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きょういく特報部

教育の課題に現場から知恵 教研全国集会

2010年2月1日

写真教研集会の初日の全体集会。約3千人が参加した=山形市図拡大  表

 教育の現状と課題を話し合う、日本教職員組合(日教組)の教育研究全国集会。山形市を中心に23〜25日に開かれた今年の教研集会には全国から約3千人が参加し、計741本のリポートが寄せられた。取り組みが急がれる「子どもの貧困」「子どもとケータイ、ネット」の二つの問題を巡っても、現場から多くの現状報告と実践例が示された。

■補助教材節約・備品貸し出し

 「お金がなくて修学旅行に行けない」「制服が買えず入学式に出られない」。教研集会では、各地の生徒のこんな苦境が改めて報告された。

 北陸地方の県立高校の教員(59)は、「昼食を食べられない生徒が最近とみに増えている」と言う。職員室で教員がコンビニ弁当の残りを捨てようとするのをのぞき込み「なんで食べないの?」と聞く生徒。その子もお金がなくて昼食抜きだった。100円ほどの安いお菓子で空腹をごまかす生徒もいる。

 合宿なら、朝夕、決まって食事が出る。合宿がずっと続けばいいのに――。福岡県の公立中学の教員(41)は、地域の小学校教員から、こんなことを言い合っている児童同士の会話を耳にしたと聞いた。別の小学校では、七夕の短冊に「お金持ちになりたい」と書いた児童がいた。その妹は、空を飛ぶ物語を取り上げた国語の授業で「雲に乗っていきたいところは?」と問われ、地元の安売りスーパーの名前を答えたという。この教員の中学校でも、制服が用意できなくて入学式を欠席した生徒がいる。

 無償をうたう義務教育だが、実際には教科書以外の補助教材費、制服代、修学旅行代……と負担は決して軽くない。文部科学省の2008年度の調査によると、学校に納める教育費は、公立小学校で1人当たり平均約5万6千円、公立中学校では約13万8千円になった。

 保護者の負担をなんとか軽くできないか。現場ではこんな視点の取り組みが始まっている。

 鹿児島県の南さつま市立内山田小学校では、どんな補助教材を使うかは長年、担任教員がそれぞれ別個に決めていた。事務職員の川原早苗さん(39)が過去5年間の補助教材費を調べたところ、金額は毎年ほぼ同じ。保護者の状況にはあまり考えを巡らさず、「例年通りに」と決めることが多かったという。

 そこで川原さんは、各担任に「自己評価制」を取り入れてもらった。記入シートを作り、漢字ドリル、書写ノート……と教材ごとに内容の良否や使用状況、価格を、1(いまいち)、2(良くも悪くも)、3(良い)の3段階でチェックした。その結果、「実際は教員用が一つあればよかった」など、節約できる部分があちこちに見つかった。前年度に比べて費用を2〜3割減らせた学年もあった。川原さんは「保護者にお金を出してもらっている重みを考えてほしい」と言う。

 福島県の公立小学校の事務職員、佐藤恒さん(36)も工夫を重ねている。この学校では、児童個人の所有になるものは保護者負担、消耗品や原材料費は公費負担とされており、この決まりの中で何ができるかを考えた。

 例えば図工の版画では、一人ずつ版画セットの購入を求めるのではなく、彫刻刀は学校の備品として購入し、貸し出した。版木も、学校で大きなベニヤ板を買って切り分けて使うことで、消耗品として公費扱いにできた。理科の電磁石の実験についても、アクリルパイプやニクロム線をまとめて買い、切り分けて100セット以上を手作りして、保護者に実験キットの購入を求めずに済んだという。

 佐藤さんは「先生の手間を思うと申し訳ないが、自分も手伝い、他の職員も協力してくれた。こうやって集金する必要があるものを減らせば、保護者の未納の問題も減らせる」と話す。(中村真理子)

■チェーンメール、実例使い授業

 ネットでのトラブルや犯罪に巻き込まれないよう、携帯電話やパソコンの正しい使い方を学ぶ「情報モラル教育」。教研集会では、本格的に使うようになる前の小学校段階から教育を始める例が報告された。

 「こんなメールがきたらどうする?」。金沢市立小坂小の小林祐紀教諭は昨年度、5年生の児童に対し、他の人に転送を求める「チェーンメール」を素材にした授業を行った。

 初めに示した「不幸の手紙」風のチェーンメールについては、子どもたちはすぐに「回さない」という意見で一致した。しかし次に、具体的な病院名を挙げ、特定の型の血液が不足しているとして献血を呼びかけるチェーンメールを示すと、「人助けになる」と「回す」派が多数を占めた。他方、「回さない」派からも「もしメールが悪い人のところにいったら内容を書きかえてしまうかもしれない」といった反論が出て、議論は盛り上がった。

 これは実際にあったこと。メールを読んだ人からその病院に問い合わせの電話が殺到し、業務に支障が出た――。小林教諭は最後にてんまつを明かした。最初の差出人がだれかわからない、自分が内容に責任を取れないようなメールを他の人に回したら、どんな事態になるかわからない。「仮に善意で送られたチェーンメールでも、勇気を持って止めよう」。小林教諭は授業をこうまとめたという。

 山梨県都留市立谷村第一小の佐藤龍文教諭は、市内の小中学生を対象にしたアンケート結果を発表した。小学校高学年の携帯電話所有率は18%。これが、中1では46%にぐっと上がる。授業ではトラブルの実例を伝え、そもそも携帯電話を持つべきかどうかというところから考えてもらったという。

 教育には家庭の協力も欠かせない。富山県高岡市立東五位小では、家庭内でネットやゲームについてルールをつくってもらい、守れたかどうか、利用時間や使ったサイトなどを記録するチェックカードを作って配っている。発表した中山均教諭は「取り組みをきっかけに、子どもが何でも話してくれるようになったという保護者もいる」と話した。(星賀亨弘)

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