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きょういく特報部

キャリア官僚から中学校長に転身して 浅田校長の挑戦

2010年1月12日

写真東京都品川区立大崎中校長 浅田和伸さん 林正樹撮影写真拡大  

 昨年春、文部科学省のキャリア官僚が東京都品川区立大崎中学校の校長になった。浅田和伸さん、47歳。文部官僚が自治体に出向する場合、教育委員会の幹部ポストに就くのが一般的で、学校現場に飛び込むのは異例のことだ。自ら希望したという浅田さんは、何を経験したか。

 官僚としての自分の仕事が、様々な課題を抱える学校や子どもたちのためになっているのか。霞が関で働きながら、そう自問し続けていたという。たどり着いたのが「自分も現場に参戦すべきだ」という結論だった。

 意気込んで着任した4月、さっそく「官僚目線」を指摘された。保護者へのアンケートで教育政策への意見を求めたところ、こんな回答が。「国の教育行政とかより、今の大崎中の教育を考えて」

 「そりゃそうだ、と思いました。自分の仕事は、校長として大崎中の教育をよくしていくことが第一なんだと」

 校舎は築46年。校長室前の廊下の天井が雨漏りしていることに気付き、区教委に応急措置してもらったものの、漏れが止まらない。雨漏りは他にも数カ所あり、雨の日の巡回が大事な仕事に。

 学校は予想よりはるかに忙しかった。教育委員会から連絡や調査の要請が次々舞い込む。他校や関係機関と連絡、調整をしなければならない案件が多く、行事で休日出勤も多い。休みは役所時代より確実に減った。

 「授業も毎日見て回りたいのに、他の仕事に追われ、できていない。ずっと仕事に追い立てられている、というのが実感です」

 教職員の忙しさも実感した。多いと週20コマ近くの授業を抱え、それに加えて事前の準備や提出物の点検、採点をする。試験や行事、部活動や研修、会議、個別の指導、保護者対応……。土日も休みなく働く教員がいた。

 「特に激務なのは副校長です。教職員をまとめ、事務処理をし、対外的な連絡窓口も務めて施設管理も担当する。非常に重要なポストだが、これほど忙しくては、優秀な教員が管理職を目指そうと思ってくれるか心配です」

 大崎中の場合、2年生は80人で、基準の上限ぴったり、40人の2学級だ。学習意欲や定着度にばらつきがある中で、きめ細かく目を配るためには、40人では多過ぎると感じている。

 「霞が関の人たちにそう言うと、よく『オレたちの頃は60人だった』とか『オレが通っていた私立○○中学では50人学級だったが問題なかった』と言われる。文科省も含めて中央省庁は中高一貫の私学出身者が多く、現在の公立校の状況をあまり知らないんじゃないかと感じることもある」

 品川区は学校選択制で、校長として地元の小学校の保護者会に足を運んで学校をPRしている。

 「大崎中では、とても落ち着いた雰囲気の中で授業を進められている。生徒はボランティア活動にも積極的で、図書室の利用は昨年度の2倍以上。説明会では『ぜひ見に来てほしい』と話します」

 現場と文科省。両者をつなぐ役割を、どう果たすか。

 「実は校長になってから、一度も文科省には行っていません。普通の校長はそんなことしませんから。ただ、注文はある。学習指導要領が典型ですが、教育行政には『こう教えれば、こういう力が育つはずだ』という制度が多い。でも、現実はそんなに単純じゃない。各学校や自治体の責任で、いろいろな挑戦や試行錯誤ができる柔軟な仕組みにすべきです」(青池学)

    ◇

 あさだ・かずのぶ 瀬戸内海の香川県・豊島(てしま)出身。1985年、東京大文学部卒業後、旧文部省に。大臣秘書官、専門教育課長などを経て、06年、内閣官房内閣参事官に出向。引きこもり支援策などに携わる。校長を外部登用する東京都教委の面接を受け、09年4月、文科省から出向の形で大崎中校長に。

■「仕分け」指摘の事業 予算案も厳しい結果

 文部科学省は、事業仕分けで「廃止」「見直し」などの指摘を受けた事業が2010年度の予算案編成で最終的にどうなったか、対照表形式でホームページ(http://www.mext.go.jp/a_menu/yosan/h22/index.htm)で公表した。仕分け結果に対し、同省に寄せられた意見メールは15万件超。「予定通り進めるべきだ」という声も多数含まれたが、多くは厳しい結果に終わった。

 昨年末に閣議決定した文科省関係の10年度予算の総額は5兆5926億円。全体の総額は前年度比5.9%増と、過去30年で最高の伸び率だった。分野別では、科学技術関係は1.0%減ったが、小中高校、大学といった教育分野は8.1%の大幅増に。スポーツや文化・芸術も増えた。

 ただ、仕分けで指摘を受けた事業への逆風はやまなかった。

 小学5、6年生に配る英語冊子「英語ノート」の作成費用などを含む「英語教育改革総合プラン」についての仕分け意見は「廃止」。約2千件のメールが寄せられ、9割が事業続行を支持する意見だったが、結論は8億4100万円の要求額に対し、2億1900万円の大幅圧縮に。モデル事業は来年度にすべて廃止し、英語ノートについても11年度まで配布して廃止することになった。

 子どもの読書を支援する活動を支援する「子どもゆめ基金」も、仕分けの結果通り、政府の出資金100億円を全額返納することに。ただ、事業費の23億円は維持され、今年度と同じ規模の事業はできることになった。また、約2億円の予算を要求した「子ども読書応援プロジェクト」のモデル事業はなくなり、啓発と情報提供に絞られて4900万円となった。

 電子黒板の導入など、学校ICT(情報通信技術)活用事業は、政権交代前の当初の予算要求額139億円から7億円にまで削っていたが、最終的にすべて削られてゼロに。仕分けの場で、理事長と蓮舫氏が激しいやりとりを交わした国立女性教育会館(埼玉県嵐山町)の予算は、6億2千億円の要求額から5億9千万円に削減された。

 仕分けでは、様々なモデル事業について「数が多い」「教育現場の負担になっている」という指摘があり、文科省は総合的な見直しを実施。今年度、145件に163億円の予算が付いているのを、66件・79億円に絞った。(見市紀世子)

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