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きょういく特報部

学力調査、抽出式でどう変わる?

2010年1月18日

図拡大  表次回の全国学力調査の抽出率(公立の小中学校の合計)

 「巨費を投じて全員にやる必要があるのか」「地域間の『点数競争』に陥っている」。2007年のスタート以来、様々な論議を呼んできた全国学力調査が、今年4月20日の次回実施分から大きく変わることになった。最大の変更は、小6、中3の全員を対象にしていたのを、全体の約3割を抽出するサンプル調査に切り替えることだ。文部科学省は、「学力競争」や公表問題のもとになっていた市区町村別、学校別の成績の集計もやめるとしている。

■成績公表の火種小さく

 国語と算数・数学の2教科で実施されている全国学力調査について、民主党はかねて「全体の学力傾向をつかむには抽出調査で十分」という考えをもっていた。政権交代で「抽出化」は既定路線になったが、さらに政府全体で予算削減の動きが強まり、昨年末に確定した10年度の政府予算案では、学力調査にかけるコストは前年度比約24億円減の約33億円に。全体の抽出率は32%(小学校25%、中学校44%)とされた。

■変わる調査目的

 文科省はこれまで、全員を対象とする理由として、「教育委員会や学校が全国との関係で自らの教育や施策の課題を把握し改善するため」「学校が自校の児童生徒の学力などを把握し、指導の改善に役立てられるようにするため」などと説明してきた。昨年末に公表された次回調査の実施要領からはこうした言葉が消え、「国として全国的な学力と学習の状況を把握し、施策の検証、改善を図る」というシンプルなものになった。

 学力調査をめぐり、これまで大きな問題になっていたのが成績の公表問題だ。

 全員調査の結果、文科省は市区町村や学校ごとの成績をまとめて各都道府県に提供していたが、「外部に出したら序列化につながり、弊害が出る恐れがある」として、都道府県にはデータを公表しないよう求めてきた。しかし、「税金を使った事業でデータを明らかにしないのは許されない」といった知事の発言が続き、秋田県では08年末、当時の寺田典城知事が自ら県内の市町村別の成績を県のホームページで公表した。市町村教委の反発は大きく、同県教委の神居隆次長は「理解を求めることに労力を使い果たした日々だった」と振り返る。

 抽出化に伴い、文科省は、次回の調査では市区町村や学校別の成績は集計しない考えだ。抽出率が3割にとどまる中で細かく集計してもあまり意味がない、という考えだ。これにより、文科省の集計結果をもとに「公表か非公表か」が迫られる場面はなくなることになる。

 学力調査をめぐっては、「よそに負けまい」と好成績をとるために事前のテスト対策を講じる学校が出ていたが、こうした現象も当面は沈静化するとみられる。

 ただし、文科省は、今後も都道府県別の成績については集計、公表するとしており、都道府県単位での「序列化」の構図は変わらない。また、学力低下への不安感から、保護者には代わりになる全員参加の公的なテストを地元の教育委員会などに求める声も上がりそうだ。(上野創、斉藤寛子)

■抽出率の差の訳は…

 次回の全国学力調査は全体では「3割抽出」だが、都道府県別で見ると、最も低い愛知の14.9%から最も高い高知の57.6%まで、かなり幅がある。特に中学では、愛知の22.7%から佐賀の81.8%まで差が大きい。7割を超える県も五つあり、「抽出」と呼ぶには違和感がある高さだ。なぜ、こうなるのか。

 こうした抽出率について、文科省は、前回の学力調査の成績のばらつき具合や、学校数の多さから計算したとしている。都道府県別に平均正答率をみたとき、成績が高い層から低い層まで差が大きい地域では多めにサンプルをとらないと全体傾向が把握できない。逆に、正答率の差があまり大きくなく、全体の平均点に近いところに多くが固まっている地域では抽出率が低めでも全体状況がはかれる、という考え方だ。

 また、人口が多い大都市圏では抽出率が低くてもその自治体の傾向が分かるが、人口が少ない地域で同じ精度を保つには抽出率が高くなる、という事情もあるとしている。(見市紀世子)

■提唱者・中山氏は…

 全国学力調査の構想が出たのは04年11月。提唱者は当時の文科相、中山成彬氏だった。中山氏は「競い合う心や切磋琢磨(せっさたくま)する精神が必要」と説いたが、国交相時代の08年には「なぜ提唱したかといえば、日教組の強いところは学力低いんじゃないかと思ったから」などと発言し、問題化した。

 調査が抽出方式になることについて、朝日新聞の取材に応じた中山氏は次のように話した。

    ◇

 悉皆(しっかい)(全員)調査をすることに意味がある。費用が問題で抽出にするぐらいなら、2〜3年おきに悉皆でやった方がいい。

 結果は学校ごとに公開すべきだった。どの県、どの町が(成績が)良い、先生が良いとか悪いとかいうことになれば、みんな自分の地区に関心を持つ。傾向と格差が検証できる。悉皆と抽出とでは全然違う。

 教育界は競争は悪だという概念に縛られてきたが、社会に出れば世界の大競争の中に入る。学校でもある程度の競い合う心を養わないと、東洋の三等国になると思い、大臣になったときに教育改革を提唱した。政権交代で逆戻りになって残念だ。改善への努力も弱まる気がする。

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