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きょういく特報部2009

母校愛と個性は中高から 私大、傘下に新設・系列化

2009年11月16日

写真移転した県立高校の旧校舎を改築して整備が進む早稲田佐賀中学・高校=佐賀県唐津市

 有名私大が、内部進学を前提にした傘下の中学・高校をつくる動きに拍車をかけている。付属校の新設のほか、既存の私立校と合併するなどして系列化する動きも。大学の特色が薄れつつあると言われるなか、中高のうちから母校愛をもつ個性的な人材を育てようというねらいだ。

■地方出身者で「活性化」

 見上げれば天守閣と白壁。すぐ近くには玄界灘が広がる。

 佐賀県唐津市の中心部、舞鶴公園に隣接する二の丸御殿跡で、来春開校する早稲田佐賀中学・高校の校舎建設が進んでいる。

 高校卒業生の半分、120人が推薦で早稲田大に進むことを想定した系列校。移転した県立唐津東高校の旧校舎を大規模改築し、遠隔地の出身者も学べるように寮を設ける。開校までの事業費は二十数億円。中学初年度の納付金は100万円程度の予定だ。

 早稲田といえば、今さら説明の必要がない「私学の雄」。傘下には、すでに早大高等学院や早稲田実業、早稲田中高といった学校がある。その上で九州に進出した背景には、「地方出身の学生を増やしたい」「大学を出て地元に戻ることがあれば、そこでまた早稲田ファンが広がるかもしれない」という考えがあるという。

 慶応に比べ、地方出身者が多く集まると言われてきた早稲田。入試の志願者中、首都圏以外の高校の出身者は30年前には5割近かったが、今春は3割弱にまで減り、すっかり様変わりした。

 早大付属・系属校プロジェクト室の梅原竜司課長は「いろんな地域の個性や文化を持った学生のエネルギーが集まってきた『全国の大学』が、首都圏の学生で均一化するのは好ましくない」と話す。各地のOB会からは「うちの県からもっと学生を入れて」という声も寄せられるという。

 今回新たに中高を置く佐賀県は早大の創設者・大隈重信の出身地だけに、建学の精神を理解する人材を育てたいという思いは強い。受験生の関心も高く、これまで3回あった地元の説明会には計1300人以上が集まった。「早稲田佐賀に入れば、神宮球場まで出向いて東京六大学野球の早慶戦を観戦する行事も予定されています」。学校側のこんな説明に、会場は「オオッ」とどよめいたという。

 東京では、中央大の動きも急だ。来春は新たに付属中学を新設するほか、横浜山手女子中学・高校と提携し、「中央大横浜山手」と改称して生徒を集める。共通するのは、ここでも「大学の基幹になる学生を自前で育てよう」という考えだ。

     ◇

 傘下の学校を広げて人材育成をめざす取り組みは、関西の方が先行している。

 立命館大は、94年に付属校となった立命館宇治中学・高校で外国語教育や国際化教育に力を入れている。06年新設の立命館小学校では英語や論語を学ばせる。「多様な学生」を育て、一般入試の学生と互いに良い影響を与えあうことを期待しているという。学校法人立命館の浮田恭子一貫教育部長は「単純に『エスカレーター式』と呼ばれるのは抵抗がある。東大では育成できない人材を育てたいという思いです」。

 関西大は、野球やサッカーの活躍で知られる北陽高校(大阪市)を08年に合併した。来春には中学を併設し、さらには大阪府高槻市に小・中・高校も新設する。池内啓三専務理事は「大学のフロントランナーは併設校から出したい」と言う。

■思惑外れ、定員割れも

 ただし、こうした「ブランド大学」も、思い通りの展開になっているわけではない。

 札幌市の近郊、北海道江別市に95年に開校した立命館慶祥高校。立命館が地元の学校法人と合併してつくった。望めば全員が立命館大へ進めるが、実際には半分が他大学を目指すといい、高校側も旧帝大の北海道大などを視野に入れた難関大向けの指導コースを設ける。地元の大看板である北大への進学実績がないと「一定水準の高校として認知してもらえない」(同大)という事情もあるという。「『立命館に行ける』という以外の付加価値がないと、優秀な生徒を集められない」

 少子化により、大学は全体的に入りやすくなっている。大手進学塾の希(のぞみ)学園(本部・大阪市)は「ブランド大学も一時期に比べたら難易度は下がっている。『無理に中高から行かせなくても』と考える親は間違いなく増えている」という。

     ◇

 先の早稲田は佐賀での開校に先立ち、今春関西に進出している。大阪府茨木市の私立摂陵中学・高校と提携し、「早稲田摂陵」と改称して生徒を募集した。旧摂陵は中堅私大への進学が比較的多く、関西の教育関係者には「早稲田がそこまでやるのか」という驚きが広がった。

 人口が多い関西に足がかりをつくるのが狙いで、外部から募集する高校段階の定員は245人。しかし、ふたを開けると思惑は外れ、ここでも教育関係者を驚かせた。志願者はわずかに35人。合格者は28人。このうち実際に入学した生徒は11人しかいなかった。

 ここまで不振だったのには、複数の要因があるという。入学する生徒の学力水準を学校側がかなり高めに想定していることが進学塾などに伝わり、どの程度の成績で合格できるのかはかりかねて「受験控え」につながったこともある。245人という外部定員枠に対する早大への推薦枠は40人。6分の1程度にとどまり、魅力を感じない受験生も多かったようだ。

 同校は今後、寮を設けて遠方の生徒を受け入れる体制を整える。入試も、スポーツなど中学での活動実績を評価したり、必要科目数に幅をもたせたりして志願者を増やしたいという。(井上秀樹)

■一般への間口 狭める恐れも―安田理・安田教育研究所代表

 大学系列の学校が多くなると普通の高校からの入試の間口は狭くなる。小中学校からずっと付属校ルートを歩めるのは経済的にゆとりがある家庭で、多様性が失われるのではないか。

 付属校は受験を意識せずに課題研究に取り組むなど深い勉強ができるのが良いところ。「自分は何者で、将来社会にどうかかわるべきか」といった自分の内面を考える時間を十分持つこともできる。しかし、最近は他の大学に進んでもいいという付属校が増えていて、親や生徒も、その大学への推薦を確保しつつ、あわよくばさらに難関の大学を狙おうという傾向がある。そのために予備校通いするのでは、付属校に行く意味があるのだろうか。本来のあり方とは違うように思える。

 【系列校の設置・提携例】

 (2007年以降。予定を含む)

《早稲田》

 早稲田摂陵中・高(大阪府茨木市)

 早稲田佐賀中・高(佐賀県唐津市)

 早大高等学院中(東京都練馬区)

《中央》

 中大横浜山手中・高(横浜市中区)

 中大付属中(東京都小金井市)

《立命館》

 立命館守山中(滋賀県守山市)

 平安女学院中・高(京都市上京区)

 育英西中・高(奈良市)

 岩田中・高(大分市)

 初芝立命館中・高(堺市東区)

 初芝橋本中・高(和歌山県橋本市)

《関西》

 関大北陽高(大阪市東淀川区)

 関大北陽中(同)

 関大小・中・高(大阪府高槻市)

《関西学院》

 清教学園中・高(大阪府河内長野市)

 帝塚山学院中・高(大阪市住吉区)

 三田学園中・高(兵庫県三田市)

 関学千里国際中・高(大阪府箕面市)

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