に意欲的な職員が少なく人材確保に苦慮している」(横浜市)、「配置校が少なく登用した教員の異動が硬直化する恐れがある」(島根県、佐賀県)など人事に関する課題も挙げられている。

■組織管理に抵抗感

 北九州市立徳力小学校の中村武彦教諭は、指導教諭になって2年目になる。

 期待されているのは、教育活動でほかの教員をリードすること。校内で月に2回ほど研修会を開く。専門は音楽だが、テーマは「学校経営について」「若年教師の役割」など幅広い。

 これまでも同僚の授業方法などについて率直に意見を言ってきたが、閉鎖性も実感してきた。「肩書がついてからは、指摘をちゃんと聞いてくれる場面が増えた」と手ごたえを感じている。

 「他校の先生からの相談も増えました。授業のやり方にはどの教科にも共通する部分がある。そんな思いを込めて返答しています」

 同市内の中学校で今年、主幹教諭になった男性教諭は戸惑い気味だ。校務の一部を担う分、授業の負担は減らすのが建前だ。非常勤講師に週4時間サポートしてもらうことになったが、この限られた時間では任せられる授業は見つからず、問題作りなどを手伝ってもらうにとどまっているという。「せっかくの制度なのでうまく機能させたいが、今は試行錯誤」と打ち明ける。

 主幹教諭の授業軽減分をどう穴埋めするかは難問だ。定数より多い教員を配置する加配制度が整っている小中学校でも人手は足りない。文部科学省によると、08年度に全国の小中学校に配置された主幹教諭が約1万人だったのに対し、実際についた加配はわずか651人だった。

■降任願う教諭

 かつて管理職といえば校長と教頭だけだった学校組織は「ナベブタ型」と言われた。新たな職を導入してピラミッド型にすることには抵抗感も根強い。

 大阪府は法改正に先行して06年度から「首席」(主幹教諭)を設けた。その肩書を持って4年目になる府立城東工科高校(東大阪市)の田中嗣弘教諭は、導入時は教職員組合の分会長として校長に異を唱えたという。「民主的な職場作りの面から問題があると思った」からだ。

 それでも校長が導入を決めたとき、白羽の矢が立った3人の中に田中教諭も含まれていた。間もなく不安は現実となった。ある日、40代の教諭に仕事を割り振ったところ、「首席として言うとるのですか」と返されたという。

 大阪府ではこれまでに769人の「首席」を小中高校に配置したが、07〜09年度で計19人が自ら希望して一般の教諭に降任した。府教委の担当者は「やってみるとしんどかったのかもしれない。意欲のあった人がこういう結果になったのは残念」と話す。

 文科省によると、全国でも少しずつ希望降任する教諭が出ているという。東京都では今年、約4千人の主幹教諭のうち29人が肩書を捨てた。

 中央教育審議会教育課程部会の委員として導入議論に加わった京都市立堀川高校の荒瀬克己校長は、「学校はナベブタ組織で構わない」と公言してきた。

 「教壇に立てば、みんな一人の教師。誰かに頼る環境を作ることで当事者意識を失うような事態につながらないようにしなければならない」と感じている。(小田健司)

■学校の事情に即して―田上哲・九大院准教授(教育方法学)

 新たな職を導入した背景には、教員や学校に対する尊敬や信頼が薄れつつあることがあるのではないか。対症療法的な措置として組織マネジメントをとり入れたが、組織が階層化すれば、個々の教員が主体的に考えて行動する意欲をそがれる危険性も出てくる。教育の現場がそうならないように、導入する場合は目的を明確にし、個々の学校で抱える事情に応じて検討されなければならない。

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