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きょういく特報部

全国学力調査 「独自テスト」自治体が力

2010年4月26日

写真全国学力調査の開始の合図を待つ小学生たち=20日、東京都内、花野雄太撮影

 「地域同士、学校同士の競争意識が強まった」。2007年度に始まった文部科学省の全国学力調査について、こう指摘する教育関係者は多い。20日に実施された4回目の調査は従来の全員参加型から抽出方式に変更されたが、各地では、国とは別に独自の学力テストを行う教育委員会が広がっている。学力向上を求める保護者の声を背景に、取り組みをさらに強めた格好だ。

■大阪府 「市町村別の課題把握」

 橋下徹知事のもとで様々な学力向上策をとってきた大阪府。来年度からは大阪、堺の両政令指定市も含め、すべての公立学校で小6と中3を対象にした独自の学力テストを実施する。

 文科省の全国学力調査の実施教科は、小6は国語と算数、中3は国語と数学。大阪府の独自テストは、小6は全国学力調査と同じく国語と算数だが、中3では英語も加えて3教科とする予定で、4〜6月のいずれかの時期の実施を検討している。府教委は「市町村別の状況や課題を把握したいが、文科省の抽出の調査ではわからない」。1回分で約2億円の予算を組み、問題作成から採点、集計まで業者に委託するとしている。

 全国学力調査について、橋下知事は「市町村教委は結果が表に出ないから甘えている」などとして府内の市町村別の成績を公表してきた経緯があり、来年度からの府独自のテストでも同様に市町村別の成績を公表する構えだ。

 来年4月に独自のテストを予定している岡山県は、県内すべての公立の中1を対象とする。国語、算数、理科、社会の4教科のテストに加え、学習状況や学習意欲をたずねる調査も合わせて実施する考えだ。

 同県はもともと独自の学力テストを実施していたが、文科省の学力調査が始まったのを受け、06年度で中止していた。岡山県が挙げる独自テスト実施の理由も、全国学力調査の抽出方式への変更だ。同県教委は「これまで、学力調査の結果を分析して授業の改善に取り組んできており、今後も継続的に実施する必要がある」と話す。

■群馬県 音楽や美術も

 今年度と2012年度に独自の学力調査を実施する群馬県は「文科省の全国学力調査と補いあう仕組みにしたい」。文科省の調査と学年、教科が重ならないようにするといい、対象は小5と中2。小5は社会、理科、音楽、図工、家庭の5教科、中2は社会、理科、英語、音楽、美術、技術家庭の6教科で実施する。

 新潟県は単元ごとの「診断テスト」を今年秋にも始める。各校で一つの単元が終わるごとに行い、1回10問ほどのミニテストを予定している。小3〜中3の各学年で、国語と算数・数学、中学校では英語も含める。

 同県は、過去3年間の全国学力調査の成績がやや下がってきている。「子ども一人一人の弱点を見つけ、すぐに学び直しができるようにしたい」という考えから、「単元テスト」をやることにしたという。テスト問題はネットで配信する予定で、各校がダウンロードし、子どもの人数分を印刷して実施することを想定している。

■自主参加の学校、採点の負担

 20日にあった4回目の全国学力調査は全体の3割を取り出す抽出方式で実施されたが、対象から外れた学校の希望参加が相次ぎ、結局、全体の参加率は公立小中学校の75%に及んだ。希望参加の学校の答案については、外部委託の予算がなければ採点、集計を学校や教育委員会がやらねばならず、負担が増えるのは必至だ。

 全員参加が原則だった昨年までの全国学力調査ではすべての採点、集計を国が行ったが、一部では自己採点もあった。国に任せると答案の返却や集計結果の公表が夏までかかるため、早く結果がわかるようあえて自らやろうというものだ。秋田県北秋田市もその一つで、昨年、市内の小中学生約600人分の答案を自己採点した。

 学校現場の教員に負担をかけないようにと市教委の職員2人で取りかかったが、やり終えるまでに1カ月かかったという。今回も市内の全員分を担当者2人で採点する予定だが、「この規模なのでなんとかできた。児童生徒がもっと多いところだと、体制を拡充しないと無理だと思う」と話す。

    ◇

予算の都合、目的あいまい 池田央・立教大名誉教授(教育測定学)

 全国学力調査に自主参加する場合、現場の先生が丸つけをして「あなたはここが苦手だね」と伝える分にはよい。しかし、その結果を全国調査の結果と単純に比較してしまわないか心配している。採点基準を同一に決めたとしても採点側にはばらつきがあり、特に記述問題では判断が分かれる。

 全数調査から抽出に切り替わる過程では、予算を抑えようという議論しかなかった。そもそも、何のために学力調査をするのか。目的がはっきりしなければ、次回の抽出率や問題数、形式などテストの内容を設計することはできない。現在の学力調査は、調査を名目にしながら、子どもたちに勉強をさせるという副次的な目的を果たしているだけのように思える。

経年変化がわかる調査を 耳塚寛明・お茶の水女子大教授(教育社会学)

 子どもの学力水準や散らばりを国が時系列で把握する調査は必要だが、過去3年の学力調査も今回の方法でもそれはできない。毎年、問題の難易度が異なっているからだ。

 重要なのは、結果をその後の政策や指導にどう生かすかだが、教育委員会や学校によってまだ温度差がある。希望利用方式について、国は自治体に判断を任せただけで積極的な位置づけをしておらず、参加した自治体ごとに活用方法にもばらつきが出るだろう。

 今後どうするのか、早く検討に入るべきだ。米国のように専門機関を作り、テストの設計理論に基づいて、経年変化が分かるような調査方法を決めてほしい。

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