現在位置:
  1. asahi.com
  2. ライフ
  3. 教育
  4. きょういく特報部
  5. 記事

きょういく特報部

いじめ 傍観しない 生徒が防止活動

2010年6月28日

写真いじめに関するアンケートづくりを進める「スクールバディ」の生徒たち=神奈川県藤沢市弥勒寺2丁目の市立村岡中学校グラフ拡大いじめ認知件数の推移

 「友だちへのいじめを止められなかった」。こんな内容の遺書を残して今月7日、川崎市の市立中学3年の男子生徒が自殺した。友人が昨年からいじめられ、それをかばったことで自分にも矛先が向けられたという。いつまでも無くならない「いじめ」。標的が自分に変わる恐怖から、やめさせようと踏み出せないことも多い。「間接的な加害者」かもしれない傍観者にならず、問題を解決するにはどうすればいいのか。

■傷つきやすい心に、安心感を

 「いじめ自殺のニュースを見るたび、すごいショックを受けるんです。もし自分がその学校にいれば、その子を救えたかもしれないって」

 神奈川県藤沢市の住宅街にある市立村岡中学校(藤村澄門校長)でいじめ防止を呼びかける活動を続ける3年生の中田智香さん(15)はそう話す。

 中田さんも所属する「スクールバディ」の活動が同校で始まって3年がたつ。「バディ」は英語で「仲間」の意味。30人近い生徒の有志が、自らポスターを作っていじめ防止を呼びかけたり、相談窓口を開いたりしている。「学校を明るくすれば、いじめは減る」との考えで、定期的に登校時のあいさつ運動も続けている。

 自分のプロフ(自己紹介サイト)に同級生のひぼう中傷を書いていた女子生徒に注意して、書き込みを消去させたこともある。「先生ではなく友だちに注意されると効果がある。相当ヤバイことしたなと気づくんです」。3年生の大金春歩君(14)は、活動の意義をそう話した。

 「スクールバディ」に入るには暴力防止の活動をしているNPOの講習を放課後に計8時間受ける必要があるが、毎年十数人が加わるという。

 3年生の皆川千花さん(14)は、自分の変化も感じている。「『嫌い』だった人を『苦手』ぐらいに思えるようになった。友だちグループを越えてみんなと仲良くできるようになった」

 大阪府教育委員会も、いじめの防止に力を入れる。授業を持たずにいじめや暴力行為などへの対応に専従する「子ども支援コーディネーター」の教員を150人近く配置。2008年には、いじめを傍観しない子どもに育てるため、授業などで使える事例集を全小中学校に配った。他人の気持ちを理解し、仲間を尊重する心を育む効果が期待できるロールプレイのプログラムなどを紹介している。

 東京都立川市の玉聞伸啓(たまき・のぶひろ)さん(34)は「いじめと戦おう!」(http://ijimetotatakau.upper.jp/)というホームページを開いている。本業は同東大和市役所の職員。自分自身のいじめられた経験を元に、克服法のアドバイスを載せてメール相談にも応じている。大半はいじめを受けている本人からだが、「友だちがいじめられている」と悩むメールも時折届く。

 「クラスの男子がお金をとられたり、3対1でプロレス技をかけられたりしています。腹が立つけれど勇気を出せません。どうしたらいいですか」

 中3女子からのメールに、玉聞さんは「いじめをとめるのはこわい。でも安全な助け方があります」と返事を出した。

 いじめられている子に「消しゴム、貸してくれない?」と声をかけ、返す時に大きな声で「ありがとう、助かったよ」と言う。それだけ。消しゴムを借りるだけだから、一緒にいじめられることはない。

 でも、周りの子が「あれ、あいつがお礼言われてるぞ」と気づき「あいつ、良いところあるんだ」と見方が変わる。その子がいじめられても、周りの子は一緒に笑わなくなっていく、という。

 「いじめっ子の周りには必ず笑っている子たちがいる。ギャラリーが笑わないと、いじめは成立しなくなります」

 新潟青陵大学大学院教授の碓井真史さん(50)は、スクールカウンセラーとして中学生から話を聞く中で、クラスでのいじめに周りの子たちも傷ついている、と感じている。

 「大人が想像する以上に、子どもは他人のことで傷つき、過剰に責任を感じている。それが『同情自殺』につながってしまうこともある」

 何よりも大切なのは、大人がしっかり受け止めること。大人に話すのは「勇気のあること」だとほめて、「絶対に守るよ」と安心感を与えてあげてほしい、という。(中村真理子、増谷文生)

■問題化のたび件数急増

 文部科学省がまとめている全国のいじめの件数は、あくまで学校側が認知し、教育委員会に報告したものにとどまる。実際にははるかに多くのいじめが起きていると言われるが、その統計上の数字も、いじめによる自殺が社会問題化するたびに急増し、時間がたって社会的な関心が薄れると減ってゆく傾向がある。

 旧文部省がいじめの実態把握に乗り出したのは1985年度。「葬式ごっこ」をされていた東京都の中学2年生が自殺するなど、学校でのいじめが社会問題化した時で、15万5千件が確認された。

 件数は翌年から年々減少し、93年度には2万2千件弱に。そんな中で、94年には愛知県で中学2年生の大河内清輝君がいじめを訴える遺書を残して自殺。このとき文部省は定義を見直し、「学校として事実を確認しているもの」という表現を削除した。その結果、94年度には5万6千件余りに急増した。

 その後、また減少が続き、2005年度には2万件に。だが、北海道や福岡県で相次いで小中学生が自殺したことを受け、06年度の調査から文部科学省は再びいじめの定義を見直した。「一方的に」「継続的」などの表現を削除した結果、12万5千件近くに急増した。

 その後はまた減り、直近の統計となる2008年度は8万5千件弱になっている。

検索フォーム


朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介

[PR]注目情報

学校からのお知らせはこちらから

ジャンル別の最新情報はこちら
  • 大学
  • 中学・高校
  • 通信制高校