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きょういく特報部2009

方言、劇で川柳で学ぶ 小学校で重点化 取り組み多彩

2009年11月30日

写真三河弁を取り入れた創作劇を披露する安城市立高棚小6年の児童たち=愛知県安城市高棚町、小川智撮影

 学校現場で「方言教育」が広がっている。標準語偏重で方言を軽んじてきた時代から少しずつ改まり、08年に改訂されて11年度から全面実施される小学校の新学習指導要領では、共通語と方言の違いを理解する分野により重きを置くように。演劇や川柳を通じて方言の価値を学んでいる先進地を訪ねた。

■地域の理解に一役

 「お薬師のお陰で病気が治ったそうな」

 「どえらい腕のいい、かんのん屋(薬師如来を彫った人)がつくったそうだげな」

 「へえー。けなるい(うらやましい)なあ」

 14日、愛知県のほぼ中央に位置する安城市高棚町。田園地帯の一角にある薬師堂横の芝居小屋で、市立高棚小学校の6年生41人が、地元の三河弁を交えた創作劇を地元の住民に披露した。方言教育の一環だ。

 11年度全面実施の新指導要領では、方言は初めて、身につけるべき大切な能力「話すこと・聞くこと」の一つとされた。5、6年生は「共通語と方言」について授業で扱う。解説では、共通語と方言について「それぞれの特質とよさを知り、共通語を用いることが必要な場合を判断しながら話すことができるように指導することが大切である」としている。

 実際、高棚小の児童たちは、三河弁や郷土史に詳しいお年寄りへの取材や台本づくりなどをこなした。取材の依頼文や礼状の書き方、敬語を使って話すことも学んだ。石川華さん(12)は「方言を調べたとき、知らない言葉を知る発見があった。高棚のことがもっと好きになった」。

 年度当初から国語と総合的な学習の時間を組み合わせ、創作劇をつくり上げた。山田稔教諭(48)は「方言を劇に反映させ、郷土の文化に対する意識を芽生えさせたい」と言う。

 青森県弘前市立第三中学では、7年ほど前から津軽弁を使った方言川柳に取り組む。

 「わのばっちゃ こくてもスマイル 忘れねよ」

「懐かしい かまりこばする わのばっちゃ」

 (わ=わたし、ばっちゃ=おばあちゃん、こくても=疲れても、かまり=香り)

 いずれも同校の生徒が詠んだ。NHK青森放送局の番組「お国ことばで川柳」に投句し紹介された作品だ。国語講師の山前(やまさき)尚さん(67)は「失われようとしている言葉への愛着を持ってほしい」と願う。

 番組がお題を発表するたびに、1〜3年の計約690人を対象に提出してもらう。提出率は毎回、約7割と高い。山前さんが「味わい、新鮮味」を吟味して、およそ半分に絞って放送局に送る。3年の船水優香さん(15)は「方言は恥ずかしいものではなく、温かみのある言葉。私たちが使っていかなければいけない」と誇らしげだ。

 「共通語と方言」の授業で、地元の方言を調べて終わる学校もある。「教科書の記述も少ない。共通語と方言の違いに2時間触れて終わり」と話す学校関係者もいるが、方言地図や方言かるた作りといった特色ある教育を進めた学校もあるという。

■矯正から共生の流れ

 小学校の方言教育は「方言矯正」から「共通語と方言の共生」へと続く歩みだった。ただ、全国で通じる共通語を話させることに軸を置く姿勢は昔も今も変わっていない。

 「明治維新で近代国家の仲間入りを果たそうとしたとき、方言を制限し、統一的な言葉を使う必要があった」。国立国語研究所の大西拓一郎教授(46)=方言学=はこう解説する。

 真田信治・奈良大教授(63)=社会言語学=によると、「標準語」が初めて公文書に登場したのは1902(明治35)年。文部省の委員会が標準語の選定を掲げてからだ。翌年には小学校の国定教科書制度が公布され「揺れのあった用語を整理、統一する役割を果たした」という。

 偏向した教育もあった。代表的なのは「方言札」と呼ばれるもの。沖縄では1900年代前半から70年前後にかけ、学校で方言を使うと罰で首にぶら下げられたという。

 戦後は47年に、学校教育で「なるべく、方言や、なまり、舌もつれをなおして、標準語に近づける」「できるだけ、語法の正しいことばをつかい、俗語または方言をさけるようにする」という考えが示された。

 それが学習指導要領に初めて「使い分け」として明文化されたのは58年。発音について、98年の改訂まで「なまりのない正しい発音で話すこと」が求められた。佐藤和之・弘前大教授(54)=社会言語学=は「方言より共通語の方が上という序列化をした可能性がある」と指摘する。「方言と共通語の違いを理解することは、他の存在を認める多文化共生を学ぶことだ」(二階堂勇)

■先生も価値を学べ―方言や文法を研究する山田敏弘・岐阜大准教授

 方言は、地域の連帯感を生む貴重なコミュニケーションツール。しかし、「直すべきもの」とされ、子どもから素直な言葉を奪い、共通語にはめていった一面が国語教育にあった。教育では言葉は与えるもので、絶対に奪ってはいけない。方言の価値や教え方を次世代の先生に伝えることは大学の重要な使命だ。

■地域とかかわりつつ―方言と共通語に関する国語教育を研究する今村かほる・弘前学院大准教授

 今の方言教育は「この地域しか通じないのが方言、全国どこでも通用するのが共通語」という「違い」の教育に偏っている。総合学習で「地域文化としての方言」を扱い、地域の人に昔話を語ってもらったりしながら子どもに方言への興味を持ってもらうのも方法だ。

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