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きょういく特報部

人権教育、地域で濃淡 東北5県、推進計画無し

2010年5月17日

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 文部科学省が2008年に人権教育の新たな指導指針を示したものの、東北の5県を含む7県で推進方針や計画が策定されていないことがわかった。こうした地域差は、これまでの同和教育などへの取り組みの違いが一因となっているようだ。

 文科省は昨年1月、人権教育の指導指針や実践例などを盛り込んだ「第3次とりまとめ」(08年3月公表)の活用状況について、都道府県の教育委員会などを対象に調査を実施した。

 その結果と朝日新聞の取材によると、文科省がとりまとめで推奨する「人権教育に関する推進方針または計画」を策定しているのは40都道府県。未策定は、青森、岩手、秋田、山形、福島、新潟、山梨の7県だった。

 このうち新潟県は、朝日新聞の取材に「今年夏までの策定を目指している」と答えた。

 同じく文科省が求める「人権教育担当者などを対象とした研修」も、東北の5県と沖縄県が「設けていない」と調査に回答した。東北のある県教委の担当者は取材に対し「人権尊重の教育はしているが『これが人権教育』という認識が薄い。他の地方の担当者と話すと、意識の低さを感じる」と打ち明ける。

 こうした地域差は、教員らが組織する人権教育の研究団体の結成状況にもうかがえる。

 「全国人権教育研究協議会」(全人教)には全国35団体が加盟しているが、東北や関東など、東日本を中心に15道県には加盟団体がない。年1回の研究大会には、昨年11月、全国から約1万4千人が参加したが、東北6県と山梨、静岡、沖縄の計9県からは参加者がなかったという。

 全人教の前身は、1953年設立の全国同和教育研究協議会(全同教)で、09年度、一般社団法人化して改称した。前身では同和教育が主な研究課題で、同和地区が比較的多く、対策事業も進んでいた西日本からの加盟が多かったとみられている。

 だが、全同教で扱うテーマが人権教育全般に多様化しても、東日本からの加盟は特段増えなかったという。桑原成寿副代表理事は「同和教育は約60年の歴史があり、実績のない地域は、人権教育へのなじみも薄い。改称と法人化を機に、人権教育への関心を全国的に高めていきたい」と話す。

 大阪大大学院の平沢安政教授(人権教育学)は「同和地区が比較的少ない東日本でも、関東は外国人問題などから推進計画の策定や教員研修の取り組みが進んでいる」と話す。東北などで対応が遅れがちな点については「計画を策定しないまま人権教育を進めると、指導内容のバランスを欠くことになる」と指摘している。(小林豪)

    ◇

 〈人権教育〉 「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」では「人権尊重の精神の涵養(かんよう)を目的とする教育活動」と定義。02年閣議決定の基本計画では、女性、子ども、高齢者、障害者への人権侵害や同和問題といった課題を挙げ、「各課題の知識や理解を深め、解決に向けた実践的な態度を培っていくことが望まれる」とした。文科省は03年に調査研究会議を設け、08年3月に「第3次とりまとめ」を公表。「指導等の在り方編」と「実践編」の2部構成で、学校や教育委員会での活用を求めている。

    ◇

■人権教育の実践例(第3次とりまとめより)

 ●自分の育成歴を振り返り、生命を大切にする心を育む。保護者らへの聞き取りを基に「自分史絵本」を作成し、参観日に発表。保護者からコメントをもらう。

 ●阪神大震災で被災した同世代の児童の作文を読み、生命の大切さを感じ取る。防災にかかわるボランティアの活動に参加し、助け合いの心を養う。

 ●地域の高齢者と子どもでペアを組み、交通ルールを確認しながら目的地まで歩く。地域の高齢者に対する親愛の情、尊敬の念を育てることがねらい。

 ●個人情報の入ったホームページを想定し、インターネットで公開することによる利点や問題点を考えさせる。ネットの特性を知り、情報に関する倫理観を養う。情報の真偽を適切に判断できる能力を育てる。

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