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きょういく特報部

教職員「物言えぬ雰囲気」 北教組事件 組合活動など調査

2010年5月24日

写真退職教員らが開いた調査に反対する集会には200人以上が集まり、現職の教員からの報告もあった=4月29日、札幌市

 北海道教職員組合(北教組(ほっきょうそ))による違法献金事件をきっかけに、北海道内のすべての公立学校の教職員に組合活動の状況や政治的行為の有無をたずねる調査が実施された。道教育委員会は「実態を明らかにして学校教育への信頼を取り戻したい」としているが、他の教職員の行動についても知っていることを述べるよう求める内容も含まれており、「物言えぬ雰囲気を生み出す調査だ」という声も出ている。

■校長室で聞き取り

 「今日から道教委の調査を始めます」。道北地方の道立高校で4月中旬、校長が朝の打ち合わせの際にこう呼びかけた。教職員は全員、放課後などに1人ずつ校長室に呼ばれ、それぞれ10分程度、調査を受けた。

 「なぜこんなことまで聞かれるのか」。自分の組合活動だけでなく、他の教員の組合活動についても聞かれた30代の男性教員は、納得がいかない様子だ。「北教組の事件は問題だと思うが、こんな調査をしていたら学校でニュースのことも話しづらくなる」「これを機に、全般的に締め付けが厳しくなっていくのではないだろうか」。同僚には、異論を唱えて回答を拒む教員も数人いたという。

 調査は、文部科学省が道内の教職員の任命権者である道教委と札幌市教委に要請する形で始まった。教職員は、地方公務員法や教育公務員特例法で政治的に中立であることが求められており、違法行為がないか調べるのが目的だとしている。

 50以上に及ぶ調査項目は道教委が作成した。組合活動や政治的行為、学校運営の実態や職員団体との関係について、校長が教職員に直接聞き取るものと、市町村教委などが校長に聞き取るものがある。学校には80ページに及ぶ調査用紙が配られた。

 現場の教職員らへの聞き取りは今月14日に締め切られた。道教委への最終的な報告締め切りは24日とされており、結果は文科省にも報告される。

■「不当調査」と反発も

 調査を拒否した教職員には職務命令を発することも可能で、調査によって違法行為を認定した教職員は処分する方針だ。ただ、道教委の中にも異例の調査に戸惑いがあり、道内各地の出先機関からは、「不当労働行為だとして校長が教員らから訴えられたらどうするのか」「締め切りを延ばすことはできないか」といった質問が本庁に寄せられたという。

 調査に対し、労働団体や弁護士団体など、これまでに20以上の団体が「組合の弱体化を狙った不当な行為だ」「個人の思想・良心の自由を侵している」と中止を申し入れた。

 当事者の北教組は、ここまで事件の説明責任を一切果たしていない上、本来なら先頭に立って調査に異議を唱えるはずだが、「公判中でもあり、現時点では何も言えない」と沈黙したままだ。

 それでも、分会(学校)単位では反発もある。4月末、札幌市内で開かれた退職教員らによる集会。道東地方の小学校の女性教員は「組合の存在、北教組の運動方針をも否定する調査で頭にきている」と発言した。この教員が勤務する小学校では、校長から調査について説明されるとすぐに分会の会議を開き、「不当な調査には応じられない」との分会の方針を校長に突き返したという。

 こうした中、道教委は調査について「北教組事件で失われた道民の信頼を取り戻すためのものだ」という説明を続けてきた。「教職員の政治的中立を確保するためであり、先生たちの組合活動自体を否定するものではない。細心の注意を払っている」という。

 札幌市教委は、道教委に比べると調査をソフトに進めた。校長が直接聞き取るのではなく、教職員には文書で回答を求めるやり方にした。札幌市は規模が大きい学校が多数あり、「学校側の負担を小さくした」というのが市教委の説明だ。教職員が回答を拒否した場合の取り扱いについても「個人の判断であり、職務命令を出してまで回答させることではない」という構えだったが、結局市内の学校では組合側による拒否行動はなかったという。

 北海道大学の道幸哲也教授(労働法)は「社会問題化した事件とはいえ、個々の教職員への聞き取りは一人ひとりの考えを問うことにもなり、『物を言わない方がいい』ということになる。校長への調査結果をもとに北教組の執行部と話し合うなど、労使間でもう少し何とかできないのか」と話す。「一番の問題は、調査によって、政治を含めた話題を自由に議論する雰囲気が損なわれること。教師が政治的であるのと、政治を議論するのは違う」と話す。(小林舞子)

    ◇

 〈北教組の違法献金事件〉 昨年夏の総選挙で、民主党の小林千代美衆院議員=北海道5区=陣営が、北教組から違法な選挙資金を受けたとされる事件。1600万円の違法な授受があったとして、北教組の委員長代理と団体としての北教組のほか、小林陣営の幹部が政治資金規正法の罪に問われた。いずれも起訴内容を認めており、6月中旬までに判決が言い渡される。北教組は道内の公立学校の教職員が加入する職員団体。加入者は約1万9千人、組織率は34.2%。

    ◇

【校長が教職員に聞き取った調査項目の例】

〈組合活動〉

・勤務時間中に校内で行われた職員団体の集会に出席したことがあるか

・教研集会に参加したことがあるか。必要な年休手続きは行ったか

・(FAX、コピー機、電話、パソコンなどを)職員団体用務のために使ったか

・上記について勤務時間中に使ったか

・上記について校長の承認を得たか

・上記について、使用しているのを見聞きしたことがあるか

〈政治的行為〉

・職員団体からカンパ要請を受けたことがあるか

・校内でカンパの集金、勧誘をしたことがあるか

・選挙運動の「指令書」と呼ばれる文書を知っているか

・選挙区ごとの「専従担当者」になったことがあるか

・「個別訪問」を行ったことがあるか

・「ビラ配り」などを行ったことがあるか

・「支持者カード」による支持者獲得を行ったことがあるか

・校内に特定政党や候補者のポスターを掲示したことがあるか

・上記の行為を見聞きしたことがあるか

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