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きょういく特報部

先生採用へ市町村動く 橋下・大阪知事の権限移譲案

2010年6月21日

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 公立小中学校教員の人事権を都道府県から市町村へ移譲したい――。大阪府の橋下徹知事のそんな呼びかけに応じる動きが、府内の市町村に広がっている。移譲受け入れに積極的な首長は「地域に愛着を持った教師を独自に採用できる」「教育現場に自分の思いを反映できる」と歓迎する。一方で、団塊世代の退職で教員の大量採用が求められる中、市町村レベルで質の高い人材を確保できるのか不安視する首長もいる。

■責任の明確化めざす

 「小中学校の教育は、責任の所在がはっきりしない。責任と権限を市町村に集中すべきだ」「民意を受けた首長が、学校現場にコントロールを及ぼすことができる」。橋下知事は定例会見などで、人事権の移譲が必要な理由を強調する。

 現行制度では、小中学校を設置・運営し、教員を監督するのは市区町村教委だが、その人事や採用は都道府県教委が担う。給与は3分の2を都道府県が、3分の1を国が負担する。市区町村間で教育水準に格差が生じないよう都道府県と国が調整役を担う形だ。ただ、こうしたねじれ構造では、権限と責任の所在が一致しないとの批判があった。

 橋下知事は、この悪影響が全国学力調査の府の成績低迷の一因とみる。反復学習などの府教委の学力向上策の取り組みに市町村教委間で濃淡があり、2009年8月に公表された同年度の調査結果で、中学生の成績が3年連続で全国最下位クラスと判明。知事は同年10月、府議会で「責任を明確にするため、小中学校の人事権と予算権を市町村に渡したい」と述べ、権限移譲を打ち出した。

 教員の給与負担を市町村に移すためには法改正が必要なため、知事はまず人事権の移譲を文部科学省に要請し、今年4月に了承された。しかし、文科省の鈴木寛副大臣は教員人事の硬直化を防ぐため、移譲先の規模は「人口30万〜50万人が適正」とした。

 この基準を満たさない市町村が移譲を受けるには、周辺自治体との連携が必要だ。これにいち早く応えたのが府北部の豊中市など3市2町(人口計約66万人)。5人の首長が移譲受け入れに合意し、6月下旬にプロジェクトチームを発足させる。来年度の移譲を目指している。

 さらに府東部の八尾市は東大阪、柏原の両市と移譲受け入れを検討する意向を表明。府南部の大阪狭山市も周辺8市町村とともに受け入れを目指す考えを示した。府北部の高槻市も計5市町で移譲に関する研究を進めると発表した。

 府内には43市町村があり、地方教育行政法により、指定市の大阪市と堺市はすでに独自に教員人事権を持つ。残る41市町村のうち22市町村から成る四つの地域で移譲受け入れの動きが持ち上がっていることになる。

■積極派、独自色出る 慎重派、質の維持不安

 権限移譲で、市町村側にはどんな利点があるのか。

 豊中市の浅利敬一郎市長は記者会見で「地域に密着した教員を独自に採用できれば、子どもにとってメリットになる」と語った。

 技術力の高い中小企業が集まる東大阪市の野田義和市長は、取材に「(独自採用によって)ものづくりや理科系に重点を置いた教育が可能になる」、柏原市の岡本泰明市長は「市は学校のトイレや屋根の修理はできても、教育の中身については権限がない。人事権をもらったら、教育とはこうあるべきだという自分の思いを実現できる」と話す。

 その一方で、移譲に慎重な自治体もある。門真市の園部一成市長は橋下知事と府内の首長との意見交換会で「弱小市が教員を採れるのか心配している。現行制度を続けていただいた方が安心だ」。枚方市の竹内脩市長も会見で「教員採用のための人事担当者を新たに置く必要もあり、コスト増につながる」と疑問を呈した。

 団塊世代の退職を受け、自治体間の教員獲得競争が激しさを増している。大阪府教委が昨年度実施した教員採用試験の競争率は4.3倍で、10年前の21.6倍から大きく落ち込んだ。府教委の担当者は「質の高い教員を採用するには、ある程度の競争率が必要なのに」と焦りを見せる。

 2006年に指定市に移行した堺市教委は、当初の3年間は府教委と共同で教員を採用していたが、昨年度初めて独自採用に踏み切った。競争率は小学校が3.0倍、中学校が6・5倍。目標を何とかクリアした。受験生を増やすため、今年は全国80の大学で説明会を開催する。5月には教員志望の学生を集め、世界最大級の墳墓・仁徳天皇陵など市内の名所をめぐるバスツアーを催した。

 市町村側が独自採用に踏み切るなら、こうした競争にいや応なく投げ込まれる。府東部のある市教委幹部は「他府県の大学生にうちの市の名前を出しても、ピンときてもらえない」と不安を漏らす。

 今のところ、大阪府に追随する都道府県はみられない。兵庫県教委の担当者は「人事権を移譲されても、一定の教育水準を保つため市町村間の人事交流など慎重な制度づくりが必要だ」と話す。三重県の野呂昭彦知事は会見で「小さな町や市では、教員の確保や育成の観点から課題が多い。大阪のようにしっかりした規模の市町があるところと三重県は状況が違う」、山梨県の横内正明知事も会見で「本県の場合は(甲府市を中心とする)国中地方に住んでいる教員が多く、市町村を越えた人事異動をやらざるを得ない。県が市町村教委の意見を聞きながら全県的に人事を行うかたちが良い」と話す。(左古将規、北上田剛)

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