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きょういく特報部2009

暴力への対応 警察頼り 「問題なら通報」連携強める学校

2009年12月7日

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 文部科学省が11月30日付で発表した2008年度の「問題行動調査」では、小中高校生の暴力行為が5万9618件と過去最多を更新したことが確認された。学校側は、外部の侵入者などへの対策と相まって警察との結びつきを深め、「問題が起きれば即通報」という方針をとるところも増えている。「現場の力には限界がある」「その方が更生の近道だ」。教員には「やむなし」の意見が目立つが、単に「排除」するために動いていないか、自戒する声もある。

■「やむなし」の意見が多数

 08年度の暴力行為の内訳は、小学校6484件、中学校4万2754件、高校1万380件と、中学校が圧倒的に多い。

 文科省は、暴力行為について、学校が外部と「連携」して対処したケースを07年度分から調査しているが、今回の08年度分でも最も多かったのは「警察などの刑事司法機関」。小学生は177人、中学生は4575人、高校生は568人で、ここでも中学生が群を抜き、前年度より356人増えていた。中学生でみると、次に多いのは「児童相談所などの福祉機関」の1517人で、「警察など」の3分の1に減る。「地域の人材や団体など」は576人だった。

 実際、現場レベルでは、学校と警察が情報を連絡しあう「学校・警察連絡制度」や、退職した警察官が学校の要請で問題行動への対応や巡回に派遣される「スクールサポーター」といった態勢が広がっている。

 「どうにもならない生徒の場合は仕方がない……」。現場の教員からは、こんな声が多く聞かれる。

 茨城県の中学の教諭。「生徒を警察に売るようなことをすべきではない」とずっと思っていたが、激しく暴れる生徒を受け持ち、考えが変わったという。

 後輩や同級生への殴るけるの暴行、学校の備品の破壊、喫煙や飲酒……。「とても教師の手には負えない。親も無反応で制御できない生徒は『だれかに何とかしてほしい』というのが偽りのない気持ちだ」

 愛知県の中学教諭は生徒にたびたびけられ、医者にかかった経験をもつ。我慢して指導する日々のなか、学校が事案を「抱え込む」ことの弊害も感じている。「相手が教師だけだと、生徒の暴力がエスカレートすることもある」「犯罪といえる行為があれば警察ざたにし、生徒に『大変なことをした』と気づかせた上で教師がフォローするのが更生に役立つのではないか」

 埼玉県の中学の教諭は「もはやみんな割り切っている」と言う。管理職の方針は「けがをしたらすぐ医師の診断書を取ること」。警察が動かないような小さなケースでも記録を残しておき、後日大きな事が起きた時に提出できるようにしているという。

 しかし、警察に安易に寄りかかり、教育者としてのあり方を失っていないか、危ぶむ声もある。

 荒れる生徒と長く向き合ってきた神奈川県の中学教諭は言う。「なぜそんなことをしたのか、背景を聞き、その子の将来を一緒に考えるのが教育だ。結果を見て摘発する警察とは立場が違うことを意識して連携しないと、『犯罪者』を増やすだけになる」

 NPO法人「非行克服支援センター」理事長で、元中学校教諭の能重(のうじゅう)真作さん(76)は、「更生につながるなら警察との協力は否定しない」としながらも「安易な連携は単なる排除になってしまう」と指摘する。

 能重さんは少年事件の弁護役である付添人を何度も務めたが、生徒のもとに教師が全く面会に来ないことがある。校長の上申書に「指導は限界なので、しかるべき施設での教育を」などと書いてあったこともあった。

 「鑑別所や少年院に行ってもいつかは地域に帰る。でも、秩序維持のために簡単に排除され、不信の塊になった子は更生が難しい。やむを得ず警察と連携するにしても、学校は教育的な姿勢を失わないでほしい」(上野創)

■把握への意欲が報告数の差に?

 文科省の「問題行動調査」でいつも指摘されるのが、いじめや暴力行為についての都道府県の報告数の極端な差だ。児童生徒1千人当たりの報告数をみると、今回も大きな開きがあった=表。

 教育関係者にはかねて「学校や行政が積極的に把握しようとしているかどうかで集計結果が全く違ってくる」という指摘がある。特に、いじめは水面下で進行して大人の目でとらえにくいため、その傾向が顕著だ。今回のいじめの調査では、1千人当たりの報告数は最多の熊本(32.7件)と最少の和歌山(0.8件)で41倍の開きがあった。

 熊本県では、北海道滝川市の小6女子の自殺などを契機にいじめ問題が改めて注目された06年度から、全児童生徒に無記名でいじめの有無を聞く県独自のアンケートを実施。文科省調査にも反映させている。1千人あたりの報告件数は06年度が50.3件で全国最多、07年度も32.2件で全国2位だった。

 一方、今回最少だった和歌山県は「アンケートや面接など、実態把握の工夫はそれぞれの学校が行っている」(県教委学校指導課)。熊本のような全県アンケートは行っていないという。(青池学)

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