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きょういく特報部

口蹄疫向き合う子たち 被害地域の宮崎県川南町

2010年5月31日

 家畜の伝染病、口蹄疫(こうていえき)の被害が集中している宮崎県川南町で、小学校の教諭が口蹄疫をテーマに「いのち」を考える授業を始めた。地元の大人たちの動揺で、心が揺れる子どもたち。この苦難と向き合って、「生きること」や「支え合うこと」の意味を考えようという取り組みだ。

■畜産農家の思いに涙

 授業をしているのは、川南町立東小学校の嶋田雄一教諭(43)。全校児童165人、1学年1学級の小さな学校だが、畜産農家の子が十数人いる。

 口蹄疫の影響で、遠足やPTAバレー大会、授業参観日、登山など新学期の大半の学校行事が中止や延期になった。昼休みも外で遊べない状況が2週間以上続き、通学路はいまもあちこちで立ち入り禁止になっている。

 口蹄疫をテーマにした最初の授業は今月20日。嶋田教諭は体育館に全校の児童を集め、「立ち入り禁止」の看板について話をした。

 「この看板を見て、だれの顔が浮かびますか?」

 子どもたちが「畜産農家の人」「消毒している人」「友達」と答えた。

 口蹄疫について正しい知識を教えた後、嶋田教諭は、牛を殺処分された畜産農家の深い嘆き、消毒作業や埋設作業をしている人の苦悩の声などを紹介した。

■生きる現実・支え合い…考える

 6年生の畜産農家の子の話も取り上げた。口蹄疫の発生後、その子の連絡帳に母親の思いがつづられていた。

 「毎朝、牛小屋に行くのが怖いです。今日は牛が口蹄疫にかかっているんじゃないか。牛を見るのが怖いです。生きた心地がしません」

 その子は、まもなく欠席した。登下校の際にウイルスを拾い、家に持ち込むといけないという理由からだ。だが、しばらくして登校してきた。自宅の牛は殺処分に決まったのだ。

 殺処分の日、母親から学校に電話があった。「朝、子どもを送る途中で、私が泣いてしまい、子どもも泣いてしまいました。様子を見ていただけますか」。その子は毎日、学校から帰ると牛小屋の掃除を手伝っていたが、その日帰宅すると牛の姿はなかった――。

 そんな話に、たくさんの子どもたちが涙を流した。

 その後の授業では、阪神大震災のときの助け合いにまで話を広げた。生きるという現実や命、支えあいについてさらに子どもたちと考えていく。

 口蹄疫の予防消毒は中部や関東の畜産農家でも始まった。鳥インフルエンザなど他の家畜伝染病の問題もあり、嶋田教諭は自分の取り組みを参考に、各地で口蹄疫の授業をしてほしいと呼びかけている。

 授業内容や子どもたちの感想などは、ブログ「教育修業・記録帳」(http://blogs.yahoo.co.jp/hyuuga331)で公開した。すでに全国の教員から「自分も授業をやりたい」「やってみた」という声が届いているという。

 嶋田教諭は「苦しい川南町の真の姿から、全国の子どもたちの考えが深まってくれればありがたい」と話す。(宮坂麻子)

    ◇

■授業後の子どもたちの感想文

 ・畜産農家の人は、強制的にやめなさいと急に言われただけなので、次にどうするかは決まっていないと思います。疲れや不安がいっぱいだと思います。私にも何かできることはないかと思いました。

 ・私の予想より、口蹄疫で悩んでいる人が多いのでびっくりしました。口蹄疫で帰り道が遠回りになることは、(私にとっては)大変だけど、農家の人たちにすれば本当に小さいことだと思いました。

 ・授業で学んだことは、「立ち入り禁止」の看板を見て、思ったり考えたりすることは、たくさんあるということです。畜産の人をはじめ、口蹄疫を広げないために努力している人の気持ちも考えないといけないと思いました。

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