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きょういく特報部

君が代不起立、処分激減 東京の教職員 今春の卒業式は4人

2010年4月19日

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 東京都内の公立学校の卒業式や入学式で、君が代斉唱時の不起立などで処分される教職員が激減している。これまでに延べ400人以上が処分されたが、3月の卒業式では4人だけだ。入学式も処分は少ない見通し。起立・斉唱の義務化から7年たち、都教育委員会は「ルールが定着した結果だ」というが、休暇を取るなどして処分を避けながら抵抗する教員は少なくない。「強制」の波紋は、なお続いている。

■「信条曲げたくない」 欠席も

 「信条を曲げるか、処分を受けるか。どちらも耐え難かった」。23区内の都立高校で1年生の担任だった40代の男性教諭は、卒業式前日に休暇願を出し、式を欠席した。

 2004年に起立を拒んで戒告処分を受けた。外国人の生徒の気持ちを考えると、抵抗せざるを得なかったという。「戦時中、日本軍が日の丸を掲げ、君が代を歌いながら侵略した国の生徒がいるのに、歌えない」。その後は受付など式場外の担当に回されたため、処分されていない。

 ところが、今年は式場内に入ることを命じられた。不起立を続ければ、処分は減給、停職、免職と重くなっていく。将来の異動などへのマイナスを考えると、処分は避けたかった。式場外の担当への変更を上司に訴えたが受け入れられず、休暇を決めた。「自分の信条に基づいた教育ができる場を失いたくない」「生徒の旅立ちを見送れないのはつらいが、ほかに方法がなかった」

 別の23区内の都立高に今春まで勤めた男性教諭(60)は過去に2回、処分を受けた。起立・斉唱の義務化は、思想信条の自由を保障した憲法に違反していると思う。だから、今年の卒業式も処分覚悟で立たない予定だった。「これまでの自分の行動は間違っていないと信じている」

 だが、最後の卒業式で命じられたのは式場外の受付係。事前に希望を伝えたわけではない。「自分の学校から処分を出したくない校長の判断だろう」。過去には、校長に直訴し、式場外の担当へ回してもらったこともあったという。

 多摩地域の都立高校で3年生の学級担任だった40代の男性教諭は今年の卒業式で、初めて起立した。過去の処分が重なり、次は停職が予想された。「職場に穴を開ければ、同僚の負担が重くなる。自分の信条を貫くために、他人に迷惑はかけられなかった」

 起立はしたが、歌っていない。上司らに気づかれないように口を半開きにしたまま、歌が終わるのを待った。冷や汗が出た。「処分を武器に、個人の思想に反する行為を強要するのは許されない」

■都教育委員会「通達の趣旨浸透」

 都教委によると、起立・斉唱を義務化する通達が出された2003年10月以降、不起立やピアノ伴奏拒否などで延べ427人の教職員が処分された。04年春の卒業式では193人にのぼったが、その後は減り続けている。卒業式では、今春の4人は過去最少だ。

 文部科学省の集計では、03〜08年度に不起立などで懲戒処分を受けた全国の教職員数は500人。このうち東京都は8割以上と突出して多い。

 処分が減った現状について、都教委幹部は「当初から違反者を厳しく処分する姿勢を打ち出したことが奏功したのだろう」。別の幹部は「学生運動を経験し、日の丸・君が代に抵抗感のある世代がほぼ退職したことや、ルールを守るという通達の趣旨が浸透した結果では」とみる。

 これに対し、都教委に処分された教職員ら約250人でつくる「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会」は、「進んで処分を受けたい教員はいない。今も多くの教員が休暇などで起立斉唱を避けたり、自分の信条を曲げて起立したりしている。異常な事態は、続いている」と反論する。(岡雄一郎)

    ◇

 東京都教育委員会の「日の丸・君が代」通達

 2003年10月、都立学校への通達で、入学式や卒業式での日の丸掲揚、君が代の起立・斉唱を義務化。区市町村教委にも通知した。04年3月の卒業式で起立・斉唱やピアノ伴奏を拒んだ教職員193人を懲戒処分にした。処分は回数が増えるにつれ内容が重くなり、現在は免職の一歩手前の停職6カ月を受けた教員が2人いる。

 都教委によると、処分取り消しなどを求めて教員らが起こした訴訟は計19件。「起立・斉唱義務化は特定の思想の強制ではなく合憲」とする判決が続いているが、東京地裁は06年9月、通達を「少数者の思想・良心の自由を侵害する」などとして違憲とし、処分を禁じる判決を下した。都教委側は控訴し係争中。

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