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きょういく特報部

学校に「隠れ家」続々 遊び・勉強…子どもの安心空間

2010年5月10日

写真白い円筒形の中は、かまくらのよう。少し暗くて声が響く=千葉市立美浜打瀬小学校写真「包」(パオ)と名付けられた小さな空間。靴を脱いであがる男の子たち=川崎市立はるひ野小学校

 秘密基地のように、学校に「小さな空間」をつくる取り組みが進んでいる。狭いスペースに少人数で入りこむと、自分たちの「居場所」ができた感じがして気分が安らぐ。遊ぶにしても勉強をするにしても、子どもたちに良い効果をもたらす……という考えからだ。校舎のあちこちに組み込まれた空間が、子どもたちを育んでいる。

 2006年にできた千葉市立美浜打瀬小学校。教室のそばにある白い円筒形の空間は、雪国の「かまくら」を連想させる。空間には円いテーブルが置かれ、4、5人で囲むといっぱいだ。

 中に入ると少し暗くて、声がこもる。「ここでリコーダーの練習するよ」と女子が教えてくれた。

 豊田章校長は「友だちとけんかをして興奮状態になった子を連れてくると落ち着きますね。安心するのでしょう」。低学年のクラスは絵本を並べ、高学年はついたてを置いて女子の更衣室にも活用している。

 新興住宅地に2年前に誕生した川崎市立はるひ野小学校にも、「包(パオ)」と名付けられた空間がある。

 教室とつながった小上がりのような部屋。休み時間に2年生の「包」をのぞくと、3畳ほどの空間で、男子6人がひざをつき合わせていた。手には段ボール箱やプラスチックのトレー。「野球ゲームをつくってるんだ」「でも、見たらだめ」

 「包」は他の学年の教室にもあり、高学年用の空間は教室の半分ぐらいの大きさがある。

 こうした「小空間」が学校現場にどれぐらい広がっているかの公的な調査はないが、教室や廊下に壁がない「オープンスペース型」の学校での設置が目立っている。

■「ほっとできる」

 文部科学省によると、オープンスペース型の校舎は昨年5月現在、多目的スペースの設置例も含めて全国の小中学校の2割強、約7500校に広がっている。

 教員が子どもの様子を見渡せ、担任以外でもクラスの異変に気づきやすい利点があるが、一方で、子どもたちにとってはどこにいても大人に見られているという落ち着かない感じがある。こんな事情から、「小空間」は子どもの隠れ家としてつくられた経緯もあるという。実際、美浜打瀬小、はるひ野小の両校ともオープンスペース型の校舎だ。

 文教施設を多く手がける設計事務所「シーラカンスK&H」(本社・東京都杉並区)の工藤和美代表は「お母さんに抱っこされると安心するように、小さな空間がほっとできるのはいつの時代の子どもも同じです」と話す。同社は小学校をつくる際、小さなくぼみのような空間を必ず取り入れてきた。95年に開校した千葉市立打瀬小学校を始め、福岡市立博多小学校、富山市立芝園小学校……と事例は多い。

■グループ学習も

 学校建築が専門の長澤悟・東洋大学教授によると、小さな空間を備えた学校の「草分け」的な存在は、福島県三春町の岩江小学校。87年、1年生の教室のそばに、16平方メートルの空間が作られた。

 長澤教授は「学校の中の小さな空間は少人数学習やグループ別学習で効果的です」と話す。5、6人で調べ学習をするときには、小さなスペースでテーブルを囲むと話し合いが進みやすい。また、子どもがパニックになってしまったような時に、他の子どもたちから離れ、先生と2人で落ち着く場所にもなるという。「授業中の教室では、友だちの背中しか見えない。お互いの顔が見えて、距離が近くなる空間に身を置けば、新しい関係が生まれるはずです」

 荒れた中学校では、廊下にソファを置いて生徒たちが落ち着きを取り戻した例があるという。長澤教授は「学校は長い時間を過ごす場所なのに、これまでは生活の場としての視点が落ちていた。大規模な改築でなくても、例えば踊り場にベンチを置くなど、家具ひとつでも学校は変わる」と言う。(中村真理子)

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